「日本海軍」から「フクシマ」まで。

最近読んだ本で記憶に残った本、2冊。

一冊は「日本海軍400時間の証言_軍令部・参謀たちが語った敗戦」(NHK スペシャル取材班、新潮社)。
そして二冊目は、「裸のフクシマ_原発30km 圏内で暮らす」(たくき よしみつ著、講談社)。

前者は70年前の話で、後者はここ1年ほどの話。でも、両者に共通するテーマがある。

無責任さ、目先の自己の利益追求や保身、科学的思考の弱さ、自由な発言が許されない上下関係。残念だけど、このふたつの本から見えてくる権力者たちの姿はほとんど変わっていない。裸になった権力者たちの姿は、あっけないほど、情けない。どうしてこの程度の連中が権力を持っていたのか、不思議に思えてくる。

「日本海軍400時間の証言」はNHKスペシャルの制作にあたったチームによる、「メイキング本」。中味がある本だったので、テレビ番組のDVDも購入。

「裸のフクシマ」の著者は趣味で狛犬の写真集を出していたり、パソコン、デジカメ、オーディオ関係も、ユニークな視点から取り上げている。テレビにも時々出ているようだけど、おもしろそうな人。狛犬の写真集も含めて、4.5冊、著書を購入済み。

"SMALL GIANTS" 著者によるアンカー・ビール紹介

アメリカン・ブック&シネマが発行している書籍のひとつに、”"SMALL GIANTS"という本があります。最近、日本語版の"Wired"誌でもご紹介いただき、新たな読者を獲得できていることを、とてもうれしく思っています。
ユーチューブに、著者 Bo Burlingham が"SMALL GIANTS" の中でとりあげている14の会社のひとつ、アンカー・ビールを紹介しているビデオがあります。




YouTube: BNET Book Brief: Small Giants


その他にも著者が登場するビデオがありますので、Bo Burlingham で検索してみてください。

『采配』(落合博満著)_野球界のオシム。

今シーズンからのにわか野球ファンです。過去10数年、サッカーばかり見ていたので、野球に関心を持ったのは小学校低学年以来ではないかと思います。1960年代後半、まだ野村が現役だったころ、南海ホークスの春のキャンプを、高知の大方町に、なんどか見にいきました。とは言え、いまでもサッカーのファンです。今年の天皇杯にも、うちの会社はスポンサーで入っていますよ。

この本の中でなんどかでてくる、2007年の日本シリーズ、完全試合ペースで進んでいた先発投手を9回に替えたという話も、お取引先で中日ファンのKさんから聞くまで知らなかったほど、ずっと野球には見向きもしていませんでした。今シーズンは、ちょっと考えがあって、野球のこと、野球ビジネスのことをもっと知りたいという気持ちもあり、東京ドームのシーズンシートを買い、かなりの試合を観に行きました。が、必ずしも熱心なジャイアンツファンという訳ではありません(投手・澤村のファンです。2年目も、あの面構えで、堂々と打者に立ち向かってほしいです)。

『采配』を読んで、「野球界のオシムを見つけた!」と、勝手に喜んでいます。ずっとオシムのファンですが、落合の考えの中に、オシムと共通する所をいくつも見たように思います。(あくまでもボクの勝手な感想です)

両者ともに、非常にストイックに自分の仕事に全身全霊を捧げており、理(合理主義)と情を併せ持った職人的監督かと思います。また両者とも個人主義者かと思います。しっかりと「個人が立っている」からこそ、他の人たちへもしっかりと配慮ができる人たち。そして歴史を学んでいる点もすばらしい。

落合の言っていることでボクが非常に共感した指摘が2、3あります。

ひとつは、「すべての仕事は契約を優先する」というタイトルの文章。日本社会は、「国のため」、「世界一になるため」などどいう大義名分があると、組織図や契約を曖昧にして物事を決めようとする。しかし、選手たちは球団と契約している個人事業主なのだから、WBCに参加するかどうかは、まず本人、さらには各チームの同意が必要だという指摘。

