『若者を喰い物にし続ける社会』(立木信著、洋泉社)

 お年寄りを大切にしないといけないのは言わずもがななんだけど、あまりにも世代間の不公平感が強くなりすぎていて、年金問題に現れている世代間格差はもう限界だとずっと思っています。そんななか、昨年買っていた本ですがようやく今日手に取って読んでみました。大きなテーマを新書で取り上げているので展開のしかたは荒っぽいところがありますが、僕より4歳下の著者の議論には同感です。
 日本が滅びていくとしたら、第三国からの攻撃だとか、資源の高騰とか、自然災害からよりも、内部矛盾から崩壊していくのではないかと思います。現在ある最大の内部矛盾が世代間格差。若者が夢を持っていない国がどうして栄えようか!
 いまの日本の状況は、JALの倒産に至るまでのプロセスがいい例なのですが、これまで恵まれていた時代に経営していた人たちが残していった負の遺産を、われわれ現役世代および若者世代が背負わされながら、国際的な競争も非常に激しくなったこの厳しい時代をサバイブしないといけないことかと思っています。戦後、焼け野原から立ち上がってきた過去の世代の方達の努力には感謝をしつつも、彼らの老後を支えていく負担があまりにも大きすぎる現状をどうにかしないと。
 現在、有権者の平均年齢が44歳、実際に投票する人間の平均年齢は50歳を過ぎているというような話がこの本の中に出てきます。政治家の方達も、老人ホームをまめにまわって票をかせごうとします。日本が活力をなくしている大きな原因のひとつは若者の声が十分政治に反映されていないことだとしたら、若者は絶対に投票すべきだし、20歳からではなく18歳から投票できるようにすることもひとつの方法かもしれません。
 以前このブログにも書いたことがあるのですが、若いうちに必要なのは苦労だと言われてきましたが、それは時代が右上がりの時の話です。それは終身雇用、年功序列でもそれなりに社会が続いていたときのこと。若いうちにへたに苦労すると折れたり、へこんだり、すねたりすることの方が多いし、マイナスの効果の方が多いのではないかと思います。それよりも、若いうちに必要なのは、いわゆるロールモデルではないかと思います。成功している人、活躍している人、いい仕事をしている人たちのそばで、彼らがどのように仕事をし、人と付き合い、どんな本を読み、どんな食事をしているのか。そんなことをすこしでも知ることができる機会を与えてあげること。ただ、ロールモデルを身近に探すことも非常に難しい時代になっていることも確かかもしれません。少しでも、後輩たちのロールモデルになれるように努力はしていきたいです。

『女装する女』(湯山玲子著、新潮新書)

 京都からの帰りの新幹線の中で読み終えた本。
 なんどか本屋では目にしていたけど、まったく食指をそそられなかった本でしたが、この前読んだ、『無頼化する女たち』(水無田気流著、洋泉新書)で知った著者がこの湯川玲子ならぬ、湯山玲子さん。読んでみると、とてもおもしろかった。林真理子の小説を別のかたちで楽しんだような読後感。
 このひと、クロイヌとほぼ同年代なこともあって、懐かしい名前や話しがでてきました。帯には、「10のキーワードで現代女性を読み解く。」とあります。女性たちがこの本を読んで、共感を覚えるのか、これは違うよと感じるのか、聞いてみたいです。
 あとがきにこんな文章があります。「高度消費情報社会の状況下では、女性を女性たらしめていたいろいろな幻想の鎧がひとつひとつ外されていくわけで、外された後にむき出しになった本体そのものは実は思ったよりもたくましく、自由で、どんでもない個性と欲望が普通に存在したというだけだ。しかし、そこのところが肥大しすぎると今度は社会の方がおじ気づいてしまう。そうなると、コミュニケーションであるとか、生きていくこと自体に問題が生じてしまうので、女性たちは”意思”として、あらためて、鎧を付け直す、というような面倒くさい行為にも手を染めている。」
 われわれ男は、母親から始まって、一生をかけて女性たちを理解しようとしているのかと思うことがあります。でも、女性たちはわれわれよりも一枚も二枚も上手のような存在かなと思わせる著者の語り口です。

