神経経済学-日経新聞「経済教室」から

12月26日の日経新聞「経済教室」で、フランス・ヴァン・ヴィンデン(アムステルダム大学教授)という方が、神経経済学という行動経済学の新しい分野について簡単な紹介文章を書かれていました。人間の決断や選択に、感情に関係した脳の領域が関係していることに注目して、人間の非合理的な経済行動を解明しようとする学問領域だそうです。

 新聞で紹介された短い文章では詳細を知るには限界がありますが、いくつかおもしろいコメントがありました。たとえば、以下のような文章です。

-現在私が取り組んでいる最も重要だと思う研究は、社会的きずな(人間と人間の結び付き)をテーマとした研究だ。

-我々の立場でいえば、社会的なきずなとは、相互作用を通じて人々がほとんど無意識に投資したストック変数であるとみなすことができる。

-社会的なきずながあるからこそ人間の選好が内生的になり、社会的な結束は外部からの影響に打ちかつ手段になりうると推測できる。そうだとすれば、例えば労働市場の流動性の増大は、感情で結ばれた社会的なネットワークを断ち切りかねないという意味で、幸福に影響をおよぼす可能性がある。

 社会的なきずな、インターネットにおけるコミュニティ、日本企業と社員の関係。関連しあう、おもしろいテーマだと思います。

マイケル・ジャンセン

定期的に読んでいるブログ(「池田信夫blog」)で、ハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・ジャンセン名誉教授の名前を見ました。(→こちら) 僕がハーバード・ビジネス・スクール在籍中の85-87年には、他の大学から移籍されてきたばかりで、授業を取ることもありませんでしたが、その頃の僕は、この先生がテーマにしている今のはやりの言葉で言うところの、コーポレート・ガバナンスとファイナンスの問題について、あまり関心を持っていませんでした。

 実はこの先生が書かれてきたテーマこそ、今の日本で読まれるべきなのではないかと強く思います。企業は誰のものか、企業経営者の責任、企業価値の最大化など。ところがアマゾンでチェックすると、先生の論文は日本語にはまったく翻訳されていません。Theory of the Firm: Governance, Residual Claims, and Organizational Formsなど、どこかの出版社で翻訳して出してくれないものでしょうか?

ガラパゴス現象

野村総合研究所(NRI)コンサルティング事業本部 情報通信・金融戦略担当部長の吉川尚宏氏による日本に対する警鐘。(→講演概要) 敗戦後から90代後半までの成長期の約40年間でためた国力を、すこしずつ使い果たしているのが現在の状況だというのが僕の見方。バブル崩壊後の「失われた10年」は最悪の状況どころか、まだまだ余裕のある段階なのではないかと思っています。

 あと10年か、20年かの間にじわじわと疲弊していきながら、完全に底をついて食っていけなくなるまで「ゆとり教育」と「ゆとり生活」を変えないのか?それとも、底をつく前に、ハングリー精神を取り戻すのか?

 国外に売っていくことができる商品やサービスを生み出す力、売っていく力を持つ企業がどれだけ日本からでてくるのか?任天堂、トヨタなどの一部企業群だけでは、到底1億人を今の水準で食わせていくことはできないでしょうから。

 日本国内での格差問題を言う前に、日本が世界経済の格差問題の中で、負け組みに入りつつあるのではないかということに目を向けてもらいたいです。大きな枠の中で負け組みに入っているようでは、国内の格差問題(そのような問題が存在するとして)の解決はますます困難になっていきますから。

