ATD (Association of Talent Development)参加

デンバーであったATDの世界カンファランスに行ってきました。日本からも100名前後の、企業で人材開発を担当されている方々、コンサルタントなどが参加されていました。ATDの日本における窓口業務を担当されているIPイノベーションの浦山社長にはたいへんお世話になりました。感謝申し上げます。
5月22日から25日まであったこのカンファランスには世界から1万人をこえる参加者があり、全体講演が行われたオーディトリアムに集まった人たちの様子は、壮観でもありました。
四日間の間に、あまたの数の講演、スピーチ、プレゼンテーションが行われ、どのセッションに顔を出すのか、本当に迷ってしまいました。
昨年初めて参加したATP (Association of Test Publishers) の全米カンファランスでも感じたことですが、アメリカの各分野における専門家の層の厚み、企業内専門家のレベルの高さと普遍性(自社内だけに通用するノウハウではなく、普遍性を持ったコンテンツを作り上げていく力)、他流試合・他社(他者)との交流によって「たこつぼ」に陥ることを意識的に避けようとする努力などに特に感心します。そのあたりのことは日本人がもっとも気をつけないといけないことだと思います。

人材開発の方法論において、最新テクノロジーの利用(例:SNSを活用した協同学習)、遠隔地間の学習やノウハウの伝授(アメリカでは、遠隔地での勤務が普通になってきている)、脳科学からわかってきたことの活用など、おもしろいテーマがたくさんありました。
プログラムの内容は、ATDのHPで確認して下さい。(→ATD)

人材開発、リーダーシップ開発に関して、世界中から関心を持つ人たちが集まるこれだけ大掛かりな「勉強会」はほかにないことと思います。 来年はアトランタで行うとのことです。

いさぎよい転職

投資において一番重要なことのひとつは、「損切り」ということかと思います。いったん買ってしまった株や債券が、ずるずる値下がりし始めたとき、きっといつか好転するだろうと期待していると、ますます下がってしまい、ついには「塩漬け」状態になってしまうなんてことが、多々あります。自分自身も含めて、これを経験していないアマチュアの投資家は、ほぼゼロではないかと思います。下手すると1990年以降、この20年間、ずっと塩漬けになっている日本株を持っているという人もいるかもしれません。

「損切り」ができるようになれば、一人前だと思っています。

キャリアにおいても「損切り」が出来る人が、どのくらいいるだろうかと思います。特に日本において。

アメリカの会社(日本子会社ではなく、アメリカ本社)の、ある部門のトップが今年始めにその部門を去りました。この人の後任には、同じ部門にいた女性の部下Aさんが就任しました。それと同時に、同じ部門にいた男性の部下Bさんがこの会社を去っていきました。彼はその部門のトップになることを狙っていたようでしたが、当面、その可能性がないことが決まり、別の会社でチャンスをさがすことに決めたのではないかと想像します。

Bさんが転職を決めたのには、他にも理由があったのかもしれませんが、そのいさぎよさに、なにか晴れ晴れしいものを感じます。

日本においては、「キャリアにおける損切り」は少々難しいのではないかと思いますが、ひとつには転職市場、新たな受け入れ企業における待遇やチャンスの問題があるかもしれません。

また、経験的なところからのコメントですが、心情的、感情的に、区切りをつけることができない人が多いようにも思います。恋愛にしろ、仕事上のことにしろ、自分自身でなんらかの結論を出し、区切りをつけることは、簡単ではありません。

僕もこれまで損切りがちゃんとできてきたわけではありません。株式投資に関して言えば、一部ですが「塩漬け」になったままです。アベノミックスのお蔭で日本株が上がっているうちに、損切りをした方がいいのかもしれません。

事業も、どうしてもうまく行かない時、損切りをするのは容易いことではありません。特に社長の自分が決めたプロジェクトの場合。「君子の豹変」ではありませんが、たとえ自分が言い出したことであったとしても、過ちを認める勇気と度量を持つように、日頃から自分を鍛えていきたいです。

