『成功は一日で捨て去れ』(柳井正著)

 著者は、ご存知、ユニクロの創業者。ボクが尊敬している起業家、経営者です。このブログでも以前からなんどか書かせていただきました。(→バックナンバー1、→バックナンバー2バックナンバー3
 この本自体は、ユニクロのPRのひとつとも言えるのでしょうが、それを割り引いても、経営者、起業家にとっては参考になる本です。アパレルの小売業は、うちの会社のビジネスとは性格がかなり異なるため、簡単に比較したり、真似たりできるわけではありませんが、柳井さんの姿勢、考え方、またその勉強熱心さは非常に参考になります。
 1「企業の目的は顧客の創造である」(ドラッカー)。企業は自分たちがなにを売りたいかよりも、お客様が何を求めているかを考え、お客様にとって付加価値のある商品を提供すべきである。
 2「企業の目的は、それぞれの企業の外にある。」(同じくドラッカー)。本来、我々がターゲットにすべきなのは、まだお店に足を運んでくれていないお客様、つまり潜在的な需要をつかまえることだ。
 3 顧客を創造するためには、付加価値を持った商品を開発するということ以外に、テレビコマーシャルや雑誌などを使ったイメージ戦略や企業の姿勢を伝えていくPR活動が大切だ。
 もうひとつ響いたこと。ボクらのビジネスは、顧客にある程度努力(それをボクはよく「苦行」と言っているのですが)をしていただかないといけない性格を持っています。そんなビジネスを行っているボクには、次のような柳井さんの言葉がとても響いてきました。
「よく、先行している商売人が流行を作り出すとか、お客様の心理を作り出すといった類の話があるが、そんなことは実際にはあり得ない。こちらから心理状態を変えるなんて滅相もないことだ。重要なのは、お客様の心理状態に合わせて商品を作り出すことなのだ。」
 実は、昨日福岡のセミナーでお話させていただいたとき、ITビジネス、あるいはITのトレーニング、資格ビジネスは、売りたいものを一方的に売ろうという姿勢が強すぎるのではないか、という発言をしました。そういうこともあって、福岡からの帰りの飛行機で読みはじめ、自宅に帰って読み終えたこの本の中の柳井さんのさまざまな言葉に、とても共感したのかもしれません。

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(写真は、昨日、福岡であったセミナー会場のAIビル9階から見た夕方の百道の海の景色。とてもきれいな眺めでした。)

"The First Billion Is The Hardest" (T. Boone Pickens 著)

 アメリカからの帰りの飛行機の中で読みはじめた本です。『どん底から億万長者』というタイトルの本は、この本の翻訳本かもしれませんが、表紙のデザインはちょっと安っぽくなっている印象を受けました。
 日本では、80年代、ピケンズが小糸製作所の株を買ったことでマイナスの記憶を持っている人も多いかもしれませんが、日米問わず、大企業のサラリーマンとはまったく違う価値観と生き方をしてきた人です。まだ読み終えていませんが、印象は決して悪くないです。自分でリスクをとり、体を張って生きてきた人かと思います。
 ピケンズは、アメリカが海外(中東)の石油に依存することが、外交、防衛において危機的な状況を作り出していることを、身銭を切ってキャンペーンしています。石油マンのキャリアを持ちながら、代替エネルギー(風力、ソーラー)の開発に投資をしています。現在すでに80歳をこえていますが、そのバイタリティには敬意を表します。
 YouTubeにも彼の動画がかなりアップされています。


『正座と日本人』(丁宗鐵著)

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 今回アメリカに来る飛行機の中で読んだ本。「正座」の歴史を、医師である著者がたどったエッセイ。この本によると、正座が日本に広まったのは明治維新の時、国民意識を広めるためのようです。正座の歴史は案外短かったのだ!
 さらに、著者によると、正座は適度に時間を区切って行った場合、肉体および精神にとって効用があります。(例えば、集中力を高める、眠気が覚める、内蔵の負担が軽くなる、消化力が高まる、肥満を防ぐなどなど。)正座を「エクササイズ」として考えるべきだという提案です。
 腰痛のために始めたストレッチですが、出張先のホテルでも毎朝行っています。せいぜい10分程度ですが、いつも終わりは正座で締めくくります。
 この本を読むまで、ボクの短足、胴長は子供の頃の正座が原因かと思っていましたが、必ずしもそうでもないようです。

アメリカでの桐野夏生

 もうひとつ書籍の話題を書いておきます。日本の作家では、村上春樹に次いで、桐野夏生さんが知名度を上げていると思います。彼女の作品のファンとしては、うれしい展開です。

サンフランシスコ空港の書店で見た店員によるコメントです。
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読みづらいと思うので、書き出しておきます。

"After reading this book, Kirino has become my favorite author of modern-day Japanese thrillers. An absolutely awesome read! Highly recommended to read this and her others. "OUT" and "GROTESQUE".

かなり目立つところに置いてありました。

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ユタ訪問

 サンフランシスコ2泊後、昨晩は取引先訪問のためにユタに移動。サンフランシスコからの飛行機が2時間遅れたので、ユタのホテルに着いたのは真夜中を過ぎていました。われわれビジネスマンは体力勝負です。明日土曜日の飛行機で帰ります。日曜日の夕方に成田です。移動は週末に、そして月曜日から仕事。これからもしばらくは、こんなペースで仕事ができればありがたいです。
 今日は取引先の方たちとのミーティングのあと、ちょっと時間が空いたので、ホテルのそばの書店(Barnes & Noble)に連れて行ってもらいました。ここでは車なしではまったくなにもできません。写真は町と町を結ぶ道路。車に頼り切るここの人たちにとって、ガソリンの値段が上がることは生活から安定を奪っていくことを意味します。

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 どの町に行っても本屋にだけは足を運びます(自分でも書店中毒という病気だと思っています)。来月American Book & Cinema で発行することになっているビジネス本は、Knackという本です。今年発行したSmall Giants の著者による新刊です。日本語訳は、『経営の才覚』というタイトルになります。(→American Book & Cinema
Barnes & Noble でも、ビジネスコーナーにありましたよ!

