『ビジネス<勝負脳>_脳科学が教えるリーダーの法則』(林成之著)

 昨日からマニラに来ています。昨年から始めたアジアの若手ビジネスマンたちとの定期的な勉強会に参加するためです。こちらに来る飛行機の中でみた週刊新潮の結婚ゴシップページに、偶然ですが、先週G1サミットでお会いしたOさんの結婚のことがでていました。彼女の結婚相手は水泳の北島選手のコーチなのですが、この記事の中でOさんの結婚相手の方が、「Oさんの目力の強さにピンと来るものを感じた」というコメントが紹介されていました。確かに、Oさんは非常に生き生きとした表情でした。
 で、この『ビジネス<勝負脳>』の著者ですが、北島選手も含む「北京オリンピックの競泳代表チームに講義を行い大きく結果に貢献した」という方です。(現在、日本大学総合科学研究科教授の脳外科医)。
生き残るリーダーの条件として、以下のようなことをあげています。

1自分のチームの弱点を明確にして期限つきで対策を立てる
2つねに自分の限界に挑戦する
3目的と目標をつねに正しく区別して作業する
4目的のためには自分の立場を捨てること
5決断・実行を早くする
 また、指導者がカリスマ性を身につけるためにやらないといけないこと、独創的なアイデアを生み出すためにしないといけないこと(例:たくさんの文化にふれる、自分の考えに執着しない、否定語を使わない)、人間力をつけるために気をつけないといけないことなどなど、われわれビジネスマンにとって参考になるお話を集めた本です。
 簡単に読むことができる本ですが、この本の中に書かれていることを血肉にするためには、何度も何度も繰り返し読む必要があるかと思いました。
 

『まぐれ』(ナシーム・ニコラス・タレブ著)

 原題は、"Fooled by Randomness_The Hidden Role of Chance in Life and in the Markets"。日本語の副タイトルには、「投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか」とあります。日本語の『まぐれ』というタイトルでいいのか、少々疑問です。ボクだったら『偶然』というタイトルにするかな。
 内容は金融における確率(あるいは偶然性)を取り上げているようで、本当のテーマは、理性と懐疑をもって生きることです。サブプライムで世界経済をメチャクチャにした金融界で働くすべての人たちは、この本を読んだ方がいいのではないかと思います。
 この著者のことは、2007年、ハーバードビジネススクールのリユニオン(同窓会)に参加した際、金融の先生が特別授業の中で紹介してくれました。この『まぐれ』に次ぐ最新作品である"The Black Swan"を非常に高く評価されていました。この最新作も、ダイヤモンド社から翻訳出版される予定のようですから、楽しみにしています。
 2度繰り返して読んでみようと思うビジネスの本はそれほどないのですが、この本は再度読んでみようと思っている一冊です。
 最後にもうひとつ。著者はあとがきで、「私たちは、目に見えるものや組み込まれたもの、個人的なもの、説明できるもの、そして手に取ってさわれるものが好きだ。私たちのいいところも悪いところも、みんな、そこから湧いて出ているように思う」と記しています。ボクたちの会社が扱っている「資格」というサービスは、形のない目には見えないもので、個人的なものでもあり社会の中で認知されるものでもあり、時にその不思議さを想うことがあります。

小説『後藤新平』

 ここ数年、白州次郎が中高年の間でブームになっているかなと思うのですが、白州よりもずっと前にいた、ある意味もっとすごかったのが、この後藤新平。ボクがよく読む作家の鶴見俊輔さんのおじいさん。白州次郎は会社経営者の経験もあるけども、吉田茂のブレーンのひとりだったということでどちらかというとコンサルタント的なイメージが強いのですが、それに対して、後藤新平は、東京市長(現在の東京都知事)、植民地経営(台湾や満州鉄道)、内務大臣、外務大臣などを経験していて、当事者として明治後半から大正時代の政治の渦中にあった人。
 白州さんも、後藤さんもいいなと思うには、閥をつくったりしないで、一匹オオカミ的な存在だったこと、地位に恋々としなかったこと、自分の信念を強く持っていたこと。(白州さんはその上、金持ちのボンボンでかっこいいから今に至っても人気があるのでしょうが)
 解説を読んで知ったのですが、この「小説」の著者、郷仙太郎が青山東京都副知事と知り驚きました。そのことを知った後では、関東大地震後の東京の都市計画に携わった後藤新平への著者の評価や思いには深いものがあるのではないかと思いました。
 後藤新平は、薩長の藩閥や政党に属する訳でもなく、学歴があるわけでもなかったのに、よくあれだけの地位に就けたものだと思います。後藤は東北岩手の水沢の出身。同じく水沢出身の政治家として民主党党首の小沢一郎さんがいます。結局首相になれなかった後藤新平ですが、小沢さんは今年総理の椅子につくのかどうか。

