書籍『Small Giants(スモール・ジャイアンツ)』 (yes, small is beautiful!)

アメリカン・ブック&シネマから今年最後の本です。
この本は、2006年、フィナンシャルタイムスのビジネスブックオブザイヤー最終選考に選ばれた本です。
サブタイトルにあるように、事業規模の拡大よりも、自分たちの信じる価値を守ろうとしてきた企業14を紹介しています。
日本でもファンが多い、『ビジョナリーカンパニー』の著者、ジム・コリンズは、『本書は、私たちに大切な真実を思い出させる。「偉大」と「ビッグ」は、等価値ではないということを」という推薦をしてくれています。
 日本ではとかく大きさを誇る経営者が多いように思います。業界団体などでも、大企業であることが、その業界を代表する条件になっています。でも、規模は必ずしも、素晴らしい会社の条件ではないかもしれません。すくなくとも、十分条件では。
 かつて、ある経済学者は、Small is beautiful. という本を書きました。大企業は、beautifulなのか、さらにはgreat なのか?ボクはsmall で、simpleであることが、これからの組織には大切なポイントになるのではないかと思っています。
著者のボー・バーリンガムは、アメリカの各種ビジネス雑誌に関わってきた非常に著名なジャーナリストです。2006年グーグル社員向けに、Small Giantsというテーマで、講演を行っています。その模様は、YouTubeで見ることができます。ぜひ、ご覧ください。
 また、数ヶ月前、アメリカで発売された彼の新刊"Knack"を、来年、アメリカン・ブック&シネマでは発売する予定です。この本は、最高の起業ガイドブックです。ご期待ください。
アマゾン『Small Giants』

『松下幸之助発言集・第一巻』(PHP文庫)

 今日もベッドの上でゴロゴロしながら、本を読んでいます。(腰痛のおかげで、普段以上に本が読めます)
この前、イトーヨーカドー創業者の本のことを書きましたが、今回は、「経営の神様」松下幸之助。松下幸之助は、1989年4月に亡くなられたので、来年で没後20年になろうとしています。松下電器産業は、社名をパナソニックとかえ、大きな変革を目指していらっしゃるようです。ボクはどちらかというと、ソニーブランドがずっと好きだったのですが、ここ数年、パナソニックブランドを見直しています。大型テレビ、DVD、ハイビジョンカメラ、この3点セットが欲しくて、暇なときに、会社の近所のビックカメラでぶらぶら見てあるくことがあります。日進月歩の家電製品で、なかなか踏ん切りがつかず、いつもwindow shopping ばかりです。以前であれば、ソニー商品しか検討しなかったのですが、このごろは、パナソニック商品にも、目がいくようになっています。ボクの中では、パナソニックブランドの株は、かなりあがっています。
 で、松下幸之助です。本のサブタイトルには、「商売は真剣勝負」なんてありますが、昭和35年から38年にかけて、企業主催の研修会やセミナーなどに招かれて行った講演を集めたもので、松下幸之助の非常に合理的な考え方を、わかりやすい言葉で理解することができます。ヨーカドーの伊藤さんもそうですが、松下さんのお話も、基本に忠実で、合理的、かつ実践的です。昭和35年というのは、ボクが生まれた翌年で、1960年代前半、今から50年近くも前の話になるのですが、会社経営に関して、ほとんどすべての発言は、われわれにも参考になるものばかりです。企業や資本が社会的な存在であり、社会や国家に対する責任を持つという考え方は、現在のCSRに通ずるものがあり、また金融不況の原因の一つであるモラルハザードに関しても、松下幸之助が生きていたら、きっと鋭い発言をされていたことだろうと思います。
 また、こんな発言もあって、現在の政治を考える上でも多いに参考になります。政府支出に関して、昭和38年(1963年)、長野で行った講演で以下のような発言をされています。
 「昭和10年(1935)の時分に日本は軍備をもってましたですね。国費の少なくとも35%前後を使っとったわけです。そのほかに、まだ大きな国費を使っとった。それは何かというと満州国の建設です。あれだけの軍事費を支出し、あれだけの満州国を建設する金を国費から出して日本はやっていた。だから税金が高かったかというと、今日と比べますと非常に安いんであります。」「今日は、そういうものはいっさい要らんようになったんです。にもかかわらず、税率は倍になりました。納税者が三倍になっています。何に金を使っているんでしょうか。これはやはり行政費と申しますか、国家運営費と申しますか、そういうものに余計な費用がかかっているということではないかと思います。」「経費が国によけい要るかたちにおいて、物が安く売れるかというと私は売れないと思います。われわれのお互いの会社を、十分健全な姿に直すということに成功したといたしましても、まだ不十分である。国の経費を少なくとも昭和10年程度まで切りつめるよう合理化する。そうすれば日本はもう限りないと申していいくらい繁栄していくだろうと思うんです。」
 松下幸之助は、松下政経塾を建て、多くの政治家を輩出していきましたが、政経塾の出身者で総理大臣になったかたはまだ出ていないと思います。現総理の麻生さんは、ご自身も会社経営に携わったことがあり、経営感覚のある総理だということですが、松下幸之助のような人に、ぜひ、総理大臣を務めていただきたかったです。

