伊那食品工業_日本のSmall Giants(スモールジャイアンツ)

 アメリカン・ブック&シネマの新刊本「Small Giants」。おかげさまで、日本経済新聞の書評欄でも取り上げていただきました(1月18日付)。この本の中で紹介されているのは、アメリカの企業ばかりですが、日本に、Small Giantsがないわけではありません。それどころか、たくさんあるはずです。

 で、そのような日本のSmall Giantsのひとつが、この伊那食品工業なのではないかと、ロイターのHPに掲載されていた、雑誌「プレジデント」の記事から思った次第です。しっかりした哲学をお持ちの社長に感心しました。事業の深堀、地元に根付いた経営などが印象的です。

(→伊那食品工業記事

木下敏之著『なぜ、改革は必ず失敗するのか』

 今日は、この本をずっと読んでいました。
 著者の木下さんとは、数年前からお付き合いさせていただいていますが、この本を読んで、あらためて立派な方だなと感心しました。また、おつきあいいただき、たいへん光栄だなとも思います。
 39歳の若さで佐賀市の市長になられ、6年半の市長時代、さまざまの改革に挑戦され、成功と失敗を経験されたそうですが、そのときの経験がこの本の中に、率直に書かれています。政治、特に地方政治は理屈ではなかなか行かないものだとあらためて認識します。
 この本の副題には、「自治体の『経営』を診断する」とあるのですが、木下さんは、これからの政治家、特に自治体の政治家には、経営センス、富を創造していく力が必須だとされています。残念ながら、役人にはその経験も、力もないと。ちなみに、ご自身も、農水省の中央官僚だった方です。(「ビジネスの経験も、儲けなければ潰れるというプレッシャーも経験したことがなく、地域振興に失敗しても自分の給料は下がらない。そんな役所や政府が地域振興を考えても、いまの時代に合う策は出てこないのではないでしょうか」)
 また、地方都市が経済的に自立し構造にならなかった理由に関する木下さんの指摘は、鋭いと思います(「私は、小泉純一郎元首相の構造改革路線により格差が拡大したというよりも、地方側が長期間にわたり公共事業中心の地域振興策に依存してきたことに原因があると考えています。地方側から出てくる提案は、残念ながら税収を都市部から地方に移転させよ、という提案ばかりです。」)
 木下さんは、われわれ市民、国民の側にも、現実を直視し、「不都合な真実」から目をそらしてはいけないとはっきり書かれています。そこがまた木下さんのいいところだなと思います。
 現在は、講演活動、コンサルティングなどをなさっていらっしゃいますが、いつか国政レベルで活躍になられることを心から期待しています。木下さんのような方を生かせないとしたら、日本もダメだなとも思います。
 われわれ選挙民こそ、この本を読んだ方がいいというのが、ボクの意見です。
木下さんには、昨年、ボクのポッドキャスティングにもご出演いただきました。お聞きいただければ、うれしいです。
(→
アイデアエクスチェンジ

日経新聞の書評で『 Small Giants』が取り上げられました。

まったく予想していなかったのですが、昨日の日経新聞の書評欄(18ページの中ほど右)で、アメリカン・ブック&シネマの書籍『Small Giants』が紹介されました。たいへん光栄です!ありがとうございます。

『奇跡のリンゴ』のDVD

 先日ご紹介した書籍『奇跡のリンゴ』のDVDを見ました。NHK番組『プロフェッショナル』からです。
絶対に無理だと言われてきたリンゴの無農薬に成功したお話ですが、主人公の木村さんの話でヒントになったこと、感心したことが何点か。
1 他の果物で無農薬に成功していた例を見ていたので、リンゴでもできるのではないかと思ったこと。
2 自分がやめてしまったら、無農薬でリンゴを育てることは不可能と決めつけられてしまうという危惧。
3 途中、あきらめようと思ったとき、「いったい、これまで我慢してきた貧乏はなんのためだったの」という子供の声。
4 土壌にカギがあるのではないかという、目のつけどころの変化。
5 心がこもっていないと、どうしても手抜きをしてしまう。だから一見、非効率と見えることも、コツコツとやっていくこと。