二つ目は、日本の野球界は、「野球協約の見直し」が必要だという指摘。1951年に制定された野球協約(野球界における憲法)は、根本からの見直しが必要なのではないか、また野球界の最高責任者であるコミッショーナーは、これまで法曹界の出身者が多いにもか関わらず、お飾り的存在になっていて、なにも仕事をやっていないという指摘。

この2点は、野球界だけの話ではないです。日本の政治、ビジネス全般にも言える課題です。

そしてもう一つ、感心し、共感するのは、本の一番最後にでてくる、「人生を穏やかに生きていくことには、名声も権力も必要ないと考えている。要するに、仕事で目立つ成果を上げようとすることと、人生を幸せに生きていこうとすることは、まったく別物と考えている。(中略)一度きりの人生に悔いのない采配を振るべきではないか」という考え。

この最後の文章にいたるまで、あれだけ野球(仕事)でどうやって勝つのか、結果を残すのか、そのためにどれだけ一心不乱に仕事にのめり込むのかということを滔々と語った後に、この発言。そんなクールさがすごい。

この前、長年ジャイアンツファンだと言う方が、「落合の野球はだめだ」と語気を強めて話されたので、ちょっと圧倒されました。にわか野球ファンのボクなので、まだまだわからないことばかりなのですが、この本の中で語られる落合の言葉には共感を覚え、また見倣いたいと思うところが多々ありました。

来年も東京ドームでのシーズンシートを買います。監督・落合はいませんが、解説者・落合を期待しています。東京ドームで、ラジオの実況中継で落合の解説を聞きながら、野球をもっと理解できるようになりたいです。

本日より全国主要書店に『MBAの誓い』が並びます。

オデッセイコミュニケーションズの100%子会社、アメリカン・ブック&シネマから 『MBAの誓い』(原題:MBA Oath)が翻訳出版されました。本日より、全国主要書店に並びます。ビジネスを志す、すべての人たちにお読みいただけるとうれしいです。

エンロン、リーマンと、2000年以降のアメリカはさまざまなスキャンダルが続いています。日本だって対岸の火事ではありません。この数ヶ月に表面化しているいくつかの事件(大王製紙、オリンパスなど)は企業経営者のモラルに関わる問題です。
今回出版した『MBAの誓い』は、ビジネススクール在校生、若き卒業者たちのビジネスリーダーとして生きていくための誓いです。でも、若いビジネスマン、ビジネスウーマンたちだけでなく、経団連に所属するような大企業の経営層のかたたちにこそ、読んでいただきたいと思っています。

ボク自身、ビジネススクールを卒業して来年2012年夏で25年になります。来年10月にはボストンで卒業25周年を祝う集まりに出席する予定です。日々、新たな気持ちでビジネスに取組んでいきますよ!

アメリカン・ブック&シネマ

歴史家・渡辺京二のアドバイス、水森亜土と愛犬(東京新聞夕刊から)

今日の東京新聞夕刊の文化欄に、津田塾大学の三砂ちづるさんが、渡辺京二の言葉を紹介していた。ゼミ生たちを連れて、熊本に住む渡辺を訪れた時の彼の言葉。すべての学生、そしてかつて学生だったすべての大人に励ましになる言葉だ。

 「自己実現?それは出世主義のことでしょう。人生は無名に埋没するのがよいのです。でも、あなたがたは卒業論文を通じて、知の世界にひらかれた。その問いをずっと抱えていくことです。一生、本を読んでいきなさい。」

 「社会がどうであろうと、自分は生きたいし生きてみせる。人は社会から認められるから生きているのではない。社会に貢献なんかしなくてよろしい。まず自分がしっかり生きること。社会全体がお前は死ねと言ったって、嫌われたって、自分は生きる。生きていっていいんだ。そのことを肯定すること。そうやって生きているひとりひとりがなんとか関係を作らなければならないから、社会というものができていくる。」

 「社会は正義の権化ではなく、もっとでたらめでいいかげんなものだ。社会が立派なものでないからこそ就職難もでてくる。人類としての問題も出てくる。人間がどうやって生きていけばよいのか、問いがでてくる。あなたがたは大学でその知の扉に立った。だから、一生、その問いを手放さないことです。」

 そう一生、問い続けること!