すべてのことには終わりがあり、継続しているように見えようとも、その内側では休むことない変化が起こっています。企業にしろ(1000年続く会社!)、野球チームにしろ(巨人軍は永遠です!)、あるいは人と人の間の愛情にしろ(永久の愛を誓います!)、永遠神話を、一時的にでも信じたいという気持ちはわからないでもありませんが、自分の存在からして、永遠不滅ではないことを忘れず、人生のいろいろな局面で、いさぎよい決断をすることを学びたいです。

メメント・モリ(memento mori)、すべての人が、いつかは必ず死んでいく。

道なきところに道を作っていく作業。

2月3日(日)付の東京新聞「あの人に迫る」というコーナーで、映画字幕翻訳者の戸田奈津子さんへのインタビューが掲載されていました。戸田さんには数年前、アメリカン・ブック&シネマで発行した書籍『ドックマン』の帯にお言葉をいただくため、都内のホテルのカフェで一度だけお目にかかったことがあります。(その時にいただいた言葉は、以下の通り。「日本人の魂が秋田犬とその血を守った一家の物語から香り立つ。」)→アメリカンブック&シネマ

映画字幕翻訳を目指した時(大学3年生)、映画界へのコネもなく、映画のクレジットによく出てくる清水俊二さんの自宅の住所を調べて手紙を書いたりしたものの、大学(津田塾だそうです)の紹介で保険会社に就職。しかし字幕への夢があきらめられず1年半で退社(このての話は、いまでもよくあるのでは?)。翻訳のアルバイトで生計を立てるようになったとのことです。

ブレイクする大きなチャンスになったのは、コッポラの映画「地獄の黙示録」。それまで道を志して20年、「長かった。夢を追い続けるのは不安だった。夢を持てばきっとかなう、という人がいるけど、それはおとぎ話。チャンスの確率は五分五分。恵まれないケースが五分あると覚悟していたけど私は人生を賭けた。」というお話でした。

キャリアや仕事の話は、いつの時代も、さきのシナリオがそれほどはっきりしていないような気がします。目の前にレッドカーペットがひかれているところは滅多にないし、もしそんなところがあったとすれば、猛烈な競争があるのではないかと思います。

新しい分野を切り開いていくことは、道なきところに道を作っていく作業のようなもの。自分の人生を賭けるに値するなにかを見つけることは難しいし、それが人生を賭けるに値するものだったかどうかは、ゲームが終わってみないとわからないのかもしれないです。

天命を知るべき年を越えても、迷うことが多いのが、僕のような凡人です。

"5 skills everyone needs to have on a resume"(「すべての人の履歴書にあるべき5つのスキル」)

US News And World Report というアメリカでは知られているけど、日本ではほとんど知られていない雑誌があります。Newsweek やTimeと比べるとマイナーな雑誌かもしれません。この雑誌のHPで、職探しやキャリアについて書かれているコーナーで、"5 skills everyone needs to have on a resume"(「すべての人の履歴書にあるべき5つのスキル」)というエッセイがありました。原文はこちら

それら5つのスキルは以下の通り。
1 Excel
2 Web Development (Java, HTML, SQL)
3 Adobe Creative Suite
4 Foreign Language
5 Google Analytics

これだけ見ていると、IT業界に入っていく人たちへのアドバイス?という印象を持つ人がほとんどかもしれませんが、このエッセイを書いた人は別にIT業界だけをターゲットにこれらのスキルを上げているわけではないことに注意をしておいた方がいいのではないかと思います。

ウェブ、アドビ、あるいはグーグル・アナリティックのスキルといっても、「とにかくやってみなさいよ、オンラインで無料の講座がたくさんありますよ」。ビジネスの総合職、あるいは中高年で転職希望なんて人たちも、これらのスキルを勉強しておいた方がいいというご意見。

日本で同様の意見を聞くと、どんなスキルが上がってくるのか?たぶん英語や中国語(外国語)は上の方に上がると思いますが、これだけIT系のスキルが上位を占めるかどうか、ちょっと疑問です。

これは一例に過ぎませんが、アメリカのビジネスのIT化がどれだけ進んでいるのか、職場の状況を反映しているとも言えるのではないかと思います。大企業の中もそうでしょうし、起業からあまり時間がたっていない会社、中小、中堅の会社では特に一人ひとりのITスキルが必要とされる状況があるのではないかと想像します。なぜか?それはコストをできるだけかけないため。

