保険料の60%が手数料

先週だったでしょうか、主要各紙に、ネットで生命保険を販売するベンチャー企業、ライフネット生命の一面広告がでていました。この会社の社長は、日本生命の国際業務部長まで務めた出口治さんという方です。5月12日号の日経ビジネスに、「営業員ゼロ、ネット生保始動」という記事があります。この記事によると、われわれが払っている保険料のうち60%前後が手数料ということです。日本の生保は給料よし、商品は規制されているので各社間で十分な差別化なし、つまるところセールスの女性たちの活躍によっているところが大です。業界全体がもっと効率化され、保険料が半分くらいになってくれることを期待しています。

「白馬の王子」広告

Photo先日電通通りで見かけた「白馬の王子」広告、東京駅地下でも発見。こちらのコピーは、「白馬に乗った王子様は、話題の再開発ビルにも、あんまりいない」。出会い系サイトの広告ですが、渋谷、新宿、六本木などの都内主要盛り場には、出しているのではないかと想像しています。

『理解されないビジネスモデル-消費者金融』(時事通信社)

あまり普通の人は読まない本かもしれません。ただ、日本社会の病理を理解するには、この業界のことを理解しておく必要があると思います。先日ご紹介した、『反貧困』(岩波新書)とも関連してきます。(もうひとつ、理解すべき業界の一つとして、パチンコ業界もあります。)

この本は、貸金業法の改正に関して、消費者金融業界の人たちの意見や反省を集めたものです。すべての業界には、光と陰があります。消費者金融ももちろん例外ではありません。それどころか、多重債務者問題のように、恐ろしいほどの陰が一部では存在しています。80年代後半のバブル時期大ベストセラーになった、漫画『ナニワ金融道』を読めば、ものすごい勉強になります(漫画を読まない僕ですが、この作品は全巻読みました)。

もうひとつ、面白い話がこの本にあります。貸金業法の改正にあたった金融庁の担当の方が、インタビューにでています。借り手のリテラシーの低さが、多重債務者を生んでいる背景にあるとされています。ご自身も、2%の金利でも、長期の住宅ローンの返済において、奥様から指摘されるまで、金利負担の大きさをよく考えていなかったというお話をされています。ある意味、監督にあたる役人の方々が、金利感覚をお持ちになられていない、あるいは実務に基づいた感覚をお持ちではないことが、滑稽であると同時に、恐ろしいことだと思いました。(株式投資をやらない方が、証券ビジネスの監督にあたることと同じように。) 頭のいい人たちであればあるほど、現場の感覚が大切ですから。

アオテンストアby amazonに、黒犬通信で取り上げた本をまとめてあります。

イベントの日米比較

午後、1時間ほど、東京ビッグサイトで行われているIT関連のイベントをのぞいてきました。

日米でビジネスのやり方の違いを感じるものに、このイベントがあります。アメリカのイベント経験は限られていますが、イベント業を商売にしている人の話もあわせると、以下のような違いがあるように思います。

1 日本は知らない人同士の間の会話、コミュニケーションズがあまりうまくない。出展側も、参加者側にも共通して言える。
2 イベント会場で、商談が進むのが、欧米。日本はあまり商談がすすまない。理由は、来ている人間が、その場で話をすすめる権限を持っておらず、本社で構えているおえらいさんたちには最新の知識も少なく、稟議書にはんこを押すプロセスに時間がかかる。(そういうことで、日本のイベントに参加した欧米企業は、失望するところが結構あるということを聞いたことがあります)
3 コンパニオンのお姐さんたちの存在。コスプレに近いものがある日本のコンパニオン。モーターショーならいざ知らず、IT系のイベントでもたくさん見かけます。Web2.0 Expoなどでは、まったくいません。社員がTシャツ着ているだけです。
4 日本のイベントは、いたるところで、でかい声を上げている。電車の中の、うるさいアナウンスメントを思い出します。
5 無理にパンフレットを押し付けてくるし、役にも立たないグッズをあげるから、名刺を残していけという。アメリカのイベントもグッズをくれますが、名刺をくれないとあげない、というようなことはあまりないように思います。

 日本のイベントは形式的な要素がより強くあって、アメリカのイベントは、より単刀直入に、ビジネス指向が強い。そんな感じがします。

工場現場でのKYとは?

