朝日新聞朝刊"be Saturday"でABCの書籍が紹介されました。

8月27日付け、朝日新聞朝刊の"be Saturday" で、アメリカン・ブック&シネマ発行の『ランス・アームストロング ツールドフランス_永遠のヒーロー』(マット・ラミー著)が、記者のおすすめの一冊として紹介されました。この本は、イギリスのサイクルスポーツという雑誌の記者だった著者に、僕の方で直接コンタクトして、7連覇後のランスについて新たに書き下ろしてもらった本なのです。
ご紹介くださった朝日新聞の担当記者の方、ありがとうございます。

Dscn1135

ABC

『ロングトレイルという冒険』(加藤則芳著)

ヤマケイ(山と渓谷)やビーパルなどの雑誌読者を越えると、著者の名前はあまり知られていないのかもしれませんが、著者はロングトレイルの日本における一人者です。僕がこの方のお名前を知ったのはつい最近。今年始め、まだ入会金を納めただけで特になんらの活動をしているわけではないのですが、信越トレイルクラブという団体の「メンバー」になりました。長野県北部と新潟県の県境にある、関田山脈の山稜部にある80キロのトレイルのガイド組織が、NPO法人信越トレイルクラブで、その理事として、著者である加藤さんが入っていらっしゃいます。この団体のHPや資料でお名前を拝見したのが最初です。信越トレイルを少しずつ歩いてみたいと思っています。

先日、お盆休みでスローな雰囲気のオフィスから抜け出して、有楽町の三省堂で見つけたのが、この『ロングトレイルという冒険』(技術評論社)と、少し前に出版された同じ著者による『メインの森をめざして_アバラチアントレイル3500キロを歩く』(平凡社)。2冊まとめて買いました。

半年かけて、ジョージア州からメイン州までの3500キロを歩くコースがあるなんて知りませんでした。毎年500人程度の人が全コースを歩き、きっとその何倍もの数の人たちが一部コースを歩いているようなので、それだけでもアメリカ人はすごいなと思います。彼らのチャレンジ精神、それだけの人間が時間をとって挑戦することを可能にする社会のふところの広さ、コースを大切に守り育てる環境保護の意識。

『メインの森をめさして』は640ページの長さなので、ちょっと簡単には読めそうもありませんが、3500キロを半年かけて歩くことを考えると、そのくらいの厚さがあってもいいかなとは思います。

ただひとつお気の毒なことがあります。
『メインの森をめざして』のあとがきに告白されていますが、著者は難病であるALS(筋萎縮性側索硬化症)を発病されていて、ブログによると、外出するには車いすを必要とされているようです。
これまで実に活発に体を動かしてきた方が、このような病気になるなんて、実に残酷な話だと思います。病気の進行がすこしでも遅くなることをお祈りしています。

加藤則芳公式サイト
加藤則芳ロングトレイルを行く(管理者は加藤さんの奥様)
NPO法人信越トレイルクラブ

『人の子イエス』(カリール・ジブラーン著、みすず書房)

僕はキリスト教徒ではありませんが、イエスには関心を持っている人間のひとりです。仏教徒でもありませんが、ブッダには興味を持っています。

この本はイエスが行ったとされる奇跡をことさらに取り上げることもなく、イエスと会った(はずの)70数名の人間たちの声を借りて、ジブラーンの考える人間イエスを示したものです。

「あのナザレ人は、人々にとって医者だった。あのナザレ人ほど、人体と、その構成要素や特性に精通していた者はいなかった」(ギリシアの薬売りフィレモンが見た、医者・イエス)
「イエスは、天と地の驚異について、夜に咲く天の花々について、日が星々を覆い隠すときに大地に咲く花々について語りました」(カナの花嫁、ラフカが見た、ナチュラリストとも言えるイエス)
「イエスが語る神は、あまりに広大でどんな人間にも似ていないし、全知ゆえに人を罰することをしない」(ペルシャ人哲学者が見た、新しい神を提示したイエス)
「私が認めるイエスは、強大な狩人であり、難攻不落の聳え立つ霊に他ならない」(ナタニエルが語る、権威と力を持っていたイエス)

この本の中で、僕がもっとも好きなイエス像のひとつは以下のようなもの。
「イエスが教えたのは、いかにして人々を束縛する過去のしがらみの鎖を断ち切り、いかにして人が自由になるかということだ」(アンティオキアのサバが語る、自由人イエス)
「あの方が私たちとともにいたとき、あの方は私と世界を驚異に満ちた目で見つめた。あの方の目は、何千年にもわたる伝統によって曇らされておらず、さまざまな古くからの堆積物にも妨げられていなかった。あの方は、若々しい明るさをもってあらゆるものを明晰に見た」(ある哲学者が語る、明晰な観察者としてのイエス)

