ルーマニアからの来客

2年前、大学時代の友人の紹介で東京に来たルーマニアのIT会社の連中が、今週、再来日しています。彼らは医療分野へのソリューション提供を得意とするのですが、彼らと話をしていて、優秀なだけでなく、我慢強いことに感心します。昨年夏、思ってもみなかったことですが、初めてルーマニアを訪問したときに、この会社の創業者と話をしていて、いろいろと勉強になりました。この方は、南アフリカ生まれのユダヤ人で、イギリス国籍、仕事でチャウチェスク時代のルーマニアを訪問し始め、ルーマニア人と結婚して、ルーマニアで創業。優秀な人材はいたるところにいるものだなと思います。

これまでの経験でいうと、国の経済は必ずしも大国規模でなかったり、何らかの理由で「遅れている」と見られていても、その国のトップクラスの人材は、日本に来ても必ず優秀なグループに入ると思うことがほとんどです。欧米はもちろんですが、いわゆる途上国と言われている国のリーダーたちも非常に優秀です。

 僕は政治を批判したり、マクロ経済を語るほど見識を持っているわけでもなく、自分の会社をしっかりやっていくことが第一。日本国内はもちろんのこと、結果を出している海外の経営者たちからも学ぶことはたくさんあります。

 

丸の内起業塾・須賀さんが起業家支援賞を受賞

Suga_1 Suga_2 丸の内起業塾・塾長の須賀さんが先週、中小企業庁長官から、起業家支援賞を受賞。会場が国際フォーラムだったので、僕も顔を出しました。須賀さん、これからも頑張ってください。(右の写真で前列右から3番目が須賀さん)

重視していないのは株主だけか?

ハーバードビジネススクールでは僕のひとつ上の学年で、現在はHBSリサーチセンター所属の江川雅子さんが、「株主を重視しない経営―株式市場の歪みが生み出した日本型ガバナンス (日本経済新聞社刊)を先日出されました。近いうちに拝読しようと思っています。

 海外の投資家からの圧力に対して、日本の経営者の多くが強い反発や抵抗をしめしています。僕が思うのは、それではこれら日本の経営者たちは、株主を重視しなかったとして、社員や取引先、あるいは環境問題や社会的な企業責任を本当に重視しているのだろうか?ということです。

 バブル崩壊後の多くの日本企業は、それまでのように社員(特に社員教育)を大切にしていないのではないか?取引先、特に下請け企業に対する姿勢は公正なのか?環境問題は本気になって対応しているのか?(いたるところにある偽装!)

 依然として、多くの上場企業においては、株主を重視していないだけでなく、社員をはじめとする他の関係者も重視していない企業が多いのではないだろうか、という疑問があります。80年代のアメリカでは上場企業の敵対的M&Aが増えました。敵対的M&Aにはさまざまな見方がありますが、M&Aそのものには、経営に創造的な刺激をもたらし、新しい変化を生み出すプラスの面が大きいのではないかと思っています。アメリカにおけるM&Aが生み出した価値(市場価値の増大)は、それまで企業内に隠されていた非効率を大きく上回るものである、という学術的な研究結果も発表されています。日本でもそのような調査結果が、もっと知られ、積極的な議論がされてもいいのではないかと思います。

 

地方分権の難しさ

ある中央官庁の方とITを含めた経済、経営のことをお話していてでてきた話題。それは地方における経営を担える人材枯渇の問題。地方分権や地方への権限委譲をするにも、その受け皿になる人材が地方にいないということ。そして現在、地方において政治や行政を行なっている人たちに任せてしまうと、これまで以上に利権化と腐敗がひどくなるのではないかという畏れ。

 このテーマは正面から切り出せない、ある意味タブーになってしまっているテーマかもしれません。いつの時代も、どこの組織でも、つまるところ問題になるのは、人材のこと。

アメリカ経済との「カップリング」

株式市場が世界的に大きく揺れ動いています。日経平均も昨日は1万3千円を割り込み、2年3ヶ月前の水準まで落ちています。結局、小泉さんの構造改革への期待からあがった日本株も、安倍さん、福田さんによって、すべて帳消しとなってしまいました。 

 ある証券会社のレポートを読んでいたら、2007年の為替市場を一言で表現すると、「歴史的な米ドル相場の底割れ、暴落が相次いだ年」であったとしています。さらに、2007年の米ドルは、欧州通貨や資源国通貨に対して、「現役で活躍している為替ディーラーが、ほとんど誰も経験したことのないような水準までドル安が進行した」とあります。

 日本国内だけを見ていると、歴史的な経済変動を直接感じることは難しいように思います。ポイントは、アメリカ経済と、ヨーロッパ、アジア、その他新興国の経済が、どれだけ相関関係があるのか(アメリカが不況になると、その影響で世界経済も不況になるのかどうか)、昨今はやりの言葉でいうと、アメリカ経済と世界経済全般が、カプリングされているのか、それともデカプリングされているのか。

 先週会ったシンガポール在住の日本人ファンドマネージャーは、シンガポールは絶好調で、サブプライムの影響などまったく感じないということでした。でも、僕はアメリカ不況の影響は、これからアジアにも波及するのではないか、まだまだ世界経済は、アメリカとカプリングの状況にあるのではないかと思っています。

 

 

韓国では大学生の半分が職にあぶれる

モノの値上げが続いています。昨年来の傾向ですが、昨日は、時々買う弁当の値段が10円上がっていることに気づきました。今朝の朝日新聞朝刊一面には、日清製粉グループが、業務用のパスタを40%値上げするという記事がでています。マックやスタバは昨年からすでに値上げデフレはもう過去のもの。不況下のインフレ(=スタグフレーション)の時代が近づきつつあるのかなという気もします。高価な商品の売れ行きは下がったとしてもどうでもいいのですが、生活に必要な基礎的な商品は、あまり値上げして欲しくないです。

