『日本の未来について話そう_日本再生への提言』(小学館)

コンサルティング会社のマッキンゼーが責任編集者としてでた本。マッキンゼーはアメリカ国内であった大がかりなインサイダートレーディングにパートナーが関与していて逮捕者もでたということで、FT(フィナンシャルタイムス)に大きな記事が先日出ていたばかり。「マッキンゼーの未来について話す」ことの方が先のような気もするけど、この本の企画自体は、マッキンゼーの日本法人からでているようなので、アメリカのことはこれ以上書かない。

会社でアシスタントのSさんが、第9章「文化の継承と発展」の中に、『ドッグマン』(アメリカン・ブック&シネマ最新刊)の著者であるマーサ・シェリルさんが、「秋田犬の系譜」というエッセイを書かれていることを教えてくれた。エッセイのタイトルは「秋田犬の系譜」となっているけども、ちょっと誤解を与えてしまうような気がする。彼女が書いているのは、秋田犬を絶滅の危機から救った『ドッグマン』の主人公、澤田石守衛がどれほど個性的な日本人であったのか、彼が秋田犬の中に見つけ、もっとも大切にした「気性」とは、「エネルギーであり、バイタリティであり、強さであり、勇気である」こと、その「気性」こそ、澤田石さんが身につけたいと願い、日本の近代化に伴って失われつつあると憂えた精神だったこと。この「気性」が社会の繁栄と力強さの柱であること。そんなことがこのエッセイのメッセージなのに。

発行人の僕が言うと自画自賛になってしまうけど、『ドッグマン』こそ、震災で傷ついた東北の方々に読んでいただきたいと強く思っている。(東北エリアのお取引先には一冊ずつ贈呈済み)。秋田犬に関心がない方でも、きっと読んで良かったと思っていただけるという自信作です。

『日本の未来について話そう』を読まれた方にも、『ドッグマン』(アメリカン・ブック&シネマ発行、英治出版発売)を読んでいただければ、うれしい。

アメリカン・ブック&シネマ

『「律」に学ぶ生き方の智慧』(佐々木閑著)

今日は愛知県犬山市にある名古屋経済大学を訪問。日頃のご愛顧に心より感謝申し上げます。

行き帰りの新幹線の中で読んだ本が、『「律」に学ぶ生き方の智慧』。著者は、昨年オデッセイマガジンにもご登場いただいた花園大学の原始仏教の先生。
仏教における出家とはどんなことなのか、出家集団のルールである「律」とは何か、科学者や政治家と出家など、佐々木先生の愛読者のひとりとしては楽しみながら読ませていただきました。特に、自然界の真理探求にのめり込む科学者たちも出家者と言えるのではないかというご意見には納得。
俗世界で仕事をするわれわれにも参考になる本。

特集「3.11後を考えるために」

6月19日(日)の東京新聞書評コーナーが、特集「3.11後を考えるために」で取り上げていた本。まったく知らなかった著者と本もあるので、ちょっと読んでみたい。村上春樹を上げていた人が二人いた。

イザベラ・バード著『イザベラ・バードの日本紀行』

永原慶二著『富士山宝永大爆発』

武者小路実篤著『或る男』

イバン・イリイチ著『生きる意味』

若松丈太郎著『福島原発難民_南相馬市・一詩人の警告』

Rクラーク、Rネイク著『世界サイバー戦争』

村上春樹著『神の子たちはみな踊る』

鴨長明著『方丈記』

村上春樹著『アンダーグラウンド』

ポール・ヴィリリオ著『アクシデント事故と文明』

長井彬著『原子炉の蟹』

吉田茂著『回想十年』

戸川幸夫著『高安犬物語』

飯塚訓著『墜落遺体_御巣鷹山の日航機123便』

ホルクハイマー、アドルノ著『啓蒙の弁証法』

もうひとりの「ドッグマン」。

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6月17日の東京新聞夕刊一面に、忠犬ハチ公の研究の第一人者といわれた林正春さんの記事がでていた。一昨年末、80歳で急逝した林さんが集めた大量のハチ公関連の資料が、渋谷区郷土博物館・文学館で活用されることになったとか。

