さかはらさんの『サリンとおはぎ』(講談社)を応援する!

 アイデアエクスチェンジにでてもらい、またこの黒犬通信でもご紹介したさかはらあつしさんの半生を描いた自伝『サリンとおはぎ』。さかはらさんと知り合って何年かになりますが、これまで知らなかった彼の過去もこの本の中では紹介されています。特に、彼が一時結婚していた女性が、彼を襲ったサリン事件を引き起こしたオウム真理教に入っていたということ、たいへんな結婚生活だったことなどはまったく知りませんでした。また彼のおじさんが京都大学理学部に入学するも法学部に転部して、8年在学後ヨーロッパにわたったあと、いつにダイヤモンド商人になったことなども、以前さかはらさんから聞いていたとは思うけど、詳細を知ることになりました。電通の入社面接の話などもおもしろくて、はったりをかましながら難関を突破したさかはらさんの行動力には感心しました。
 こんなに人生にまともにぶちあたって生きてきた人は、僕の周りでも本当に珍しく、「天然記念物」のような人です。なので、彼を助けるためにも、ぜひ多くの方に彼の本を買ってもらいたいし、ぜひ彼のメルマガ「Team Oscar」の購読者になってもらいたいと、こころからお願いします。

TeamOscar ブログ(ビデオブログも始まっています)
アイデアエクスチェンジ「さかはらあつしさんの巻」

『群衆_機械のなかの難民』(松山巖著、中公文庫)

20世紀の日本を主題に、「一体となった感情を有し、ときには怒り、苛立ち、ときには哀しみ、泣き叫ぶ」群衆という現象について、「だらだらと述べる」作品。日露戦争以後の日本、夏目漱石、石川啄木、大杉栄、夢野久作たちが見た新しい群衆。この本は1996年、〈20世紀の日本〉の12巻目として出版されたもので、読売文学賞(評論・伝記部門)受賞作。
この1996年は日本においてもインターネット社会が本格的に始まる頃。この本の中にはインターネットが作りつつあるバーチャル世界が取り上げられてはおらず、著者がネット社会における日本の「群衆」をどのようにとらえているのか、たいへん興味がある。

河野道代「犬の言語」

3月4日の日経新聞夕刊文化欄で、詩人で小説家の小池昌代が、「詩の魔力」というテーマで詩を紹介するコーナーが始まっています。クロイヌは、お恥ずかしいのですが詩を読む習慣を身につけることができませんでした(これからでも遅くないでしょうか?)。
このコーナーで紹介されていたこのような詩の冒頭を読むと、詩もいいなと思いました。

河野道代「犬の言語」冒頭:
黒犬が一頭
火山上の杭に繋がれて日を浴び
黙々と
半径二・五メートルの鎖を
張って旋回している。
労働とも遊戯とも無縁な
粉塵の真昼を
彗星のように孤独に。

ちなみに河野道代は今日これから行く福岡の出身。この詩が含まれる詩集『花・蒸気・隔たり』をアマゾンで注文しておきました。

『不幸な国の幸福論』(加賀乙彦著、集英社新書)

作家加賀乙彦の幸福論。以下、本の見出しからです。
第一章:幸福を阻む考え方、生き方(考えない習性が生み出す不幸、他者を意識しすぎる不幸)
第二章:不幸増幅装置ニッポンをつくったもの(経済最優先で奪われた安心とつながり、流され続ける日本人)
第三章:幸福はしなやかな生に宿る(不幸を幸福に変える心の技術、幸せを追求する人生から、幸福を生み、担う生き方へ)
第四章:幸せに生きるための老いと死(人生85年時代の豊かな老いの過ごし方、死を思うことはよく生きること)

実は今日からMOSを運営しているアジア各国の代表の集まりがあってマカオに来ています。マカオはアジアのラスベガスとも言える都市で、僕は2度目ですが、あまり好きになれない場所です。仕事の必要性がなければ、絶対にこない場所かと思います。加賀さんの「幸福論」で説かれているような考え方、生き方とは正反対の位置にあるようなところです。そんなところに来る機内、そしてホテルでの自由時間に読み終えました。
この本で書かれていることは、自分の人生を真剣に考えよ、他人の目を気にすることなく自分をしっかりと持て、他人と比べて自分は幸福かなんて比較をする必要はない等々、当たり前のことが書かれているのですが、それら当たり前のことをずっと忘れてきたのが我々日本人のように思います。80歳になられようとする加賀さんのご意見には賛成することばかりです。

さかはらあつしさんの「サリンとおはぎ」アマゾンで予約開始。

「アイデアエクスチェンジ」に出演いただいた、さかはらあつしさんの体験談「サリンとおはぎ」が来月講談社から出版されます。予約がアマゾンで開始されています。僕はもう予約しましたよ。さかはらさんは僕の知り合いの中で、もっともユニークな人生を生きてきた人のひとりで、いつも感心しています。ぜひ「アイデアエクスチェンジ」をお聞きいただいき、本もお読みいただけると、ありがたいです。