 DVDはテレビ番組で放送されなかった部分もでています。(放送は見ていませんが、ボクは)
木村さんご自身は言わずもがなですが、ご家族も立派だなと思いました。お嬢ちゃんの言葉(「ここでやめたら、これまでの貧乏はなんのためだったの」)には、特に心を動かされました。
 奥様とご自身でチャレンジしてきた無農薬リンゴですが、もし、人を雇っていたとしたらどうなっていたのか?社員に給料も払えないというような状況の会社が、今のような時期は、たくさん出てきていると思うのですが、家族だけでやっていたから、苦節10年の我慢もできたのでしょうか。
 ちなみに、DVDの値段は、アマゾンで2912円で販売されていますが、定価は3675円です。NHKも、視聴料で番組を作り、さらにDVDが売れると、いい商売だなと、これにも感心しました。

『アメリカの黒人演説集』(岩波文庫)

 アメリカは演説集をたくさん出版する国だなと思います。記念講演の類も多いように思います。ボクが、2年前出版した『グラデュエーション・デイ』も、アメリカの大学の卒業式で行われる記念講演を集めたものです。

 岩波文庫から最近でたこの本には、アメリカの黒人リーダーたちが行った21の演説が含まれています。マーチン・ルーサー・キングの有名な演説、「私には夢がある」("I have a dream")も含まれています。そして21番目には、今月大統領に就任するオバマが、2005年6月4日、イリノイ州にあるノックス大学(Knox College) の卒業式で行ったスピーチも含まれています。Change という言葉は出てきませんが、Challengeはたくさん出てきます。人生の焦点をカネ儲けだけに合わせるのでなく、「国家が直面している挑戦を、あなたがたの挑戦と捉える」こと、「あなたがた自身への義務があるから、挑戦を引き受けねばならない」、「あなたがた自身の可能性を認識するのは、自分より大きなものに関与したときです」と訴えています。

 このときは、前年に連邦上院議員になったばかりですが、現在につながるビジョンを繰り返し提示しています。

 講演の録音は、英語のテキストとともに、以下のサイトで聞くことができます。

American Rhetoric: Barack Obama

書籍『奇跡のリンゴ』(石川拓治著)

 あけましておめでとうございます。2009年もよろしくお願いします。
『奇跡のリンゴ』は、2009年最初に読み終えた本。昨晩からずっとこの本を読みながら、新年を迎えました。
 無農薬農法によるリンゴ作りに成功した木村秋則(あきのり)さんの物語です。一人の人が、生きている間に取り組むべき仕事とは、どういうことなのか、考えてしまいます。この方のように、金も、名誉にもまったく興味を持たず、ひたすら自分が使命と信じることをやり通していく方を尊敬します。
 2008年中訪問した場所の中で、ひときわ記憶に残っているのが青森の弘前です。この木村さんがリンゴ作りに励んできたのが、この弘前の岩木山ふもと。弘前には、ほんの4時間ほどしかいませんでしたが、もう一度、きっと訪問するだろうなと思っています。青森空港からバスに乗って弘前市内に向かう途中目にした岩木山とリンゴ農園が忘れられません。
 この本を読むと、現在の農業が農薬漬けになっていて、安全なリンゴを作ることと、安全にリンゴを作ることのどちらもできていないこと、いまのようなリンゴ作りに疑問を持っている方も多いこと(自分にはできなくても、10年以上も苦節を重ねた木村さんを陰ながら応援している人たちがいた)、木村さんが自分のりんご園から学んだことが非常に普遍的な価値を持つこと、木村さんがリンゴ作りから「システム発想」をどんなシステム発想の研究者よりも体現していることを知りました。
 「人が生きていくために、経験や知識は欠かせない。(中略)けど人が真に新しい何かに挑むとき、最大の壁になるのはしばしばその経験や知識なのだ。」「パイオニアは孤独だ。何か新しいこと、人類にとって本当の意味で革新的なことを成し遂げた人は、昔からみんな孤独だった。それは既成概念を打ち壊すということだから。過去から積み上げてきた世界観や価値観を愛する人々からすれば、パイオニアとは秩序の破壊者の別名でしかない。」「岩木山で学んだのは、自然というものの驚くべき複雑さだった。その複雑な相手と、簡単に折り合いをつけようとするのがそもそもの間違いなのだ。」
 われわれ人間も、その複雑な自然の一つでしかないのだから、自分を、そして他人を理解することも、簡単なことではないということも、この本を読んで感じることの一つです。
 この本の表紙にある木村さんの顔写真から、パイオニアとしてのご苦労を想いました。たいへん立派な方だと思います。
 

