文春新書『ポスト消費者社会のゆくえ』(辻井喬/上野千鶴子)

 毎週土曜日の読売新聞朝刊に連載されている、辻井喬/堤清二による「回顧録」とあわせてこの本を読むと、経営者としての堤清二さん、作家としての辻井喬さんのことをよりおもしろく知ることができます。ちょうど、今朝の読売新聞朝刊には、三島由紀夫が市ヶ谷で自殺したときのことが紹介されています。ほぼ同じ話が、この本の中にもでてきます。三島は辻井さんの2歳年上のようですが、親しくされていたことを知りませんでした。

 大学時代の友人の一人は、堤清二が作り出したセゾングループの文化事業への関心から、西武百貨店に就職しました。1983年、セゾングループが躍進していた頃です。作家(辻井喬)でもある経営者(堤清二)は、バブルの崩壊とともに消えていきましたが、挑戦した事業はおもしろかったし、その視線は高いものを見ていたのではないかと思います。今では、作家・辻井喬が残っています。
 上野千鶴子さんが、この本の中で、非常に鋭い質問者、コメンテーターの役割を果たしています。新書でも900円ですが、320ページほどの充実した対談で、非常におすすめです。

YouTubeに、セゾングループ(堤清二)に関するおもしろいプレゼンテーションが出ています。


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ポール・ニザン著『アデン・アラビア』(晶文社刊)

 大学生の頃、読んだ本です。久しぶりに冒頭の、あまりにも有名な一節を読み返してみました。最初の一文が、紹介されることは多いようです。(「僕は20歳だった。それが人の一生でいちばん美しい年齢だなどとだれにも言わせまい。」)

 その後に続く文はそれほど紹介されませんが、以下のように続きます。「一歩足を踏みはずせば、いっさいが若者をだめにしてしまうのだ。恋愛も思想も家族を失うことも、大人たちの仲間に入ることも。世の中でおのれがどんな役割を果たしているのか知るのは辛いことだ。」(篠田浩一郎訳)

 人それぞれ感じるところは違うかもしれませんが、ポール・ニザンの言葉は、今の僕らにもストレートに響いてきます。恋愛や家族を失うことの痛手は分かったとしても、失うことを恐れるほど、思想にコミットすることは、今の時代、大半の人からすれば理解不可能ということでしょうが、ポール・ニザンの友人のひとりはサルトルでした。

 この本は、日本では1966年に発行されています。→aoten store

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野村克也著『野村ノート』(小学館刊)

 野球の野村監督による、一流のリーダー、一流の人間になるためのアドバイス。そして、裏話を交えながらの、一流の野球選手とはなんぞやというお話。野村さんは勉強家だなと感心します。もう日本の野球にはまったく関心がなくなった僕ですが、この本に関して言えば、われわれビジネスマンにもジーンと来る話が満載です。

 第一章に以下のような言葉が紹介されています。(この言葉はよく紹介されますが、久しぶりに出会いました。)

心が変われば態度が変わる。態度が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば人格が変わる。人格が変われば運命が変わる。運命が変われば人生が変わる。

 南海ホークスの選手兼監督だったころ、僕はまだ小学生だったのですが、ホークスの春キャンプが、高知の大方であったことを覚えています。野村さんにもサインをもらったような記憶があります。この人の奥さんだけは、理解できないのですが、悪妻のおかげもあって、野村さんは、大活躍なのでしょうか?!