先週高知でお会いした元川崎製鉄(今のJFE)から退職された初老の方いわく、「工場現場ではKYと言えば、危険予知(Kiken Yochi)のことだった。いったい、いつから正反対の意味=空気が読めない、になったものやら」。

福山、京都、浜松

昨晩夕食をご一緒した、福山のベンチャー企業の方からお聞きしたこと。福山、京都、浜松は、日本のユニークなベンチャー企業発祥の地だとか。京都、浜松は知っていましたが、福山もそうだとは、お話をお聞きするまで、知りませんでした。人口あたりの上場企業の数が、日本でも有数だとか。山、海も比較的近い位置にあり、自然に近いということですので、一度、行ってみたいところになりました。

(男からすると)せつないサイト

別れたボーイフレンドにもらったジュエリーのオークションサイト。日本にはコメ兵があるから、必要ないかな。

http://www.exboyfriendjewelry.com/

仕様書の話_辻井喬・堤清二回顧録「叙情と闘争」から

 読売新聞土曜版の朝刊に連載されている、堤さんの回顧録。毎週楽しみに読んでいる読み物のひとつです。5月10日で16回目になりました。

 ビジネス、文学、複雑な人間関係が織りなす、お話が続いています。西武百貨店の再建にあたる堤さんのお話の中で、70年代、政財界の重鎮のひとりだった桜田武の以下のようなコメントが紹介されています。

「清二君、シアーズ・ローバックというアメリカの百貨店を知っているか」。「いや、大した会社だ。きちっと仕様書を作ってね、こういった布をこの値段で製造して欲しい、その場合には何万フィートは買い取る、と言ってくる。そして間違いなく実行するんだ。小売業もあそこまで行けば製造業をリードできる。」

 ものづくりを行っている人たちは、この仕様書を作ることに優れています。それに対して、目に見えないもの=サービスを作っているソフトウェアの分野では、往々にして、この仕様書作りに十分な時間と知恵をかけていないように思います。

 スピードは大切なのですが、「急ぎの仕事だから、ゆっくりやってくれ!」ということが、実は前提にならないとだめだと思います。

経産省による「ベンチャー失敗学」

ベンチャー企業がなぜ失敗したのか。経産省がまとめた失敗学、「ベンチャー企業の経営危機データベース」。

経産省

『会社の値段』(森生明著、ちくま新書)

 やさしい言葉で、会社の価値や企業統治に関して、考えるヒントを提示してくれている本です。書かれたのは、2005年末のようですが、この本のなかで提示されている著者の意見や疑問は数年後の今も日本の現状には当てはまります。

 

 例えば、普段なにげなく使っている、「企業価値」と「株主価値」の違いを説明できる人、これらについて、自分なりの考えを持っている人がどれだけいるでしょうか?  著者の指摘の通り、日本で使われる「企業価値」は漠然と使われています。「株主価値」のように、数字で明確に示しうるものではないように思えます。そのあいまいさの陰に日本の経営者たちは逃げ隠れ、株価で表される企業の価値を上げていく努力を怠ってきたと言えます。隠れた価値を見つけだし、安く買い高く売ろうとする「ハゲタカファンド」に対する感情的反発からは、自信のなさと努力不足をそのままにした「嫉妬」を感じます。

 

 先日、外資企業が、本国の株式を使いながら、日本にある子会社を通して日本企業を買収する、いわゆる三角合併は、法律で可能になって以来、まだ一件しか成立していないという記事を読みました。日本の資本市場の閉鎖性の一例でしょうか。