『カラシニコフ自伝』(エレナ・ジョリー聞き書き、朝日新書)と『失われた手仕事の思想』(塩野米松著、中公文庫)

カラシニコフは、世界で一番有名な銃の名前であり、それを作ったロシア人の名前。流刑農民の子供で、兵卒あがりの独学の人間が、自らの人生を語ったもの。ひとつの人生哲学と美学を持った頑固者で、まさに職人そのもの。

『失われた手仕事の思想』は、消えていく日本の職人たちを惜しむ作者の、職人仕事への考察。真の意味での創造や生産ということを考えるヒントがこの2冊にはあるかもしれません。「グーグル」では決して得られない、なにかが。

「新・知的生産術-自分をグーグル化する方法」(勝間和代著)

イーグルスの歌に、"Life In The Fast Lane"という歌があって、歌の内容はよく覚えていませんが、タイトルだけはずっと記憶に残っています。この本の著者も、必死にFast Lane の上を走っているひとりでしょうか?

 著者に共感する点がいくつか。「自転車での移動」、「テレビを見ない」、「睡眠は大切」、「PCやネットの活用」、「読書のすすめ」など。このあたりは僕もまったく同じ意見。でも、反対にちょっと感心しないのは、強烈な自己宣伝。また、「賢くない人が、賢い人からどんどん搾取される危険な時代」(本文中の言葉)の中で、勝者であることを宣言するかのような姿勢には、違和感を感じます。

 著者は3人のお子さんのお母さんでもあるとか。僕の周りを見ていると、実家が近くにあって、子供の面倒を一部ご両親にお願いしているというお母さんたちもいます。著者はこれまでどうされてきたのかな?「知的・育児術」は次の商売のネタでしょうか?あと、ご主人も同じように、自分自身の「グーグル化」(この言葉の意味はわかったようで、よくわかりません)に励んでいるのでしょうか?

IT時代のモーレツ・セールスウーマン」だなという印象を持ちました。

 

『アイ・ラブ・エルモ』イベント@紀伊國屋書店

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R0010442豊洲のららぽーと内にある紀伊國屋書店にて、『アイ・ラブ・エルモ』(アメリカン・ブック&シネマ発行、英治出版発売)の発売記念イベントを行いました。エルモとの無料撮影会に子供たちが、大喜び!英治出版のブログにも早速、たくさんの写真がでています。→Eijipress Blog

「さらば財務省!- 官僚すべてを敵にした男の告白」(高橋洋一著、講談社)

 ある方からも非常に優秀な方だとお聞きしていた財務省(旧大蔵省)の方です。小泉改革の実質的な「コンテンツ・クリエーター」。東大理学部数学科出身の、異色の元・大蔵官僚。

 僕は数学コンプレックスがあって、大学のころ、数学を勉強しておけばよかったといつも後悔しています。金融の世界にいたころは、オプション理論の本(ブラック=ショールズ)が読めなくて、情けない思いをしました。政治やビジネスの世界で、数学や物理を勉強した人間が、もっと上に立つような社会にならないかと、よく思います。アメリカは数学を勉強した人間が、結構、ビジネスの世界(といっても、僕が知っているのは、金融ですが)には多くいます。法律や経済なんかの勉強も悪くないのですが、数学みたいな自分の頭だけで勝負する学問をやった人間に、もっと出てきてもらいたいし、会社はそんな人間をもっと活用すべきだと思っています。日本社会の弱点のひとつは、法学部出身者が偉そうに権力を握っていること。でも、そんな時代ももう終わりつつあるのでしょうか。

 で、高橋さんの本ですが、たくさん売れることを希望します。われわれ庶民というか、税金を真面目に払っている人間たちは、もっとここで書かれていることを知り、そして真剣に考えるべきだと思います。この本の中で、高橋さんが書かれていることで、一番大切なメッセージのひとつは以下のものです。