日本でも同じような状況が出てこないのか?僕は時間はかかるかもしれませんが、これだけ大企業での人減らしが進んでいくと、否が応でも起業したり、中小、中堅企業に入っていく人が増え、ITを活用してコスト削減をはかりつつ、売り上げアップのための営業に力を注いでいく必要がこれまで以上に強くなるのではないかと思います。

社会も、企業も、もっともっとIT化を進めていく必要がありますし、個々人のITスキルはまだまだ低いレベルにあるように思います。大学生、高校生レベルで、これらのスキルをある程度習得しておけば、就職してあたふたする必要はないのでしょうが、一部の学生をのぞくと、日本の大学生のITスキルレベルはアメリカの大学生と比較して低いことを危惧します。

『グローバルキャリア_ユニークな自分の見つけ方』(石倉洋子著)

 一橋大学の大学院(国際企業戦略研究科)でずっと教えていらっしゃった石倉先生からお贈りいただいたご本。今年の4月から一橋を退職され、慶応の大学院(メディアデザイン研究科)に移られたということがお手紙に書かれてありました。

 「グローバルなキャリア」も、「ユニークな自分」も、言葉ではなんとなくわかったような感じがするけど、多くの人にとっては実感が持てないことなのかもしれない。でも、この二つとも、今に始まったことではなく、何十年も前から、日本国内にとどまらず世界に飛び出した人たちは大勢いたし、ユニークな自分を作っていくという強い意欲を持っていた人たちもいた。今だって、きっとたくさんいる(そんな若い人たちが何人かこの本の中に紹介されている)。僕だってその一人だとちょっとは自負している。だからあまり難しく考える必要なんてない。

 この本の中で石倉先生が書かれているように、最初から完璧を求めすぎないことだと思う。この本で良かったのは、石倉先生ご自身の経歴を振り返っていらっしゃる箇所。1985年、先生はハーバードビジネススクールのDBA(博士課程)を卒業し、マッキンゼーに入社されたはずだけど、その時、写真週刊誌(今はなきフォーカス?)に出ていた記事を思い出します。女性で初めてハーバードビジネススクールのドクターコースを卒業した才媛がマッキンゼーに入社、なんて記事だったような記憶。同じ年、ハーバードビジネススクールに入学する前拝見したはずです。

 この本の前には、石倉先生と黒川清さんとの共著で『世界級キャリアのつくり方』という本もあります。新著ともども、大学生、20代前半で、まだ会社人間になりきっていない若い人、海外志向の方がたに、おススメ。

『転職のバイブル2012年版』(佐藤文男著)

 著者は大学の同級生です。さらには著者である佐藤君がわざわざ僕のオフィスまで来てプレゼントしてくれた本です。なので「中立」的なご紹介ではありませんが、この本は転職だけでなく、これからのキャリアを考えているすべての社会人に参考になる情報と考え方が書かれていると、心から思いました。

 この『転職のバイブル』は2006年、2008年、2010年、そしてこの2012年版とでています。これだけよく続けて出すなと感心しています。(「継続は力なり!」)

 全体を通して、著者は率直です。

 「転職あるべき論」には以下の5つがあげられています。

1今の会社で仕事がうまくいない人は、転職先でもうまくいかない

2転職は、年齢よりも実力

3年収が高い仕事はそれだけ高い成果を求められる

4人間関係がうまくいかないから転職するという人は、転職先でもうまくいかない

5仕事に対するプロフェッショナリズムが必須。

 また、「チャンスを活かす転職成功26の鉄則」(第5章)というのがあって、このなかには、「会社に退職の意志を伝えたら、決して撤回しない」(鉄則12)とか、「引き継ぎができないなら辞めてはいけない」(鉄則13)なんていうのがあって、これらは入社前編。入社後編としては、「一事が万事!初日が肝心」(鉄則16)、「フラッシュバック症候群に負けない心」(鉄則19)、「ホームランはいらない。着実なヒットを狙え」(鉄則22)などなど、これらの鉄則も非常に参考になります。