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 同じくAmerican Book & Cinema で出した『ツールドフランス_勝利の礎』。ここの本屋でもサイクリングコーナーにはありました。
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サンフランシスコのボーダー書店で

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サンフランシスコのボーダーズ(本屋)の中で見かけたラブラドール。
2階に上がるエスカレーターに無理やり乗せられたときにはどうなるかなと後ろから見ていて心配になりましたが、写真の通り無事に上がることができました。(下りは大丈夫だったかな?)

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『ツールドフランス_勝利の礎』(アメリカン・ブック&シネマ刊)の英語版もちゃんとありました。

『公務員大崩落』(中野雅至著、朝日新書)

 長崎出張の行き帰りの機内で読みました。

 ポッドキャスティング「アイデアエクスチェンジ」にもご登場いただいたことがある、兵庫県立大学大学院教授、中野雅至先生による、われわれ一般向けの本。前後して、論文『天下りの研究』(明石書店)も出されていますが、これはじっくり読まないといけない本。

 帯には、「奴隷化する公務員」、霞が関、地方自治体、特殊法人、三セク、全公務員必読!とあります。

 テレビのニュースをより深く理解するために読んでおいた方がいい本です。僕は公務員志望の学生たちと、その親御さんたちにこそ、薦めたいです。公務員、特に地方公務員ですが、自宅通勤で安定した人生を送ろうなんて思っている学生と親たちに、「喝!」。

アイデアエクスチェンジ「中野雅至さんの巻」

『日本人はなぜ日本を愛せないのか』(鈴木孝夫著)

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 3、4年前に新潮社からでている本です。言語社会学者である鈴木先生の一般向けの書籍はほとんど読んでいるファンの一人です。神戸往復の飛行機の中で読み終えました。このブログでも以前書いたのですが、偶然、ある食堂で鈴木先生がご家族と食事されているのを拝見したことがあります。とても愉快なおじいちゃまという感じでの方でした。
 この本でもこれまでの鈴木先生のご意見が繰り返しでてきますので、まだ鈴木先生の本をお読みになられていない方には入門書としてオススメします。
 ボクが一層鈴木先生に親しみを感じたのは、以下の文章です。
「私は昭和のはじめ、小学生だった頃に、クロという名をつけた小型の甲斐虎(日本犬の一種)を飼っていました。私はこの犬を近くに住む桝富(ますとみ)さんという老婦人から頂いたのですが、この方は書家であった私の父のお弟子さんでした。」なんと、鈴木先生も我が家の黒犬たちと同じ甲斐犬を飼っていらっしゃったのだ!鈴木先生のファンとしてはうれしいお話。

『がんと闘った科学者の記録』(戸塚洋二著、立花隆編)

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 お取引先の皆さんとの会合のために高松訪問。ご参加いただいた皆様、ありがとうございます。相変わらず日帰り、空港と市内の往復。もう少し時間があれば、四国村に行きたかったのですが、次の機会まで待ちます。
 写真は、高松駅前のビル29階のがら空きのレストランで撮った写真。窓の向こうは、瀬戸内海です。
 先日から読みはじめた『がんと闘った科学者の記録』を高松で読み終えました。昨年お亡くなりになられた日本を代表する物理学者のお一人がブログに書かれた文章を、生前からお付き合いがあった立花隆が編集した本。
 ご自身のガンの分析やニュートリノの研究のために20年も過ごされた奥飛騨の神岡鉱山周辺の植物の紹介、ご自宅の庭で育つ花々の写真の他、神の存在に関する思索(マザーテレサは、ミッションを始めた直後から死ぬまで、神は存在しないのではないかという懐疑の念を持ち続けていたのか?)、佐々木閑先生(先日紹介した『日々是修行』の著者)との交流、科学者という人種のこと、科学者の仕事についてなど、感動しながら読み終えました。
 ご自分が到達したいと努力している人生の終末として、正岡子規の言葉を紹介されています。「悟りといふ事は如何なる場合にも平気で死ぬる事かと思って居たのは間違ひで、悟りといふ事は如何なる場合にも平気で生きて居る事であった。」(『病牀六尺』)
 先週、『病牀六尺』を含む正岡子規の本(すべて岩波文庫)を三冊買ってあります。

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『星守る犬』(村上たかし著)

 普段マンガは「読まない、買わない」ですが、数週間前に、本屋のマンガコーナーで表紙を見て買っておいた単行本。(ちなみに、その時は、めずらしくマンガを目的に本屋に行ったのです。目当ては、「パーマン」と「おばQ」。どちらも小学生の頃読んでいたマンガ)

 そのあと、新聞でこの単行本の広告を見たこともあり、昨晩、ぱっと読み、なんともいたたまれない気持ちに。弱い父親像、失業、家庭崩壊、そして自殺という話が、愛犬の目を通して描かれています。
 今日は、今年1月から8月までの自殺者が2万2千人と、最悪のペースで推移しているという記事を読みました。たまらない話です。
ロイター記事