 「アメリカでは、「政府は間違える」という前提に立って、三権分立を考えだし、政府の暴走を抑止している。しかし、どうやらこうした性悪説は日本人には馴染まないようで、多くの人が性善説的な考え方に立って、むやみやたらに信じたがる。私はこれが日本国の最大の欠陥だとさえ思っている。とりわけ日本人のお役所に対する信頼は、過信を飛び越えて異常である。」

 1955年生まれでまだ50代前半。これからもご活躍いただきたいです。

『公務員クビ!論』(中野雅至著、朝日新書)

 ちょっと、オチャラケの書名ですが、中味は非常にマジメに書かれています。ひとくくりにされることの多い公務員を、キャリア官僚、ノンキャリア、地方公務員にわけ、マスコミ、政治家、そしてわれわれ国民への、バランスの取れた距離を保ちながら、複数の視点から評しています。公務員の過去、現在、そして未来を、分かりやすい言葉で、偏ることなく、説明してくれているという感想を持ちました。

 国民、特に中間層のニーズを把握するために、ITと図書館が有望だという意見には特に関心を持ちました。図書館をもっと人が集まりたいと思うような場所に変えていく、たとえば(アメリカの図書館のように)起業する人に知識を提供したり、経験者の話を聞くことができるなど、「総合的な知識コンサルテーションの場」にするというのは、すごくいいアイディア!

 著者自身が、地方公務員、キャリア官僚の経験者で、現在は大学教授ということもあり、公務員仕事の実態、意義をよくわきまえた上で、是々非々で議論していることに非常に好感を持ちました。

 著者写真

 著者ブログ

注目!『アイラブエルモ』(ABC発行、英治出版発売)

Elmo 全国主要書店で、アメリカン・ブック&シネマ初の出版商品、『アイラブエルモ』が本日から発売されています。セサミストリート、特にエルモが大好きな皆さん、是非買ってください!

発売は、アメリカン・ブック&シネマの出版パートナー、英治出版から。

それから、今週日曜日には、東京・豊洲の紀伊國屋書店で、エルモと一緒の写真撮影会もありますよ。お楽しみに!このイベントの情報は、こちらのサイトまで。→紀伊國屋書店英治出版ブログ

それから、セサミストリートパートナーズジャパンのサイトでも買うことができます。先着5名さまに、エルモと著者(ケビン・クラッシュのサインつき写真をプレゼントしています)→SSPJサイト

社員からのプレゼント

Books 今日で退職した女性社員のSさんから、プレゼントをいただきました。内村鑑三著『代表的日本人』、『後世への最大遺物 デンマルク国の話』。「我々は何をこの世に遺して逝こうか。金か。事業か。思想か。何人にも遺し得る最大遺物-それは高尚なる生涯である。」内村鑑三はそのような言葉を残しています。

 Sさん、ありがとうございました!

『なぜ日本は没落するか』(森嶋通夫著)

カゼをひいてしまい、家でごろごろしています。カゼをひいたのは数年ぶりですが、カゼをひくことにもいいことはあります。まず第一に、食欲がなくなります。おかげで数キロ体重が落ちました。でもこれは気をつけないとまたすぐに帰ってきます。第二に、ゆっくりと本が読めます。何冊かまとめて読んでいますが、その中の一冊が、日本を代表する経済学者だった故・森嶋通夫による『なぜ日本は没落するか』。(ちなみに、カゼをひいて困ることもあります。黒犬の散歩です。カイからすると僕がカゼをひこうとそんなことは関係ありません。こっちが38.6度の熱があっても、カイには散歩が必要です。)

 森嶋通夫は日本の大学に嫌気をさしてイギリスに渡ったまま、イギリスでなくなった人でした。そのように、「日本を捨てた」人は、どうも日本人の間で評判が悪いようです。でも、「日本を捨てた」からと言って、愛国心がないとは限りません。(つい最近まで、会社を辞めた人間は「裏切り者」だとするようなところが日本社会にはありました。)

 個人で太りやすい体質があるように、国も偏狭なナショナリズムに陥りやすい体質があると思います。特に日本は、日本語という壁の中で暮らし、外国の意見や考え方に、直接、接することもほとんどありませんから(英語の新聞でも読んでいれば別でしょうが)、どうしても議論に多様性が乏しい上に、感情的になりがちだということもあります。だから、僕は「日本を捨てた人」の「苦言」にも耳を傾けるべきだと思っています。