アマゾン
アイデアエクスチェンジ「さかはらあつしさんの巻」

イチゴ離れ

 夜、事業仕分けで有名になられた加藤さんが代表をされている構想日本のフォーラムにお伺いし、「ゆずりは」の田中陽子さんの司会で、北東北の職人さんたちのお話をお聞きしました。みなさんの、東北弁を交えながらのお話にたいへん感動しました。「キャリア」なんて横文字はいっさい出てきませんが、生きるということ、働くということについて、地に足の着いた考えを持った人たちのお話でした。東京で毎日気ぜわしく働いているわれわれの仕事が本当に薄っぺらなものに思えてなりませんでした。
 田中陽子さんのお話で、「イチゴ離れ』という言葉を知りました。野イチゴの季節(7月初め)、子グマが夢中で野イチゴを食べているうちに親グマがそっと姿を消す。子グマがふとわれに返って周りを見回しても、そこには親グマの姿はない。いつか必ず来る親離れ、子離れ。そんな熊の親子の別れを東北の人たちは、イチゴ離れと呼ぶそうです。親子の切ない別れを、なんて素敵な言葉で表現しているのかと思いました。(「ゆずりはの詩」田中陽子著)
ゆずりは

『歴史と外交_靖国・アジア・東京裁判』(東郷和彦著、講談社新書)

 駐オランダ大使を最後に2002年外務省を退官した1945年生まれの元外交官によるエッセイ。「どうしてわが国は、一連の歴史問題に、日本人としての答えを出し、みずから納得できるメッセージを世界に発出し、世界との調和をつくりだし、日本人の優れた能力とエネルギーを、さらに、創造的な問題に使っていけないのだろう。」という問題意識を持つ著者の、「体験的思索の書」。

 ビジネスの席で宗教と政治の話はしてはいけないと言われますが、僕はアジアのビジネスマンとも、あるいは欧米のビジネスマンとも、酒の席や食事の席で歴史や政治の話をすることがあります。もちろん、大仰な話になるまでやったことはありませんが、相手の考えや価値観を勉強させてもらう、いいチャンスになります。

 

『貴流・心氣体』(貴乃花光司著)

 次号のオデッセイマガジン巻頭インタビューにご出演いただくために、貴乃花親方と昨日お会いしました。1時間強、率直な意見交換をさせていただきました。平成の大横綱との対談、たいへん刺激になりましたし、光栄でした。次号のオデッセイマガジンは、「今年はやる」というテーマです。
 『心氣体』は、昨年扶桑社から出版された本で、事前に拝読。サブタイトルは、「相撲の心でつくる美しい体」。イラスト入りでストレッチの仕方などが詳しく解説されています。昨日、僕は親方直々に四股の踏み方を教えてもらいました。(ただ、四股はプロのもので、われわれアマチュアは、腰を落とし、ゆっくり、ゆっくりと腰をあげていくストレッチで十分だということです。)実際に横で親方の四股を拝見しましたが、これは迫力がありました。
 来月下旬にできあがります。お楽しみに。

城さん、中央職業能力協会の理事長に応募されてはいかがですか?

先日日経新聞記事で、厚労省がこれまで天下りでトップが決まっていた外郭団体の理事長を公募するという記事を読みました。厚労省がどれだけ本気なのかわかりませんが、「若者はなぜ3年で辞めるのか」、「3年で辞めた若者はどこへ行ったのか」、そして「7割は課長さんになれません」著者の城さんのような方をトップにすえられると面白いと思います。ブラックユーモアではなく、本気です。
城さんには、2年前、「アイデアエクスチェンジ」にご出演いただいきました。城さんの本を読んでいると、共感するところがすごく多いです。
「アイデアエクスチェンジ」城繁幸さんの巻

『「野生」の哲学』(町田宗鳳著、ちくま新書)

 さきほどシアトルに着きました。機内で読み終えた本です。(今日、明日とミーティングがあって水曜日の飛行機ですぐに東京に帰ります)
 著者はユニークな経歴の持ち主。14歳で出家、34歳のとき渡米し、ハーバードの神学部で修士、ペンシルバニア大学東洋学部で博士をとった方。友人がこの方のファンで薦めてくれました。
 この本の副題には、「生きぬく力を取り戻す」とあります。自分の心と体に元々備わっている根源的な生命力を大切にしながら、創造的な生き方を模索しよう、と。織田信長の決断力、坂本龍馬の行動力、円空の造形力、宮澤賢治の想像力、そして松下幸之助の直感力が紹介されています。この本で書かれていることには共感を覚えます。(この本で円空が木地師の血を引いていたこと、木地師は中世からの木工技術者たちで、トチやブナなどを求めて移住生活を続けていて、蔑視や差別の対象とされていたことを知りました。)
 日本の閉塞感を打ち破るひとつの考え方がここには書かれていると思います。

町田宗鳳ホームページ