『私の履歴書_人生越境ゲーム』(青木昌彦著)

先週読んだ本の中で面白かったもう一冊。昨年日経新聞連載中には、途切れとぎれにしか読んでいなかった、経済学者による「私の履歴書」。日本とアメリカの大学の間を、「越境」しながら、アカデミックな分野のみならず、実務分野においても、いくつかの「ベンチャー」を立ち上げられたお話。学生時代(60年前後)の学生運動の話が特におもしろかったです。→著者日本語ホームページ

『建築家・安藤忠雄』(安藤忠雄著、新潮社刊)

ご存知日本を代表する建築家のお話。これまで安藤忠雄の本を何冊か読んでいる読者(ボクも含めて)には、特に新しいお話はそれほどありませんが、それでもおもしろい。昨日は腰痛でずっと寝込んでいたので、ベッドの上で、一気に読みました。
 「人生に”光”を求めるのなら、まず目の前の苦しい現実という”影”をしっかり見据え、それを乗り越えるべく、勇気をもって進んでいくことだ。情報化が進み、高度に管理された現代の社会状況の中で、人々は、『絶えず光の当たる場所にいなければならない』という強迫観念に縛られているように見える。」(中略)何を人生の幸福と考えるか、考えは人それぞれでいいだろう。私は、人間にとって本当の幸せは、光の下にいることではないと思う。その光を遠く見据えて、それに向かって懸命に走っている、無我夢中の時間の中にっこそ、人生の充実があると思う。」
5年くらい前かと思いますが、あるところで、安藤忠雄のプレゼンテーションを聞いたことがあります。それ以来のファンで、ほとんどの本は読んでいますが、まだ安藤忠雄を読んだことのない人たちにもおすすめの一冊です。
 安藤忠雄のポートレートは、アラーキーが、建築作品の写真は松岡満男。たくさんある写真のページも素敵な本です。

『商いの道_経営の原点を考える』(伊藤雅俊著)

 今のような経済環境においてこそ、変わらない価値を持つ本を読み返していきたいです。この本は、イトーヨーカ堂の実質的創業者が、経営、ビジネス、さらには生き方に関する指針を示してくれた本です。10年前に出された本ですが、まったく色あせない内容です。非常にやさしい、分かりやすい言葉で、経営の本質を語られていると思いました。さらに、著者がマクロ経済に関して書かれている考え方は、現在にも完全に当てはまります。具体的には、政府との関係が深い産業に競争力がなく、供給過剰の問題を抱えていること、バランスを欠いた短期的な株価至上主義が健全な会社の成長の妨げになっていること、好不況の波があることは必然で、「森が山火事で焼けると新しいものが生えてくる」こと。
 ダイエーの中内さんと好対照なのが、伊藤さんだったと思います。中内さんが男性的で荒っぽかったのに対して、伊藤さんは女性的で非常に手堅かった。中内さんが、松下幸之助と大げんかをしたのに対して、伊藤さんは松下幸之助を尊敬し、師としていたこと、中内さんが不動産投資にのめり込んでいったのに対して、伊藤さんは非常に慎重だったことも面白いほど正反対のおふたりでした。
 経営という意味では、伊藤さんにはたいへん見習うところがあると思っています。(ただ、ボクは中内さんには、伊藤さんとは違った意味で魅力を感じています。佐野真一さんが書かれた『カリスマ』に対して、中内さんは一時名誉毀損で訴訟をされていたように記憶していますが、ボクはこの本を読んで中内さんのファンになりましたから。)

『寡黙なる巨人』(多田富雄著、集英社刊)