 この本の中での森嶋先生のお話は、端的に言って、戦後教育のもとで育った日本人が「劣化」しているということです。今の日本の大学生の大半は、大人としての成熟度、思考力などの面から見て、一昔前の高校生と同等と見なしていいのかもしれません。あるいはそれよりもひどいのかもしれません。(ひとつの「極端な例」かもしれませんが、ある席で、20名程度の大学生に、今の日経平均と、過去最高レベルのときの日経平均を聞いてみたことがあるのですが、まともに答えられる学生は一人もいませんでした。)僕が大学に入った30年ほど前にも、「かつての一橋大学の学生はこんなことはなかった」と、英語の先生に小言を言われたことを覚えています。日本の大学生の劣化はその頃からもう始まっていたのかもしれません。

 悲観論連続のこの本の中で、夢のある話は、東アジア連合の構想です。中国、朝鮮半島の統一国、そして日本が連合的な組織を作るという、壮大というか、夢のような話です。21世紀から22世紀、どうやって日本は存在していくことができるかと考えたとき、近隣諸国との関係を抜本的に改善していき、EU的な関係を築いていくことではないかというアイディアです。USA=United States of Asia!

 日本の村社会、封建社会の論理と、西洋社会により強くある普遍主義のせめぎあいが、明治維新以来の日本では、ずっと続いているのだと思います。その中で、森嶋先生のような方は日本社会でははじかれてきたのでしょう。でも、いつまでも村社会の論理を守っていけるほど、日本は独立国家ではないはずです。食料にしても、防衛にしても、教育さえも(この本の中で、森嶋先生も書かれていますが、東大の先生たちも、大学院教育にはアメリカに行けと生徒に指導していたという話があります)、海外、特にアメリカにおんぶにだっこです。

 森嶋先生のこの本は、最初に英語で書かれたのではないかと思います。英語でのタイトルは、Japan at a Deadlock. 「行き詰まった日本」この本が出たのは、99年のことです。残念なことに、10年ほど経った今、日本の行き詰まり状況は一層悪化しているように思えます。そういう意味で、この本の中で指摘されていることは依然として日本に当てはまります。

London Times の森嶋先生への追悼記事もあります。

 

『非属の才能』(山田玲司著、光文社新書)

 マンガを読まないので著者の名前さえも知らなかったのですが、新聞の読書コーナーの紹介で関心を持って読んだ本。すべての若い人が読んだらきっとヒントになるのではないかと思います。

 「みんなと同じ」が求められる日本で、「みんなと違う」、自分が望む生き方をどうすれば送ることができるのかを考えている本。言い古されている言い方をすれば、「和して同ぜず」ということ。著者によると、「和して属さず」ということ。

 単に抽象的なことだけでなく、とても具体的なアドバイスが気に入りました。たとえば、「独創性は孤立が作る」(第6章)、だから、引きこもりは人生のジャンピングチャンスだ、テレビは見るな、消費社会から距離を置け、ケータイも捨てろ、ネットも見るな、孤立は孤独ではない、人の意見を聞くと駄作になる(創る、そして人に見せるな)というようなアドバイスには大賛成。

 同時に、「非属」の人が陥ってはいけない「独善」をさけるためには、同調しないのはいいが、協調は必要だとしています。自分のなかの変っている部分をむやみに主張するな、自分が正しいかどうかはわからないという自覚を持て、ヒットされていようが無視されていようが、評価は自分でする、プライドなんてものは一刻も早くトイレにでも流せ、自分を認めてほしければまず他人を認めろなど。

 若い引きこもりたちだけにでなく、ビジネスマンにも参考になる本です。著者のマンガも読んでみます。

 

タンタンとチベット

オデッセイコミュニケーションズで使っているキャラクターのタンタン。実は、タンタンは、チベットと深い関係があります。日本でも、チベットに関心を持つ人が増えると思いますが、『チベットのタンタン』を読んでみてください。

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