Cliff Bar (Small Giantsの一社)

 好評発売中の書籍「Small Giants(スモールジャイアンツ)」(アメリカン・ブック&シネマ発行、英治出版発売)ですが、この本の中で取り上げられている会社の一つが、食品会社のCliff Barです。代表的商品はグラノーラ・バー。写真にあるように、絶壁を登るクライマーがこの会社のトレードマークです。(ちなみに、袋は破いて、中のバーはすでに食べてしまっています!)
 この会社の商品は日本に入ってきていないと思うのですが、ボクがこの会社の商品に出会ったのは、3年半前、2006年9月、初めてホノルルセンチュリーライドに参加した時。20キロか30キロごとにあるエイドステーション(休憩所)で配っていた食糧の一つが、このCliff Bar。160キロのサイクリングの間、何本かのCliff Barにお世話になったことを覚えています。
 そのときには、この商品を製造する会社を取り上げたビジネス本を翻訳出版することになるなんて、夢にも思いませんでしたが。この会社の創業者も、サイクリングや山登りなどを愛するスポーツマンで、彼の体験に基づいて開発したのが、Cliff Barです。そのあたりのこと、会社を大きくするにあたってのさまざまなドラマについては、Small Giantsをぜひ読んでください。

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日本のランス・アームストロングは銀行員だった!_『がん六回人生全快』(関原健夫著)

 日本のランス・アームストロングといってもサイクリストではありません。ランスと同じように、がんと闘って、奇跡の復活を遂げたかたです。この本は、かつて日本を代表する銀行だった日本興業銀行の社員の方による、16年間の闘病記です。
 1984年、39歳の時、ニューヨークで最初の大腸がん手術。その後、86年から90年までの間に5回のがん手術、そして96年には心臓バイパス手術の計7回も手術。手術の回数も驚きなのですが、さらにすごいのは、この間、ずっと現役で仕事を続けたということ。もちろん、手術の後には、数週間、あるいは一ヶ月ほどの休みをとられていますが、手術前の入院中にも、スーツを着て出社し、できるだけ日常生活を継続される努力をされています。それも信じられない話です。
 前向きな姿勢、人間関係を大切にされたこと(病気と闘うこと、病気を治すことは、自分一人ではできない!)、周りの人たちを説得し、その気にさせ、動かしていく情熱を持ち続けたこと、つねにスポーツを続けたこと。16年の長きにわたってがんと闘った姿は、もしかして、ランス以上かもしれないです。
 ボクのまわりには、おひとかた、がんと闘い続けた方がいらっしゃいました。1997年の今月亡くなられた、TOEICの創案者北岡靖男さんです。(北岡さんのことは以前も書いたことがあるのですが、今の会社を始めることになったのは、北岡さんのおかげです。)北岡さんも、67歳で亡くなられるまでに、7回前後の手術を経験されたと記憶しています。
 北岡さんにしろ、この関原さんにしろ、信じられない忍耐力を示されたと思います。関原さんについては、2007年のインタビュー記事をネットで拝見しましたが、現在もお元気でいらっしゃることをお祈りしています。

Yonda?Doll

新潮文庫のYonda? Club。大好きです!新しいYonda?Dollをゲットしますよ!