 先日、ご紹介した『露の身ながら』共著者のお一人である免疫学者・多田先生のエッセイ集。アメリカから帰ってくる飛行機の中で、読み終えました。脳梗塞で倒れられてからの、動かない身体と、発することのできない声という、悲劇的な身体、精神状況の中で、自殺の誘惑に耐えながら、無様な姿をさらしてでもリハビリとともに生きていき、自分の中での新しい「巨人」の誕生と成長を、喜びとともに、綴っています。今年読んだ本の中で一番心に残った本の一冊。

『露の身ながらーいのちへの対話』(多田富雄、柳澤桂子著)

 多田先生は世界的な免疫学者として活躍されていたのに、2001年、突然脳梗塞におそわれ、右半身不随と声を失います。もう一人の著者である柳澤さんは遺伝学の研究者として活躍中、31才にして原因不明の難病に倒れ、この40年近く、病と闘ってきました。そんなお二人による、まさに、命をかけた闘いの中で行われた往復書簡集。心からオススメします。

 追記 この本を読むと、身障者にとって、パソコンがいかに重要なコミュニケーションツールとなりうるのかということを、改めて、認識することができます。

Studs Terkel の死

 昨日、シカゴのラジオDJで著作家でもあったスターズ・ターケルが死んだことを、在日米軍向けのラジオ放送で知りました。96歳。ボクが20歳代によく読んだアメリカ作家の一人です。『死について』、『仕事』、『アメリカン・ドリーム』、『インタビューという仕事』、『よい戦争』など、翻訳された本は、かなり読みましたし、英語の本も何冊か読みました。
 彼は、ボクが思うアメリカの素晴らしい価値観を、ずっと、表現し続けた人でした。人種差別やマッカーシズムなどの赤狩りには、大反対だったので、生きてオバマが初の黒人大統領となるところを見て欲しかったようにも思います。
 でも、4日の大統領選挙で、本当に、オバマが大統領に選ばれるのかどうか。アメリカに黒人の大統領が生まれたら、それは本当に歴史的なことだと思います。
 YouTubeのスタッズ・ターケルは、2003年に、カリフォルニア州立大学バークレー校での講演からです。すでに90歳を越えた年齢で、これだけの滑舌なのには、驚きます。


『恐慌前夜』(副島隆彦著)

 先日、この本を買ったと書いてしまったので、お断りしておきます。読後の感想ですが、いい本とは思いませんでした。決して、オススメしません。自分自身を超能力者だと言う著作家は、マスコミにしばしばでていた女性占い師同様、凡人のボクには、理解できません。
 ひとつだけ、この著者が何度も言っていることとはまったく異なる展開となっていることを指摘しておきます。今年、大勝負にでて大きく儲けたファンドがあります。 Bill Gross (ビル・グロス)というファンドマネージャーが共同経営者であるPimcoというファンドですが、『恐慌前夜』の著者が繰り返し紙切れになると言い切っている、ファニーメイやフレディーマックの債券を、損切りする他の投資家たちから大きなディスカウントで買い集めます。9月、米国政府がこれら住宅金融公社の債券を保証すると発表し、ビル・グロスの賭けは大勝利に終わりました。(→
FT記事)この本が出版された直後くらいの展開ではないかと思います。
 今年の、FT/ゴールドマン主催の「ビジネスブックオブジイヤー」ですが、受賞作品は、"When Markets Collide" 。現在進行中の信用不安をたどり、どのようにこの危機を乗り越えればいいかについて書かれています。著者は、偶然ですが、ビル・グロスの会社のパートナーであるMohamed El-Erain。この本の翻訳が待たれます。(→
FT記事

対馬に行ってみたい

 今週産經新聞が一面で、「対馬が危ない」という特集記事を連載していました。韓国資本が、対馬の土地を買い集めていて、防衛の観点からもかなり危ない状況ができつつあるという話です。韓国の観光客の方が、日本人観光客よりも多くなっているそうですし、韓国人ツアーガイドの中には、対馬は韓国に属すべき領土だと、韓国人観光客に話しているものもいるということです。
 この記事を読む前から、一度、対馬には行ってみたいと思っていました。残念ながら、対馬には、弊社のお取引先はないのではないかと思いますが、ぜひ、一度、行ってみたい場所の一つです。(MOSバーガーのお店はあるようですが!)
 そんなこともあって、以下の本をアマゾンで注文しました。『誰も国境を知らない_揺れ動いた「日本のかたち」をたどる旅』(西牟田靖著、情報センター出版局刊)。書評などでも評判がたいへんいい本です。