そしてこの本の中のイエス像が「立体的」であるのは、イエスを嫌い、イエスに反対した人たちのこのような声も含まれているから。

「あの男は、この国の立派な国民ではなかった。保護されるべきローマ帝国の市民でもなかった。だからこそあの男は、ユダヤ王国もローマ帝国も侮蔑した。空を飛ぶ鳥のように、義務も責任もなく自由に生きたいとあの男は望んだ。だから狩猟者が彼を矢で射落とした」(論法家エルマダムが語る、はぐれ者イエス)
「もし、アブラハムの種を継いだユダヤの子孫が繁栄するのが神の御心であるならば、その基盤となる土壌は汚されてはならない。そしてあのイエスという男は、汚染者であり、堕落させる者である」(大祭司カヤバの語る、汚染者イエス)

本書にあるカリール・ジブラーンの略歴を簡単に紹介すると以下のとおり;
1883年レバノン山間部の村で生まれ、1895年貧困の中渡米、ボストンで初等教育を受け、英語を習得。
1898年レバノンに帰国、アラビア語を納め、高等学校で文学と宗教学を学ぶ
1902年再度渡米、1908年から2年間パリでロダンの師事。
1931年にニューヨークで死去するまでに、合計7冊の英語著作。

『人の子イエス』を読むまで、この人のことはよく知らなかったけど、ジョン・レノンが「ジュリア」にこのひとの言葉を引用しているそうだし、神谷美恵子さんが、ジブラーンの詩集『預言者』を抄訳しているとか。
確かに、ジョンのイマジンからはジブラーンのイエスが聞こえてきそう。

『ドッグマン』、信濃毎日新聞でも取り上げられました。

Dscn0938

アメリカン・ブック&シネマの『ドッグマン』、信濃毎日新聞(長野県を代表する新聞)の書評コーナーでも取り上げていただきました(7月17日付け)。評者はノンフィクション作家の中村安希さん。先日、朝日新聞でも彼女の『Be フラット』の紹介記事を読みましたが、非常におもしろい作品のようなので、ぜひ読んでみようと思っています。(→『Be フラット』
「荒野が”現代生活の便利さや快適さに対する解毒剤”であるなら、本書は読者にとって解毒への第一歩になるだろ」というコメントをいただきました。ありがとうございます。

『日本の未来について話そう_日本再生への提言』(小学館)

コンサルティング会社のマッキンゼーが責任編集者としてでた本。マッキンゼーはアメリカ国内であった大がかりなインサイダートレーディングにパートナーが関与していて逮捕者もでたということで、FT(フィナンシャルタイムス)に大きな記事が先日出ていたばかり。「マッキンゼーの未来について話す」ことの方が先のような気もするけど、この本の企画自体は、マッキンゼーの日本法人からでているようなので、アメリカのことはこれ以上書かない。

会社でアシスタントのSさんが、第9章「文化の継承と発展」の中に、『ドッグマン』(アメリカン・ブック&シネマ最新刊)の著者であるマーサ・シェリルさんが、「秋田犬の系譜」というエッセイを書かれていることを教えてくれた。エッセイのタイトルは「秋田犬の系譜」となっているけども、ちょっと誤解を与えてしまうような気がする。彼女が書いているのは、秋田犬を絶滅の危機から救った『ドッグマン』の主人公、澤田石守衛がどれほど個性的な日本人であったのか、彼が秋田犬の中に見つけ、もっとも大切にした「気性」とは、「エネルギーであり、バイタリティであり、強さであり、勇気である」こと、その「気性」こそ、澤田石さんが身につけたいと願い、日本の近代化に伴って失われつつあると憂えた精神だったこと。この「気性」が社会の繁栄と力強さの柱であること。そんなことがこのエッセイのメッセージなのに。

発行人の僕が言うと自画自賛になってしまうけど、『ドッグマン』こそ、震災で傷ついた東北の方々に読んでいただきたいと強く思っている。(東北エリアのお取引先には一冊ずつ贈呈済み)。秋田犬に関心がない方でも、きっと読んで良かったと思っていただけるという自信作です。

『日本の未来について話そう』を読まれた方にも、『ドッグマン』(アメリカン・ブック&シネマ発行、英治出版発売)を読んでいただければ、うれしい。

アメリカン・ブック&シネマ

『「律」に学ぶ生き方の智慧』(佐々木閑著)

今日は愛知県犬山市にある名古屋経済大学を訪問。日頃のご愛顧に心より感謝申し上げます。

行き帰りの新幹線の中で読んだ本が、『「律」に学ぶ生き方の智慧』。著者は、昨年オデッセイマガジンにもご登場いただいた花園大学の原始仏教の先生。
仏教における出家とはどんなことなのか、出家集団のルールである「律」とは何か、科学者や政治家と出家など、佐々木先生の愛読者のひとりとしては楽しみながら読ませていただきました。特に、自然界の真理探求にのめり込む科学者たちも出家者と言えるのではないかというご意見には納得。
俗世界で仕事をするわれわれにも参考になる本。

特集「3.11後を考えるために」

6月19日(日)の東京新聞書評コーナーが、特集「3.11後を考えるために」で取り上げていた本。まったく知らなかった著者と本もあるので、ちょっと読んでみたい。村上春樹を上げていた人が二人いた。