湯山玲子ブログ

『太らない病気にならない体のつくり方』(川嶋朗著、実業之日本社)

 見出しをたどっていけばだいたい内容は理解できる本です。たぶん、医師である著者の先生がお話になったことを、ゴーストライターがまとめた本でしょう。この本の中で、温泉療法が紹介されていて、秋田の玉川温泉、鳥取の三朝温泉があげられています。一昨年でしょうか、田沢湖に行ったとき、玉川温泉の近くまで行きましたが、残念ながら時間がなく、行けませんでした。また、昨年初めて鳥取を訪問したとき、鳥取市から米子市までの電車が、倉吉に停車したことを覚えています。この倉吉からちょっと行ったところにあるのが、三朝温泉のようです。
 最高の贅沢って、こんな温泉町に、安い旅館でいいので、本を持っていって、1、2週間湯治にでかけることのように思います。

土佐派の家

 この前高知に帰ったとき、「土佐派」と名乗っている高知県の建築家のグループがあることを知りました。実際、これまで3冊、「土佐派の家」というムック版書籍を発行しています。(「土佐派の家PART I、PART II、PARTIII」)この前泊まったオーベルジュ土佐山も、「土佐派」の中心人物の一人、細木茂さんの作品のひとつ。この本の中で、土佐派の建築家たちが高知県の木を使って、100年保つ家をつくろうという心意気で仕事をしていることが紹介されています。すばらしいと思います。
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 戦後日本の家は、安かろう、悪かろう(と言っては申し訳ないのですが)の家が多くなってしまって、ハウスメーカーの家なんて、20、30年で取り壊しなんてものが多いように思います。安い海外の木材をつかってコストを下げることが多いようですが、僕は家に関しては、ちょっと「ナショナリスト」に近いので、これからの家は地元でとれた木材を使って、100年保つような家を、飽きのこないシンプルなデザインで作るのがいいのではないかと考えるようになっています。毎年訪問している秋田の国際教養大学は、秋田杉をつかった校舎や図書館を建てていて、これもすばらしいです。
 うちの近所も、20年、30年程度の家がほとんどなのですが、どんどん壊されています。後には、ばらばらのハウスメーカーの家があっという間に建つというのがパターンです。昨日も、歩いていると、そんな現場に出会いました。ちょっとドキッとするような言葉かもしれませんが、「家が屠殺」されるような感覚を持ちました。でも、家畜たちと違って、家の廃材は、産業廃棄物として、すべて捨てられていくのでしょう。古民家と言われるようなしっかりした旧日本建築の場合、立派な柱が再利用されるようなこともあるようですが、20年前、30年前、既製品として安上がりに作られたハウスメーカーの分譲住宅には、そんな資材となるようなパーツは含まれていないのかもしれません。
 このごろのデフレの話しで、安いものばかりが売れる、適正な利益を上げることが難しくなっていると、言われています。利益を上げることに関しては、企業経営における努力が必要ということはもちろんなのですが、背景として、戦後の日本がじっくりとものを考える訓練をしなくなり、肝心要の家に関しても、20年程度でスクラップになるようなものしか建ててこなかったこと、安いもの、すぐに捨ててしまうようなものばかりが身の回りにはんらんしているというような状況があります。ちょっと値段が高くても、いいものを買って、末永くおつきあいする、そんな買い物の仕方が好きです。人との付き合いも同じ、かな。
 「土佐派の家PARTIII」の中に、こんな言葉がありました。「人が家を作り、家が人を作る」。

土佐派ネットワークス

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『痩筋力_確実にやせる筋トレ術』(石井直方著、学研新書)