追伸
東京新聞のとなりのページには、愛犬・ムクといっしょに写った水森亜土さんの写真が。ムクは♀の17歳。「甲斐犬の血が入っているらしく、野性的な性格でね」って。ここにも甲斐犬仲間!

Dscn1393

バルザック!

このごろ全く読んでいないけど、好きなフランス作家の一人、バルザック。
先週ベルギーからパリに帰ってきて泊まったホテルのそばで偶然見つけたバルザックの銅像。バルザックってこんなにハンサムだったの?背が低くて、ちょっとデブのおじさんの印象があったんだけど。1799年生まれ、1850年に51歳で死亡。現在の僕の年齢。モームはバルザックのことを「確実に天才とよぶにふさわしい人物」と言ったとか。
久しぶりに彼の小説も読んでみたくなったよ。
Dscn1252

朝日新聞朝刊"be Saturday"でABCの書籍が紹介されました。

8月27日付け、朝日新聞朝刊の"be Saturday" で、アメリカン・ブック&シネマ発行の『ランス・アームストロング ツールドフランス_永遠のヒーロー』(マット・ラミー著)が、記者のおすすめの一冊として紹介されました。この本は、イギリスのサイクルスポーツという雑誌の記者だった著者に、僕の方で直接コンタクトして、7連覇後のランスについて新たに書き下ろしてもらった本なのです。
ご紹介くださった朝日新聞の担当記者の方、ありがとうございます。

Dscn1135

ABC

『ロングトレイルという冒険』(加藤則芳著)

ヤマケイ(山と渓谷)やビーパルなどの雑誌読者を越えると、著者の名前はあまり知られていないのかもしれませんが、著者はロングトレイルの日本における一人者です。僕がこの方のお名前を知ったのはつい最近。今年始め、まだ入会金を納めただけで特になんらの活動をしているわけではないのですが、信越トレイルクラブという団体の「メンバー」になりました。長野県北部と新潟県の県境にある、関田山脈の山稜部にある80キロのトレイルのガイド組織が、NPO法人信越トレイルクラブで、その理事として、著者である加藤さんが入っていらっしゃいます。この団体のHPや資料でお名前を拝見したのが最初です。信越トレイルを少しずつ歩いてみたいと思っています。

先日、お盆休みでスローな雰囲気のオフィスから抜け出して、有楽町の三省堂で見つけたのが、この『ロングトレイルという冒険』(技術評論社)と、少し前に出版された同じ著者による『メインの森をめざして_アバラチアントレイル3500キロを歩く』(平凡社)。2冊まとめて買いました。

半年かけて、ジョージア州からメイン州までの3500キロを歩くコースがあるなんて知りませんでした。毎年500人程度の人が全コースを歩き、きっとその何倍もの数の人たちが一部コースを歩いているようなので、それだけでもアメリカ人はすごいなと思います。彼らのチャレンジ精神、それだけの人間が時間をとって挑戦することを可能にする社会のふところの広さ、コースを大切に守り育てる環境保護の意識。

『メインの森をめさして』は640ページの長さなので、ちょっと簡単には読めそうもありませんが、3500キロを半年かけて歩くことを考えると、そのくらいの厚さがあってもいいかなとは思います。

ただひとつお気の毒なことがあります。
『メインの森をめざして』のあとがきに告白されていますが、著者は難病であるALS(筋萎縮性側索硬化症)を発病されていて、ブログによると、外出するには車いすを必要とされているようです。
これまで実に活発に体を動かしてきた方が、このような病気になるなんて、実に残酷な話だと思います。病気の進行がすこしでも遅くなることをお祈りしています。

加藤則芳公式サイト
加藤則芳ロングトレイルを行く(管理者は加藤さんの奥様)
NPO法人信越トレイルクラブ

『人の子イエス』(カリール・ジブラーン著、みすず書房)