この方も、もう一人の「ドッグマン」だ。

ドッグマン

写楽展、新しいテレビCMの撮影、パルヴァースさんの講演。

昨日は上野の国立博物館であった写楽展の最終日。朝一番に上野へ。西洋美術館では、「レンブラント・光と陰」も最終日。こちらは時間がなくてパス。

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今日は、お昼から、川崎市宮前平のスタジオで新しいテレビCMの撮影。今年は、昨年とほぼ同じ予算で、全く異なる指向のテレビCMを2シリーズ作ります。先週土曜日は当世オフィス事情編、今日は外人モデルを使った会話編。新しいCMは7月から公開予定です。乞うご期待。

夕方に都内に帰ってきて、有楽町にあるThe Foreign Correspondent Club of Japan であったRoger Pulversさん(東工大の世界文明センター所長)の新著「The Dream Of Lafcadio Hearn」についての講演。彼とはもう10年くらいのおつきあいかな。放浪者としてのラフカディオ・ハーンにとても関心があります。かれは、rootless cosmopolitan の一人だった。あ、それから90人ほどの参加者のなかに、旅行番組で有名だった兼高かおるさんも!もう80歳をこえていらっしゃるのに、すばらしいスタイル、姿勢、そしておしゃれに感動。

帰るとき、廊下に飾ってあった最近のスピーカーたちの写真の中に、映画「ノルウェーの森」にでていた女優、菊池凛子と水島希子を発見!ふたりのファンとしては超ハッピー。忙しい一日でしたが、素敵な出会いがあり大感謝。


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『デフレの正体』(藻谷浩介著)

 本屋に山積みになっている昨年からのベストセラー。マスコミの有名人たちが大推薦という帯の宣伝文句のせいで、当初は逆に読む気はなかったのですが、先月だったでしょうか、日経新聞の夕刊に数日連続ででていた著者のインタビュー記事を読んでおもしろい方だと思ったので読んでみました。その記事で僕がおもしろいと思ったのは、「地方の幹線道路や新幹線などが無駄なのではなく、田んぼの間に網の目のようにはりめぐらせた道路こそが、無駄な投資になっている」という趣旨のご指摘。
 
 この本の中身は、副題に「経済は『人口の波』で動く」とあるように、日本のデフレは根本的に国内の人口動態に基づいていて、好況、不況の波によって起こされているものではないということで、それに関してはまったく反論の余地はないです。同じような指摘は、1980年代終わりか、1990年代の始めだと記憶していますが、人口減少にともなって今後地価は下がっていくと指摘していたある証券会社の創業者の発言と根本的にはまったく同じ指摘だと思います。20年たち、その証券会社の創業者(立花証券の石井久さん)の予言の正しさに感嘆するばかりです。石井さんは1993年9月日経新聞に連載された「私の履歴書」最終回に日本の人口の動向に着目していることを書かれています。

 本質的なことは時にあまりにもシンプルすぎて、それを認めたくない陣営には受け入れがたいのか。あるいは受け入れてしまうと現在の仕組みを根本的に変えていかないといけない。その結果、今持っている既得権は手放さざるを得ない。ならば、見ない、聞かないの姿勢を貫き通す?

 『デフレの正体』の著者が持っている柔らかい精神というか、押し付けられた「先入観」や「正解」ではなく自分が見て考えたことから自分の意見を組み立てていく姿勢に感心しました。

 また、民間企業は政府の景気対策に頼ることなく、自分たちで経営努力をしていくべきだというご意見にも大賛成です。

 先日、現役経産省キャリア官僚による『日本中枢の崩壊』のことを書きました。この2冊には共通する指摘が多々あります。お二人とも優秀な方々だと思いますが、同じように優秀な人たちが霞ヶ関にはたくさんいらっしゃるはずです。このお二人がかれらとなぜ違うのか。それはお二人が「王様は裸だ」と言える率直さをお持ちだからなのではないかと思います。もっと多くの霞ヶ関や永田町の若手エリートたちが、「王様は裸だ」と叫ぶことができれば、日本のどん詰まり感にもすこしは穴があくのではないかと期待しています。

石井久「私の履歴書」

『日本中枢の崩壊』(古賀茂明著)