 1年かけて5キロほど痩せたかと思ったら、年末、年始、外で食事することが多くなると、いつの間にか2.5キロ「リバウンド」。「貯金」を使い果たしそうです。食事の量が増えがちなので要注意。昨日は20代の社員の人たちと、夜、シュラスコ料理を食べにいくのに、お昼はリンゴ一個で我慢。どうにかこうにか現状維持です。
 さて、『痩筋力』というのは、著者の造語。身体運動科学、筋生理学を専門とする東大大学院の先生。「痩せたいなら筋トレから初めなさい」。バレリーナの筋肉を分析すると、一見スリムな外見からは想像もできないほど筋肉の発達がすごかったそうです。

『戦略の断層_その選択が企業の未来を変える』(古我知史著、英治出版)

著者は僕の知人で、いわゆるベンチャーキャピタルの専門家。ご本人は、自らのお仕事をビジネスインキュベーションと呼ばれています。あとがきにあるこんなお考えに強く共感を覚えます。

 「ビジネスは断続的にリスクを取ることである。リスクを取らなければ未来に対して受動的になる。未来に対して受動的であるのは自然であるかもしれないが、そこには主体者や当事者の意志が無い。リスクをとることは即ち未来に能動的に意志を持って働きかけるということだ。しかもそれは一度ではなく数限りなくある。」

 またこんなことも記されています。

 「筆者が職業人としてずっと標榜し続けていることがある。『力への意志』と『自由なる精神』だ。(中略)『力への意志は』とは、人間は内在する意志を顕在化して行動に移すべきだということ。(中略)『自由なる精神』とは、経営者や事業家の前にひとりの人間として、心と時間を解放して世の中の森羅万象に対して感受性をみずみずしく豊かにしよう、という意味だ。」

 著者の古我さんとの「アイデアエクスチャンジ」、今月中には配信が始まりますのでお楽しみに。

『無頼化する女たち』(水無田気流著、洋泉新書)

以前ご紹介した『黒山もこもと、抜けたら荒野デフレ世代の憂鬱と希望』の著者。(→バックナンバー)「みなした・きりう」という、女性にしてはちょっと摩訶不思議なお名前(ペンネームですよね)。
本の帯には、「負け犬」、「おひとりさま」、「カツマー」¨…これがニッポン女子の無頼道!とあります。
ご本業は、詩人(第11回中原中也賞受賞)、そして社会学者。
この本で、社会学的に分析されたニッポン女子のことをちょっと勉強させてもらいました。
文章や選ばれた言葉もリズム感やスピード感があって、読みやすいし、気持ちがいいです。
この方、将来は上野千鶴子さんの後を継ぐ、代表的女性学研究者になるのでは?なんて期待しています。

『怒らないこと_役に立つ初期仏教法話1』(アルボムッレ・スマナサーラ、サンガ新書)

わかってはいるけど難しいのが、この「怒らない」ということ。

松本清張著「昭和史発掘1」(文春文庫)

 今日は仕事始めということで出勤。(ただしうちの会社は明日からスタートです)
お正月、今年最初に読んだ本は松本清張。この人って、学歴はないかもしれないけど、本当に勉強家だと思います。よくこれだけ古代史から現代史まで勉強されているなと感心します。アカデミックな世界の人たちからの評価は知りませんが、司馬遼太郎と並ぶ国民作家の一人だと思います。
 ところで今日の丸の内、銀座エリアはちょっと賑やかな、華やいだ雰囲気でした。いつまでも少子化だ、デフレだと言って下向いていてもしょうがない。まっすぐ前をむいていこう!

『若さを伸ばすストレッチ』(伊藤マモル著)

平凡社新書です。ストレッチの基本をわかりやすく解説してくれています。イラストもリアルな感じがとてもいいです。
著者は、順天堂大学大学院体育学研究科卒。この本の中で紹介されているストレッチの全部ではありませんが一部を、今年の初夏くらいから毎日行っています。少しずつですが、必ず効果が出てきます。(自分の体で実証済み)