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寺脇研著『官僚批判』(講談社刊)

 生涯教育とゆとり教育で有名だった元文部省官僚が、役人時代を振り返った本。以前、ご紹介した高橋洋一さんの『さらば財務省』もそうですが、キャリア官僚として、組織の中でかなりのポジションにまでのぼりつつも、ユニークなキャラクターが故に、組織からはじかれていった元官僚が、部分的とは言え、今の官僚制度を批判する本を書き始めたことを、僕は歓迎しています。
 寺脇さんがマスコミによく出ていたとき、このかたは「ゆとり教育」を積極的に広報されていたように記憶しています。ゆとり教育は、このごろではさんざん批判されています。でも、学力低下も含めた子供を巡るさまざまな問題に関しては、学校教育に頼り切っている親、子供を金儲けとセックスの対象にしてしまっている一部のビジネスと大人たちの自制心のなさが、もっと大きな根本問題としてあるのではないかと思っています。(ケータイ業者は、フィルタリングの問題に関して、イノベーションを阻害するだとか、言論の自由だとか、表現の自由なんて、言っていますが、僕はふざけた戯言だと思います。どうやって株価に影響を与えないようにしようかという下心が、衣の下から、透けてみえます。)

 寺脇さんも、役人時代には言えなかったことを、退官されてからは発言できるようになったのでしょう、次のような文章を書かれています。
「安倍前首相は、『私の内閣』という言葉をしばしば口にしていた。私は、あの言葉を耳にするたび、憤りを禁じ得なかった。総理大臣といえども公務員である以上は国民全体の奉仕者であり、その立場にある人が『私の内閣』などと言っていいはずがない。」
 他省庁との仕事を通じて感じた省によるカルチャーの違い、福岡県、広島県への出向の経験談、率直に語られるご自身の欠点など、おもしろく読ませていただきました。役人時代には、抑えないといけなかった、お持ちの多才さを、自由奔放に、存分に発揮されますように。

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『たった三行で会社は変わる』(藤田東久夫著)

昨年いただいたままになっていた本。今週ようやく読ませていただきました。著者は、もともとは、日本航空のサラリーマンだったのですが、義理のお父さんの会社を継いで社長になった経験から、この本を書かれています。この本の中で、サラリーマンと企業家の違いを以下のようにまとめていらっしゃいます。サラリーマンも、永遠にサラリーマンのまま終わるだけでなく、企業家に変身できるということは、この著者自身が証明していることです。

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1 企業家は会社をかけて仕事し、サラリーマンは自分をかけて仕事をする。
2 企業家は週末をうらみ、サラリーマンは喜ぶ。
3 企業家は同じことをくり返し言うが、サラリーマンは一度言えば済むと考える。
4 企業家は変化を起こすが、サラリーマンは変化を嫌う。
5 企業家は課題に対して自ら行動を起こすが、サラリーマンは他人事だと考える。
6 企業家にとって経営理念はものすごく大切であるが、サラリーマンにとってはどうでもいい文言の羅列である。
7 企業家は物事を簡単に言うが、サラリーマンはサラリーマンはむずかしく言う。
8 企業家は会社は倒産するものだと心得るが、サラリーマンは考えたこともない。
9 企業家は失敗談を多く語るが、サラリーマンは成功談ばかりくり返す。

『理解されないビジネスモデル-消費者金融』(時事通信社)

あまり普通の人は読まない本かもしれません。ただ、日本社会の病理を理解するには、この業界のことを理解しておく必要があると思います。先日ご紹介した、『反貧困』(岩波新書)とも関連してきます。(もうひとつ、理解すべき業界の一つとして、パチンコ業界もあります。)

この本は、貸金業法の改正に関して、消費者金融業界の人たちの意見や反省を集めたものです。すべての業界には、光と陰があります。消費者金融ももちろん例外ではありません。それどころか、多重債務者問題のように、恐ろしいほどの陰が一部では存在しています。80年代後半のバブル時期大ベストセラーになった、漫画『ナニワ金融道』を読めば、ものすごい勉強になります(漫画を読まない僕ですが、この作品は全巻読みました)。

もうひとつ、面白い話がこの本にあります。貸金業法の改正にあたった金融庁の担当の方が、インタビューにでています。借り手のリテラシーの低さが、多重債務者を生んでいる背景にあるとされています。ご自身も、2%の金利でも、長期の住宅ローンの返済において、奥様から指摘されるまで、金利負担の大きさをよく考えていなかったというお話をされています。ある意味、監督にあたる役人の方々が、金利感覚をお持ちになられていない、あるいは実務に基づいた感覚をお持ちではないことが、滑稽であると同時に、恐ろしいことだと思いました。(株式投資をやらない方が、証券ビジネスの監督にあたることと同じように。) 頭のいい人たちであればあるほど、現場の感覚が大切ですから。