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『日本の優秀企業研究_企業経営の原点6つの条件』(新原浩朗著)

 優秀企業とそうでない企業を分ける一般法則は、所属する業界の差に関わりなく見られ、以下のような6つの共通点が見られる、とする研究結果を書籍にしたもの。
1 分からないことは分けること
2 自分の頭で考えて考えて考え抜くこと
3 客観的に眺め不合理な点を見つけられること
4 危機をもって企業のチャンスに転化すること
5 身の丈に合った成長をはかり、事業リスクを直視すること
6 世のため、人のためという自発性の企業文化を埋め込んでいること

 まとめて言えば、「自分たちが分かる事業を、愚直に、まじめに自分たちの頭で考え抜き、情熱をもって取り組む」こと。

 この本の中には、ボクが尊敬している企業、企業家が紹介されています。任天堂(山内前社長)、信越化学(金川千尋現社長)、ヤマト運輸(故小倉社長)、マブチモーター、ホンダ、トヨタ、シマノなどなど。任天堂の山内さんにとっても、最初の30年は苦労の連続だったこと(トランプや花札事業にかわる新規事業として、タクシー事業、インスタントライスの製造にトライした)が紹介されています。また、マブチモーターの製品標準化の話も、おもしろかったです。
 任天堂やマブチモーターは、Big Giants になっていますが、"Small Giants"たちと同じなにかを、共有していると思います。

伊那食品工業_日本のSmall Giants(スモールジャイアンツ)

 アメリカン・ブック&シネマの新刊本「Small Giants」。おかげさまで、日本経済新聞の書評欄でも取り上げていただきました(1月18日付)。この本の中で紹介されているのは、アメリカの企業ばかりですが、日本に、Small Giantsがないわけではありません。それどころか、たくさんあるはずです。

 で、そのような日本のSmall Giantsのひとつが、この伊那食品工業なのではないかと、ロイターのHPに掲載されていた、雑誌「プレジデント」の記事から思った次第です。しっかりした哲学をお持ちの社長に感心しました。事業の深堀、地元に根付いた経営などが印象的です。

(→伊那食品工業記事

木下敏之著『なぜ、改革は必ず失敗するのか』

 今日は、この本をずっと読んでいました。
 著者の木下さんとは、数年前からお付き合いさせていただいていますが、この本を読んで、あらためて立派な方だなと感心しました。また、おつきあいいただき、たいへん光栄だなとも思います。
 39歳の若さで佐賀市の市長になられ、6年半の市長時代、さまざまの改革に挑戦され、成功と失敗を経験されたそうですが、そのときの経験がこの本の中に、率直に書かれています。政治、特に地方政治は理屈ではなかなか行かないものだとあらためて認識します。
 この本の副題には、「自治体の『経営』を診断する」とあるのですが、木下さんは、これからの政治家、特に自治体の政治家には、経営センス、富を創造していく力が必須だとされています。残念ながら、役人にはその経験も、力もないと。ちなみに、ご自身も、農水省の中央官僚だった方です。(「ビジネスの経験も、儲けなければ潰れるというプレッシャーも経験したことがなく、地域振興に失敗しても自分の給料は下がらない。そんな役所や政府が地域振興を考えても、いまの時代に合う策は出てこないのではないでしょうか」)
 また、地方都市が経済的に自立し構造にならなかった理由に関する木下さんの指摘は、鋭いと思います(「私は、小泉純一郎元首相の構造改革路線により格差が拡大したというよりも、地方側が長期間にわたり公共事業中心の地域振興策に依存してきたことに原因があると考えています。地方側から出てくる提案は、残念ながら税収を都市部から地方に移転させよ、という提案ばかりです。」)
 木下さんは、われわれ市民、国民の側にも、現実を直視し、「不都合な真実」から目をそらしてはいけないとはっきり書かれています。そこがまた木下さんのいいところだなと思います。
 現在は、講演活動、コンサルティングなどをなさっていらっしゃいますが、いつか国政レベルで活躍になられることを心から期待しています。木下さんのような方を生かせないとしたら、日本もダメだなとも思います。
 われわれ選挙民こそ、この本を読んだ方がいいというのが、ボクの意見です。
木下さんには、昨年、ボクのポッドキャスティングにもご出演いただきました。お聞きいただければ、うれしいです。
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アイデアエクスチェンジ

日経新聞の書評で『 Small Giants』が取り上げられました。

まったく予想していなかったのですが、昨日の日経新聞の書評欄(18ページの中ほど右)で、アメリカン・ブック&シネマの書籍『Small Giants』が紹介されました。たいへん光栄です!ありがとうございます。