僕はキリスト教徒ではありませんが、イエスには関心を持っている人間のひとりです。仏教徒でもありませんが、ブッダには興味を持っています。

この本はイエスが行ったとされる奇跡をことさらに取り上げることもなく、イエスと会った(はずの)70数名の人間たちの声を借りて、ジブラーンの考える人間イエスを示したものです。

「あのナザレ人は、人々にとって医者だった。あのナザレ人ほど、人体と、その構成要素や特性に精通していた者はいなかった」(ギリシアの薬売りフィレモンが見た、医者・イエス)
「イエスは、天と地の驚異について、夜に咲く天の花々について、日が星々を覆い隠すときに大地に咲く花々について語りました」(カナの花嫁、ラフカが見た、ナチュラリストとも言えるイエス)
「イエスが語る神は、あまりに広大でどんな人間にも似ていないし、全知ゆえに人を罰することをしない」(ペルシャ人哲学者が見た、新しい神を提示したイエス)
「私が認めるイエスは、強大な狩人であり、難攻不落の聳え立つ霊に他ならない」(ナタニエルが語る、権威と力を持っていたイエス)

この本の中で、僕がもっとも好きなイエス像のひとつは以下のようなもの。
「イエスが教えたのは、いかにして人々を束縛する過去のしがらみの鎖を断ち切り、いかにして人が自由になるかということだ」(アンティオキアのサバが語る、自由人イエス)
「あの方が私たちとともにいたとき、あの方は私と世界を驚異に満ちた目で見つめた。あの方の目は、何千年にもわたる伝統によって曇らされておらず、さまざまな古くからの堆積物にも妨げられていなかった。あの方は、若々しい明るさをもってあらゆるものを明晰に見た」(ある哲学者が語る、明晰な観察者としてのイエス)

そしてこの本の中のイエス像が「立体的」であるのは、イエスを嫌い、イエスに反対した人たちのこのような声も含まれているから。

「あの男は、この国の立派な国民ではなかった。保護されるべきローマ帝国の市民でもなかった。だからこそあの男は、ユダヤ王国もローマ帝国も侮蔑した。空を飛ぶ鳥のように、義務も責任もなく自由に生きたいとあの男は望んだ。だから狩猟者が彼を矢で射落とした」(論法家エルマダムが語る、はぐれ者イエス)
「もし、アブラハムの種を継いだユダヤの子孫が繁栄するのが神の御心であるならば、その基盤となる土壌は汚されてはならない。そしてあのイエスという男は、汚染者であり、堕落させる者である」(大祭司カヤバの語る、汚染者イエス)

本書にあるカリール・ジブラーンの略歴を簡単に紹介すると以下のとおり;
1883年レバノン山間部の村で生まれ、1895年貧困の中渡米、ボストンで初等教育を受け、英語を習得。
1898年レバノンに帰国、アラビア語を納め、高等学校で文学と宗教学を学ぶ
1902年再度渡米、1908年から2年間パリでロダンの師事。
1931年にニューヨークで死去するまでに、合計7冊の英語著作。

『人の子イエス』を読むまで、この人のことはよく知らなかったけど、ジョン・レノンが「ジュリア」にこのひとの言葉を引用しているそうだし、神谷美恵子さんが、ジブラーンの詩集『預言者』を抄訳しているとか。
確かに、ジョンのイマジンからはジブラーンのイエスが聞こえてきそう。

『ドッグマン』、信濃毎日新聞でも取り上げられました。

Dscn0938

アメリカン・ブック&シネマの『ドッグマン』、信濃毎日新聞(長野県を代表する新聞)の書評コーナーでも取り上げていただきました(7月17日付け)。評者はノンフィクション作家の中村安希さん。先日、朝日新聞でも彼女の『Be フラット』の紹介記事を読みましたが、非常におもしろい作品のようなので、ぜひ読んでみようと思っています。(→『Be フラット』
「荒野が”現代生活の便利さや快適さに対する解毒剤”であるなら、本書は読者にとって解毒への第一歩になるだろ」というコメントをいただきました。ありがとうございます。