アオテンストアby amazonに、黒犬通信で取り上げた本をまとめてあります。

『ほんとうの環境問題』(池田清彦、養老猛司著)

 先日東京ビッグサイトであったWeb2.0のイベントにいったら、来客者の名刺と交換に、エコバッグを配っている会社がありました。去年は、有名なイギリスの鞄デザイナーによるエコバッグを買うために、伊勢丹の前に早朝から並んだ女性たちが大勢いて、買えなかった成金女が店員にくってかかったという話を聞いた覚えがあります。
 環境のことを本当に考えているのなら、エコバッグなんてまず作らないこと!だって、バッグを一つも持っていないなんて人は、もう、いないんだから。ものを作ると、エネルギーを新たに消費し、環境の破壊につながっていきます。無駄なものは買わない、作らない、買わせない。広告代理店のひとたちには申し訳ないけど、つまらないキャンペーングッズなんかも、できるだけ作らない方がいいと思うんだけど。
 この本『ほんとうの環境問題』は、主義主張のため、ロマンチシズムのため、ブームに乗るため、意識が高くて優しい人と思われるため、そんな理由から、環境問題を口にしている、そんな人たちが読んでみるといい本。
 地球温暖化のことがいろいろと話題に出ますが、実は、事実関係がまだよくわかっていないということを最初に押さえておいた方がいいと思います。本当に温暖化が進んでいるのかということからして、科学者の間でも議論が分かれていること、マスコミは温暖化など進んでいないという議論をあまり伝えようとはしないことを、覚えておくべき。今の時代、温暖化が進んでいるという記事の方が売れますからね。

 それから、8月の洞爺湖サミットで、環境問題に関して、つまらない約束をしないことを祈っています。京都議定書で自分の首を絞めるようなCO2削減のコミットメントを行いましたが、再度、議長国ということで、大盤振る舞いをするのではないかと危惧しています。そして、マスコミの多くは、それをよしとするのではないかと。

 

『反貧困』(湯浅誠著、岩波新書)

決してODAの本ではありません。日本国内の貧困問題の話です。日雇い労働者の過酷な話がいくつか出てきます。

 この本は、現在の日本社会の一面を正確に描写しているのかと思います。僕らのオフィスが入っている新東京ビルの周り、東京駅京葉線地下には、たくさんの中高年、老人のホームレスたちが存在しています。毎日、彼らの姿を目にしています。一見華やかになった丸の内ですが、地下にはそのような人たちが多数存在しているのが、現実です。

 気軽に転職やフリーターになることをそそのかすような人材紹介会社の広告などをみるたびに、若いひとたちに、どのような影響を与えているのかと思います。就職しなくても、「家にいればいいよ」という物わかりのいい親も増えていると聞きます。これまで当然だったことが、当然ではなくなりつつあるのでしょうか?

『アイラブエルモ』が雑誌で取り上げられています

アメリカン・ブック&シネマの出版プロジェクト第一弾の『アイラブエルモ』。女性雑誌で取り上げられています。日経ウーマン6月号104ページ、GLITTER6月号の142ページ。このGLITTERという雑誌、初めて知りました。

アイラブエルモの購入は、こちらから→アオテンストアby amazon

『秋田犬の父ー澤田石守衛』(木楽舎)

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先日ご紹介したDog Man こと、澤田石守衛さんを紹介した日本語の本を、本日、アマゾン(古書)で入手。こちらの表紙は、澤田石さんの笑顔と秋田犬が、表紙を飾っていて、まったく違った雰囲気になっています。Dog Man の表紙に使われた写真も、この『秋田犬の父ー澤田石守衛』の中に含まれています。同じ人物を取り上げた二つの本の作り方、伝えようとするものの違いが、表紙に現れているように思います。