『会社の値段』(森生明著、ちくま新書)

 やさしい言葉で、会社の価値や企業統治に関して、考えるヒントを提示してくれている本です。書かれたのは、2005年末のようですが、この本のなかで提示されている著者の意見や疑問は数年後の今も日本の現状には当てはまります。

 

 例えば、普段なにげなく使っている、「企業価値」と「株主価値」の違いを説明できる人、これらについて、自分なりの考えを持っている人がどれだけいるでしょうか?  著者の指摘の通り、日本で使われる「企業価値」は漠然と使われています。「株主価値」のように、数字で明確に示しうるものではないように思えます。そのあいまいさの陰に日本の経営者たちは逃げ隠れ、株価で表される企業の価値を上げていく努力を怠ってきたと言えます。隠れた価値を見つけだし、安く買い高く売ろうとする「ハゲタカファンド」に対する感情的反発からは、自信のなさと努力不足をそのままにした「嫉妬」を感じます。

 

 先日、外資企業が、本国の株式を使いながら、日本にある子会社を通して日本企業を買収する、いわゆる三角合併は、法律で可能になって以来、まだ一件しか成立していないという記事を読みました。日本の資本市場の閉鎖性の一例でしょうか。