イザベラ・バード著『イザベラ・バードの日本紀行』

永原慶二著『富士山宝永大爆発』

武者小路実篤著『或る男』

イバン・イリイチ著『生きる意味』

若松丈太郎著『福島原発難民_南相馬市・一詩人の警告』

Rクラーク、Rネイク著『世界サイバー戦争』

村上春樹著『神の子たちはみな踊る』

鴨長明著『方丈記』

村上春樹著『アンダーグラウンド』

ポール・ヴィリリオ著『アクシデント事故と文明』

長井彬著『原子炉の蟹』

吉田茂著『回想十年』

戸川幸夫著『高安犬物語』

飯塚訓著『墜落遺体_御巣鷹山の日航機123便』

ホルクハイマー、アドルノ著『啓蒙の弁証法』

もうひとりの「ドッグマン」。

Dscn0790

6月17日の東京新聞夕刊一面に、忠犬ハチ公の研究の第一人者といわれた林正春さんの記事がでていた。一昨年末、80歳で急逝した林さんが集めた大量のハチ公関連の資料が、渋谷区郷土博物館・文学館で活用されることになったとか。

この方も、もう一人の「ドッグマン」だ。

ドッグマン

写楽展、新しいテレビCMの撮影、パルヴァースさんの講演。

昨日は上野の国立博物館であった写楽展の最終日。朝一番に上野へ。西洋美術館では、「レンブラント・光と陰」も最終日。こちらは時間がなくてパス。

Img_0119

今日は、お昼から、川崎市宮前平のスタジオで新しいテレビCMの撮影。今年は、昨年とほぼ同じ予算で、全く異なる指向のテレビCMを2シリーズ作ります。先週土曜日は当世オフィス事情編、今日は外人モデルを使った会話編。新しいCMは7月から公開予定です。乞うご期待。

夕方に都内に帰ってきて、有楽町にあるThe Foreign Correspondent Club of Japan であったRoger Pulversさん(東工大の世界文明センター所長)の新著「The Dream Of Lafcadio Hearn」についての講演。彼とはもう10年くらいのおつきあいかな。放浪者としてのラフカディオ・ハーンにとても関心があります。かれは、rootless cosmopolitan の一人だった。あ、それから90人ほどの参加者のなかに、旅行番組で有名だった兼高かおるさんも!もう80歳をこえていらっしゃるのに、すばらしいスタイル、姿勢、そしておしゃれに感動。

帰るとき、廊下に飾ってあった最近のスピーカーたちの写真の中に、映画「ノルウェーの森」にでていた女優、菊池凛子と水島希子を発見!ふたりのファンとしては超ハッピー。忙しい一日でしたが、素敵な出会いがあり大感謝。


Img_0121

『デフレの正体』(藻谷浩介著)

 本屋に山積みになっている昨年からのベストセラー。マスコミの有名人たちが大推薦という帯の宣伝文句のせいで、当初は逆に読む気はなかったのですが、先月だったでしょうか、日経新聞の夕刊に数日連続ででていた著者のインタビュー記事を読んでおもしろい方だと思ったので読んでみました。その記事で僕がおもしろいと思ったのは、「地方の幹線道路や新幹線などが無駄なのではなく、田んぼの間に網の目のようにはりめぐらせた道路こそが、無駄な投資になっている」という趣旨のご指摘。
 
 この本の中身は、副題に「経済は『人口の波』で動く」とあるように、日本のデフレは根本的に国内の人口動態に基づいていて、好況、不況の波によって起こされているものではないということで、それに関してはまったく反論の余地はないです。同じような指摘は、1980年代終わりか、1990年代の始めだと記憶していますが、人口減少にともなって今後地価は下がっていくと指摘していたある証券会社の創業者の発言と根本的にはまったく同じ指摘だと思います。20年たち、その証券会社の創業者(立花証券の石井久さん)の予言の正しさに感嘆するばかりです。石井さんは1993年9月日経新聞に連載された「私の履歴書」最終回に日本の人口の動向に着目していることを書かれています。

 本質的なことは時にあまりにもシンプルすぎて、それを認めたくない陣営には受け入れがたいのか。あるいは受け入れてしまうと現在の仕組みを根本的に変えていかないといけない。その結果、今持っている既得権は手放さざるを得ない。ならば、見ない、聞かないの姿勢を貫き通す?

 『デフレの正体』の著者が持っている柔らかい精神というか、押し付けられた「先入観」や「正解」ではなく自分が見て考えたことから自分の意見を組み立てていく姿勢に感心しました。

 また、民間企業は政府の景気対策に頼ることなく、自分たちで経営努力をしていくべきだというご意見にも大賛成です。

 先日、現役経産省キャリア官僚による『日本中枢の崩壊』のことを書きました。この2冊には共通する指摘が多々あります。お二人とも優秀な方々だと思いますが、同じように優秀な人たちが霞ヶ関にはたくさんいらっしゃるはずです。このお二人がかれらとなぜ違うのか。それはお二人が「王様は裸だ」と言える率直さをお持ちだからなのではないかと思います。もっと多くの霞ヶ関や永田町の若手エリートたちが、「王様は裸だ」と叫ぶことができれば、日本のどん詰まり感にもすこしは穴があくのではないかと期待しています。

石井久「私の履歴書」