経済産業省在籍のエリート官僚による、どんづまり日本への問題提起、警告、そして励まし。おすすめの一冊です。

ただし、元「エリート官僚」と言った方が正確かもしれない。というのは、「改革派官僚」の著者はここ数年霞ヶ関村で完全に村八分状況ということですから。あとがきによると、数年前に大腸がんの手術を受け、リンパに移転があるがんだったと告白されています。移転の可能性があるということなので、これからもご無事でいらっしゃることを心よりお祈りしています。

この本で初めて知ったということはそれほど多くないのですが、かなりのページにポストイットを貼りました。
その中から、心から同意、共感を覚えたご意見をご紹介します。

1「福島原発の事故処理を見て、優秀なはずの官僚がいかにそうではないか明白になった。いや、無能にさえ見えた。専門性のない官僚が、もっとも専門性を要求される分野で規制を実施している恐ろしさ」(37ページ)
2「手がかりがほとんどない状態で新しいものを創造するというのは役人がもっとも苦手とするところだ」(63ページ)
3「消費税増税だけでは財政再建はできないが、日本国民は悲しいまでに真面目だ。消費税増税はもはややむを得ないものと思い始めている」(86ページ)
4「ここで強調しておきたいのは、こんな細かな細工をほどこして国民の目を欺くことは、官僚にしかできない、ということだ」(102ページ)
5「私を霞ヶ関の『アルカイーダ』と呼んで悪評を立てようとする幹部もいると聞く」(108ページ)
6「日本の中小企業政策は、『中小企業を永遠に中小企業のままに生きながらえさせるだけの政策』になってしまっている可能性が高い。しかも、それによって強くて伸びる企業の足を引っ張っている、ということさえ懸念されるのである」(118ページ)
7「霞ヶ関の官僚の多くは、目は曇り、耳は遠くなっている。聞こえてくるのは、政府に頼って生きながらえようとするダメ企業が集まった団体の長老幹部の声や、政治家の後援者の歪んだ要請ばかりだ。政府に頼らず本当に自分の力でやっていこうとしている企業は経産省などにはやってこない」(132ページ)
8「一部に退職金を2回取るのが問題だという話もあるが、それは本質的な問題ではなくて、重要なのは、無駄な予算が山のようにできあがる、あるいは癒着がどんどんできる。これが問題だ」(138ページ)
9「結局、民主党には政治主導を行う実力がなかったということだろう。(中略)国民に幻想を振りまいた『政治主導』は最初からどこにもなかったのだ」(166ページ)
10「最大の問題は民主党が何をやりたいのか、それがはっきりと見えてこない点である。マニフェストを熟読しても、民主党が目指している国家像が伝わってこない」(177ページ)
11「連結決算は読み解くのが難解で、大蔵省にはそれがわかる人間が3人しかおらず、人材育成もたいへんだし、税の徴収も面倒になるという理由が一つ。世界中で普及していた制度なのに、なんとお粗末な話だろうか。官僚は優秀でもなんでもないことを示す典型だ」(234ページ)
12「私は、このときの橋本大臣こそ、政治主導の見本だと思っている。政策に関する緻密な検討は役人が担当する。その結果を、最終的に閣僚がリスクを取って政治判断する。その際、絶対に信頼できるスタッフを持っている。これが政治主導である」(245ページ)
13「この独禁法改正が、いまのところ私の官僚人生で、もっとも大きな仕事である」(251ページ)
14「電力会社の社長が経団連や他の経済団体の会長に推されることが多いのはなぜか。電力会社は日本最大の調達企業だからだ。電力会社は、鉄をはじめ、ありとあらゆるものをそこらじゅうから大量に買う」(259ページ)
15「法務省のキャリア組には、自分たちの天下り先を増やそうなどというよこしまな考えはない。法務省で刑法の改正などを担当するのは、司法試験に合格した検事が中心で、法務省を退官しても弁護士になる道があるので、天下り先を作る必要などないからだ」(270ページ)
16「役人の政策が浅はかになるのは、利益の誘導もさることながら、現場をほとんど知らないからだ」(295ページ)
17「真実は、『なんとか成長しないと破綻への道から抜け出せない』というところにある」(302ページ)
18「過去、各国が不況から抜け出すために打ったマクロの経済政策や、危機に陥って財政再建した歴史の教訓を見ると、増税中心で成功している国はほとんどない。政府の収入があればあるほど支出が緩くなってしまうからだ」(304ページ)
19「いまだに財務省の天下り先確保のために、JTの株を持っている」(305ページ)
20「いまほど霞ヶ関を超える目を持って、全体を動かすことのできる政治家の能力が問われているときはない」(308ページ)
21「私が考えているのは、まず、『平成の身分制度』の廃止である。いまの日本には、努力なくして手に入れた地位や身分がいっぱいある」(331ページ)
22「これまで私が挙げた政策を政府にやってもらおうと思ったら、国民のみなさんも日本人特有の金持ちを妬む気持ちを捨てなければならない」(352ページ)
23「民主党にはその場その場でもっともらしい話をする人はたくさんいた。特に弁護士出身の人たちに多い。しかし、よく聞いていると、その場しのぎの理屈が多かった。理屈が得意なだけではだめだ」(354ページ)
24「国を引っ張る政治家がまず、正直に現状を国民に訴えることが大事だ。(中略)姑息な手段を使わず、総理が堂々と、いまの財政はこれほどひどい状況になっていると、国民に真正面から訴えてほしかった。そして国民に選択肢を示し、自らの決断を問う」(357ページ)
25「東日本大震災の後、もう一つ悪いパターンが見えてきた。震災対応を理由とした大連立構想だ。連立にあたっては具体的政策の議論をまずしなければならないのに、菅総理は政局を優先し、中身のない連立を打診した。自民党も公共事業の配分に関与しようと、守旧派の長老たちが前のめりになった」(358ページ)