『新聞再生_コミュニティからの挑戦』(畑仲哲雄著)

 この本を読んで初めて、戦前の日本には、1200以上もの日刊新聞があり、週刊や旬刊の新聞を含めると、7700もの新聞紙があったことを知りました。それが、1930年代後半から、40年代前半にかけて、新聞統合と呼ばれる業界再編が行われ、少数の全国紙と、各県に地方紙一紙を配置するという「一県一紙」政策がとられたそうです。このときできあがった業界地図が、戦後70年も保存されています。野口悠紀夫先生が、日本経済の基礎的枠組みとして、戦中経済体制からの脱皮ができていないことをしばしば書かれていますが、新聞業界もそのひとつだということでしょうか。
 先日、大分を訪問した際、大分合同新聞を訪問しましたが、この新聞社は、40年代前半、県内の複数の新聞社が合併して出来上がった新聞社で、大分県における、「一県一紙」です。
 さて、『新聞再生』ですが、共同通信に勤務する著者が、大学院に通いながら書いた論文を、新書用にまとめたもの。地方紙の挑戦と挫折をレポートしながら、新聞なるもののこれからの姿を探っています。
 以前紹介した
新聞社_破綻したビジネスモデル(河内孝著、新潮新書)とあわせて読むとおもしろいです。

書籍『Small Giants(スモール・ジャイアンツ)』 (yes, small is beautiful!)

アメリカン・ブック&シネマから今年最後の本です。
この本は、2006年、フィナンシャルタイムスのビジネスブックオブザイヤー最終選考に選ばれた本です。
サブタイトルにあるように、事業規模の拡大よりも、自分たちの信じる価値を守ろうとしてきた企業14を紹介しています。
日本でもファンが多い、『ビジョナリーカンパニー』の著者、ジム・コリンズは、『本書は、私たちに大切な真実を思い出させる。「偉大」と「ビッグ」は、等価値ではないということを」という推薦をしてくれています。
 日本ではとかく大きさを誇る経営者が多いように思います。業界団体などでも、大企業であることが、その業界を代表する条件になっています。でも、規模は必ずしも、素晴らしい会社の条件ではないかもしれません。すくなくとも、十分条件では。
 かつて、ある経済学者は、Small is beautiful. という本を書きました。大企業は、beautifulなのか、さらにはgreat なのか?ボクはsmall で、simpleであることが、これからの組織には大切なポイントになるのではないかと思っています。
著者のボー・バーリンガムは、アメリカの各種ビジネス雑誌に関わってきた非常に著名なジャーナリストです。2006年グーグル社員向けに、Small Giantsというテーマで、講演を行っています。その模様は、YouTubeで見ることができます。ぜひ、ご覧ください。
 また、数ヶ月前、アメリカで発売された彼の新刊"Knack"を、来年、アメリカン・ブック&シネマでは発売する予定です。この本は、最高の起業ガイドブックです。ご期待ください。
アマゾン『Small Giants』

『松下幸之助発言集・第一巻』(PHP文庫)