 しばらくお休みしていますが、昨年末に行ったポッドキャスティング「アイデアエクスチェンジ」にもでてもらっています。こちらもぜひお聞きいただければ幸いです。

 著者と僕のベクトルは、在学中から続く時間軸のなかで、何年かごとに交わってきました。これからもお互い、健康で、しっかりと働き続けることができればいいなと心から思っています。

アイデアエクスチェンジ

 

 

「人生のやり直し」

 ツイッターでフォローしているお一人に日本で起業家として成功された中国人の宋文州さんがいる。彼のユニークなメッセージには日頃共感を感じることが多い。その中でも今朝のツイートのひとつは、非常に大切なメッセージだと強く思う。それは以下のようなもの:

 『「人生のやり直し」とはできなかったことに拘ることではなく、違うことに意味を見出すこと』

 これは僕のように50代に入った人間にとっては非常に大切な「真理」だと思う。いや、すべての中高年、老人たちにとって大切な「真理」だ。
 
 数年前、お世話になっている先輩起業家から、「あなたも40代の後半から50代に近づいている。これから新しいことを始めるには微妙な年齢になってきたね。」と言われたとき、「あ、そうか」と感じることがあった。今朝の宋さんのツイートには、その時と同じように感じるものがあった。

 年を重ねていけばいくほど、できなかったこと、失敗したこと、得られなかったことが増えていく。それらとどのように「折り合い」を付けていくのか。

アメリカも大学生の就職は厳しい。

 アメリカに出張中ですが、こちらで何人かの人たちから聞いた話しです。
 大学生のインターンは、履歴書に書く職歴が欲しいという学生が多いため、過去、「お給料」にあたるものを払っていた会社もいっさい金銭による報酬を払わないというケースが増えたと聞きました。アメリカでも非常に就職戦線は厳しいようです。
ただ終身雇用でないからでしょうか、考え方に、日本と違って柔軟性があるように思います。今は苦しくても、役に立つ職業経験を積むことが大切だというように考えることができるのが前向きでいいなと思います。
 日本の場合には、大学卒業と同時に、「いい会社、有名な会社、大きな会社」に入れなければ、サラリーマン人生万事休すのように思い込んでいたり、親御さんたちも、そのような会社に入れないのであれば、就職しなくてもいいくらいのことを言う人がいる(それは極端な例だと思いたいですが)と聞きます。日本企業の新卒優先採用はこの意味では非常に悪い影響を学生や社会に与えているように思います。
 日本社会も相当混乱してきているのに、大企業や役所を中心として新卒採用にこだわる、それも一時期にまとまって採用活動を行う。リクルートを中心とする就職斡旋企業の功罪もありますが、企業側も横並びの採用方法を見直してもらいたいです。うちの会社のように歴史のない、まだ小さい会社は、優秀な人であれば、第二新卒であろうと、いつでも求めています。

事務職採用がシステム部へ配属。

 小社の営業担当者が、某県の商業高校の先生からお聞きしてきた話。小社で運営しているMOS、IC3を在学中に取得した卒業生が、事務職として就職した会社で、システム部に配属になったとか。本人も考えていなかった配属で、驚きはあったにしろ、会社からの期待にやりがいを感じているそうです。

 われわれが提供している資格を取得した学生のキャリアに、すこしでも積極的な影響を与えられたのであれば、たいへんうれしいお話です。

『なぜ、あの人だけが採用されるのか?』(佐藤文男著)

 大学の同級生、佐藤人材・サーチ株式会社社長の佐藤文男さんの本。副題には「失業しても、すぐ仕事に就ける法」とあります。「出口のないトンネルはない。あなたに合う仕事は必ず見つかると信じて前進し続けましょう」という著者からのメッセージも。

 自分を客観的に見つめてみること、自分のプライドや意地を横において素直な気持ちで現状を分析すること。まずそこからスタートしないと前には進めないのではないかと思います。自分の姿を鏡に映して視ることは、言うほど簡単ではないのですが。

 現役のヘッドハンターからの有益なメッセージやヒントで一杯の本です。