 今年もまだ就職市場の活況は続くように見えます。新卒を採らない弊害を企業は理解したことと、団塊世代の穴埋めのために新卒採用は続くでしょうが、大学生諸君は、あまり油断しないほうがいいと思いますよ。

 隣の韓国は大学生の半分が職にありつけないそうです。英語とITの資格は必須で、すこしでも差別化できるように励んでいるそうです。日本の大学はこれから急速に変っていくでしょうが、学生たちを「お客さん扱い」するだけでなく、社会で将来活躍できるような人材としての心構え、スタミナ(精神的なものも含めて)、そして学力をしっかり学生に身に付けさせるようにしていただきたいです。

 

地方にコールセンターを持っていく効果

サイボウズ(青野社長)が、創業の地である松山市に、コールセンターをおかれるという記事を拝見。小規模とはいえ(当初は6名)、地元への「恩返し」として素晴らしいと思いました。

 通信コストの圧倒的な低下の結果、本来であればさまざまなビジネスが地方に移転したり、地方から起こってきたりしていいはずなのに、現実に起こっていることは東京と名古屋の一人勝ちです。これで関東大震災が起こったら、完全に日本沈没になってしまうのですが・・・霞ヶ関界隈もビルをどんどんと立て直していますので、かつて言われた首都移転も構造改革同様、遠い昔の議論になってしまっています。

 地方に作られてきたコールセンターから、将来、新しい会社、新しいサービスが生まれてこないものでしょうか?東京の会社は地方自治体の要請などもあって、地方にコールセンターを持っていきましたが、その中から、またその周辺から、新しいビジネスが生まれてくれば、素晴らしいことだと思います。

総理大臣に日経平均のストックオプションを与えよ

日経平均がどんどんと下がり、改革の機運が過去のものとなっている日本に見切りをつけていく海外投資家が増えています。今の政治家に最も求められる感覚はビジネス感覚ではないでしょうか。 

 嫉妬社会の日本では「暴言」となるのですが、僕は常々、日本国総理大臣に日経平均に連動した業績ボーナスを出せばいいのにと考えています。特定の業界からの献金や金集めをさせないために、また政策担当者にもっと市場に対する理解をもってもらうために、総理をはじめ、財務大臣や経済産業省の大臣の待遇が、日経平均株価に連動していると彼らはもっともっと現実の経済の動きに敏感になり、結果として日本国全体の利益につながるのではないかと思います。

 ボーナス、それも1年で10億、20億のボーナスを払ってあげても、日経平均が1万円上がれば、日本の国富は何十兆円、何百兆円と増えます。福田さんがやるべきことをやってくれるのであれば、10億円のボーナスなんて安いもので、われわれ国民全体の福祉と利益を考えると、有り余るほどメリットがあると思います。

 これは「暴論」なので、マスコミをはじめ、政治家はただで国民のために働けという方には、まったく理解してもらえない意見でしょう。実現の可能性はゼロだとわかっています。ただ、政治家は聖人君主ではないし、生きた経済の話しは、ビジネス感覚がない政治家や官僚には、わかってもらえないと思います。清貧の思想はある意味ロマンチックだけど、富の源泉をしっかり持ち、効率的なお金の使い方があってはじめて、年金を始めとする僕らの問題は解決できるはずです。

 ピーター・ドラッカーは偉かった。マネジメントは企業だけの話しではなく、国家レベル、地方自治体でもビジネスがわかりマネジメントができるヒトたちに上に立っていただきたいです。

ドル・英語・インターネット

「米中経済同盟を知らない日本人」(山崎養世著)の中で、キーワードとして何度もでてくるのが、この「ドル・英語・インターネット」。ドラッカーはかつて米・英・日・独が「マネジメント」を知っていると言ったそうだけど、今では「マネジメント」はこの4カ国の専売特許ではなく、多くの新興国がマスターしつつある。どこの国にも優秀な人たちはたくさんいて、これまで戦争やら内乱やら、あるいは専制政治のもと、それら優秀な人たちがチカラを発揮できなかっただけだと思う。1945年からこれまで戦争にも巻き込まれることなく、もちろんのこと内乱もなく、アメリカの庇護のもと、金儲けにだけ集中することができた日本のなんとラッキーだったことか。

 英語とインターネットを身につけた新興国の優秀な人材たちは、どんどんと「マネジメント」能力を身に付け、日本をはじめとする先進国に追いつき、追い越そうとしている。

グリーンスパンの「私の履歴書」

今月の日経「私の履歴書」は、前FRB議長のアラン・グリーンスパン。世界の金融界で最高の「権力」を持っていた人。その彼が最も影響を受けた人の一人が、リバタリアンのアイン・ランド。今日第8回目のお話では、アイン・ランドからグリーンスパンがなにを学んだかが紹介されています。

 グリーンスパンのような「エスタブリッシュメント」の一員が、「個人の自由を尊重し、国家の介入を厭う、今ではリバタリニズムと呼ばれる考え方が私の価値観となった」と明言すること、そんなところがアメリカの魅力の一つだと思う。彼も書いているように、アメリカは、「米国市民の財産権を守るのと同じように外国人の財産権も守る。だからこそこの国に多くの資本をひきつけている。」

 これまで日本は開かれた国になる気がまったくなく、それでやっていけたけど、これからはきっとこのままでは存在できなくなるでしょう。アイン・ランドのように自由の思想を吹き込む思想家が日本には必要ないのでしょうか?以前彼女について書いたページはこちら。→黒犬通信(2006年8月1日)