 今日もベッドの上でゴロゴロしながら、本を読んでいます。(腰痛のおかげで、普段以上に本が読めます)
この前、イトーヨーカドー創業者の本のことを書きましたが、今回は、「経営の神様」松下幸之助。松下幸之助は、1989年4月に亡くなられたので、来年で没後20年になろうとしています。松下電器産業は、社名をパナソニックとかえ、大きな変革を目指していらっしゃるようです。ボクはどちらかというと、ソニーブランドがずっと好きだったのですが、ここ数年、パナソニックブランドを見直しています。大型テレビ、DVD、ハイビジョンカメラ、この3点セットが欲しくて、暇なときに、会社の近所のビックカメラでぶらぶら見てあるくことがあります。日進月歩の家電製品で、なかなか踏ん切りがつかず、いつもwindow shopping ばかりです。以前であれば、ソニー商品しか検討しなかったのですが、このごろは、パナソニック商品にも、目がいくようになっています。ボクの中では、パナソニックブランドの株は、かなりあがっています。
 で、松下幸之助です。本のサブタイトルには、「商売は真剣勝負」なんてありますが、昭和35年から38年にかけて、企業主催の研修会やセミナーなどに招かれて行った講演を集めたもので、松下幸之助の非常に合理的な考え方を、わかりやすい言葉で理解することができます。ヨーカドーの伊藤さんもそうですが、松下さんのお話も、基本に忠実で、合理的、かつ実践的です。昭和35年というのは、ボクが生まれた翌年で、1960年代前半、今から50年近くも前の話になるのですが、会社経営に関して、ほとんどすべての発言は、われわれにも参考になるものばかりです。企業や資本が社会的な存在であり、社会や国家に対する責任を持つという考え方は、現在のCSRに通ずるものがあり、また金融不況の原因の一つであるモラルハザードに関しても、松下幸之助が生きていたら、きっと鋭い発言をされていたことだろうと思います。
 また、こんな発言もあって、現在の政治を考える上でも多いに参考になります。政府支出に関して、昭和38年(1963年)、長野で行った講演で以下のような発言をされています。
 「昭和10年(1935)の時分に日本は軍備をもってましたですね。国費の少なくとも35%前後を使っとったわけです。そのほかに、まだ大きな国費を使っとった。それは何かというと満州国の建設です。あれだけの軍事費を支出し、あれだけの満州国を建設する金を国費から出して日本はやっていた。だから税金が高かったかというと、今日と比べますと非常に安いんであります。」「今日は、そういうものはいっさい要らんようになったんです。にもかかわらず、税率は倍になりました。納税者が三倍になっています。何に金を使っているんでしょうか。これはやはり行政費と申しますか、国家運営費と申しますか、そういうものに余計な費用がかかっているということではないかと思います。」「経費が国によけい要るかたちにおいて、物が安く売れるかというと私は売れないと思います。われわれのお互いの会社を、十分健全な姿に直すということに成功したといたしましても、まだ不十分である。国の経費を少なくとも昭和10年程度まで切りつめるよう合理化する。そうすれば日本はもう限りないと申していいくらい繁栄していくだろうと思うんです。」
 松下幸之助は、松下政経塾を建て、多くの政治家を輩出していきましたが、政経塾の出身者で総理大臣になったかたはまだ出ていないと思います。現総理の麻生さんは、ご自身も会社経営に携わったことがあり、経営感覚のある総理だということですが、松下幸之助のような人に、ぜひ、総理大臣を務めていただきたかったです。

『私の履歴書_人生越境ゲーム』(青木昌彦著)

先週読んだ本の中で面白かったもう一冊。昨年日経新聞連載中には、途切れとぎれにしか読んでいなかった、経済学者による「私の履歴書」。日本とアメリカの大学の間を、「越境」しながら、アカデミックな分野のみならず、実務分野においても、いくつかの「ベンチャー」を立ち上げられたお話。学生時代(60年前後)の学生運動の話が特におもしろかったです。→著者日本語ホームページ