道なきところに道を作っていく作業。

2月3日(日)付の東京新聞「あの人に迫る」というコーナーで、映画字幕翻訳者の戸田奈津子さんへのインタビューが掲載されていました。戸田さんには数年前、アメリカン・ブック&シネマで発行した書籍『ドックマン』の帯にお言葉をいただくため、都内のホテルのカフェで一度だけお目にかかったことがあります。(その時にいただいた言葉は、以下の通り。「日本人の魂が秋田犬とその血を守った一家の物語から香り立つ。」)→アメリカンブック&シネマ

映画字幕翻訳を目指した時(大学3年生)、映画界へのコネもなく、映画のクレジットによく出てくる清水俊二さんの自宅の住所を調べて手紙を書いたりしたものの、大学(津田塾だそうです)の紹介で保険会社に就職。しかし字幕への夢があきらめられず1年半で退社(このての話は、いまでもよくあるのでは?)。翻訳のアルバイトで生計を立てるようになったとのことです。

ブレイクする大きなチャンスになったのは、コッポラの映画「地獄の黙示録」。それまで道を志して20年、「長かった。夢を追い続けるのは不安だった。夢を持てばきっとかなう、という人がいるけど、それはおとぎ話。チャンスの確率は五分五分。恵まれないケースが五分あると覚悟していたけど私は人生を賭けた。」というお話でした。

キャリアや仕事の話は、いつの時代も、さきのシナリオがそれほどはっきりしていないような気がします。目の前にレッドカーペットがひかれているところは滅多にないし、もしそんなところがあったとすれば、猛烈な競争があるのではないかと思います。

新しい分野を切り開いていくことは、道なきところに道を作っていく作業のようなもの。自分の人生を賭けるに値するなにかを見つけることは難しいし、それが人生を賭けるに値するものだったかどうかは、ゲームが終わってみないとわからないのかもしれないです。

天命を知るべき年を越えても、迷うことが多いのが、僕のような凡人です。