『地震の日本史』(寒川旭著)

縄文時代から現代まで、地震で綴る日本の歴史。この本を読んでいると、よくもこれだけ地震がおこることよと思う。地震を中心に日本史を見ていくと、教科書でとりあげられるような出来事は、頻繁に日本列島を襲う地震の間、間に行われる日本人の政治的、経済的、文化的活動ということになる。

2007年に初版が出て、東日本大震災後の4月、増補して新たに出版された本。

著者が言う通り、「地震がなければ、日本という島々が存在しないこともまた事実」であり、「活断層が起伏に富んだ美しい地形を造り、地盤運動で沈降し続ける広い空間に砂や粘土が堆積して東京、大阪、名古屋などの大都会が発達した」のであれば、日本という国そのものが地震の産物であるとも言える。地震とは日本の誕生の秘密そのものであり、これからも頻繁に起こりうるものだということだとすれば、国の政治でも、個人の生き方でも、地震を大前提として考えていかざるを得ない。すくなくとも今回の東日本大震災で、10年以上住んでいる町が被災地となった僕には、切実なテーマになっている。

首都圏機能の分散化や原発の議論において、これまで反対運動側の意見はずっと軽視され続けてきたけども、今後起こるであろうあらゆる地震被害を想定しないことは無責任だ。日本の歴史は地震の歴史だし、揺れない場所(これまで揺れていない場所)は、ないのだから。

各紙でご紹介いただき、本当にありがとうございます。

秋田魁新報、河北新報の書評コーナーで、アメリカン・ブック&シネマの新刊『ドッグマン』が紹介されたことをご報告したばかりですが、この2紙以外の多数の新聞でもご紹介いただいたことがわかったので、あらためてご報告いたします。以下の地元有力紙でこれまでご紹介いただいています。各紙のご担当者には心より感謝申し上げます。

岩手日報 5月15日、下野新聞 5月15日、山梨日日新聞 5月15日、新潟日報 5月22日、北日本新聞5月15日、北國新聞5月15日
神戸新聞 5月22日、山陰中央新報 5月22日、徳島新聞 5月15日、大分合同新聞 5月22日、熊本日日新聞 5月22日
宮崎日日新聞 5月22日

アメリカン・ブック&シネマ

『ドッグマン』、河北新報でも取り上げられました。

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アメリカン・ブック&シネマの新刊『ドッグマン』。先日ご報告した秋田魁新報に続いて、宮城県エリアの主要紙、河北新報(2011年5月16日付け)の書評コーナーでも取り上げていただきました。ありがとうございます。