市場が教えてくれること

 これまでビジネスを行ってきてよかったなと思うことがいくつかあります。その一つは、市場が教えてくれることです。それは、すべてのビジネスは変化していくこと、それに対応して変わっていくことができる人や組織(役所や国家もこの組織に含まれます)だけがサバイブできるということ。今年はアメリカ発のサブプライム問題が、後半に入って経済に大きな影響を与えています。きっと来年もこの影響は続くことと思います。(先週夕食をしたファンドを運用している会社の社長からも、今年は苦労が多かったというようなことを聞きました)ずっとバブルだと言われながら続いてきたアメリカの不動産ビジネスの活況にも、来るべきものが来て、永遠に続くお祭りなんてないことを忘れていた人間だけが大騒ぎをしているということかもしれません。
 われわれ日本人が大好きな平家物語も、この世に不変のものがないことを教えてくれています。松尾芭蕉の「奥の細道」も、同様です。ところが、特定の状況に慣れ親しんでしまうと、いつの間にか、それがずっと続いていくもののように錯覚してしまうのが、われわれ人間の情けないところで、会社の売上げにしても、給料にしても、あるいは土地や株の値段にしても、ずっと右上がりで続いてくれるものだと勘違いしてしまうことがよくあります。

 でも、市場は勘違いしているわれわれにお灸をすえるかのごとく、突然背中を見せて去っていくことがあります。そんな時、僕らは「え、そんな馬鹿な!」って反応で、市場の「理不尽さ」に腹を立ててしまうのですが、しばらくして落ち着いてくると、自分の過ちに気づき、そして市場の変化を受入れていく人と、頭ではわかっているけれども、どうしても市場からのメッセージを受け入れることができない人に分かれていきます。少なくとも僕が生きている間には再び来ることがないであろう、80年代後半から90年代前半にかけての日本経済のバブルとその崩壊を、20代から30代にかけて経験したことが、少々大げさな言い方になりますが、世のはかなさを教えてくれました。その頃、金融市場において働くことができたことを感謝しています。

 基本的に失業の恐れのない公務員の人たちと話をしていて、ある意味気の毒に思うことは、彼らが市場の厳しさも、素晴らしさも知らないということです。僕はマクロ的に見たときには、失業や倒産があることは決して悪いことではないと思っています。もちろん、長期にわたって失業しているケースは別です。失業や倒産が、われわれ働くものたちにとって、どれだけ精神的、経済的にダメージになりうるのか、それを考えると、ミクロ的にはたいへん大きな問題です。

でも、恐れを忘れ、謙虚さを失った時、市場がそのような人間や会社に対して与える教訓が、失業や倒産という形をとるのであれば、マクロ的に見たときには、決してマイナスのことばかりではないと思います。

 僕の会社も、あるいは僕個人も、同じところに留まることのないこの世の中で、市場の声に耳をすませながら、自分たちが(少しずつでも)変わっていくことができれば、きっとその変わっていく自分たちの努力を、市場は見捨てることはないだろうと、楽観的な僕は信じています。

ネットで自動車保険を買う

初めてネットで外資系保険会社の商品を買いました。これまでは、自動車ディーラーから継続的に保険を買ってきたのですが、それは面倒臭くて、惰性にまかせたままになっていたからです。

知り合いにこのことを話しました。彼もある日本の損保の代理店になっています。ところが自分の家族の自動車保険は、今回僕が買った保険会社の保険を買っているとか!値段が理由です。

同席していた別の知人は、「事故が起こったとき、外資系はきちんと対応してくれるのだろうか?」。これだけは起こってみないとわからないです。

やってみるからやる気が出てくる?!

Dscf1166 無精なこともあって、あまりお掃除が得意でないのですが、無理にでも掃除をしてみると、すっきりしてきて、ちょっとうれしくなってきます。それがお掃除をもっとすることにつながっていきます。

最近、「やる気があるからやる」ではなく、「やってみるからやる気が出る」というのが、案外正しいのではないかと思うことがあります。上の掃除の例もそのひとつです。仕事もとにかくまず行動に移してやってみることが必要だと思います。

経済の話ですが、「経済のファンダメンタルがいいので、カネが流れてくる」ということだけでなく、「カネが流れてくることによって経済のファンダメンタルがよくなる」ということも実際起こります。今の日本で、海外、特に中東の石油産出国からお金を呼び込むのが大切だという話を、今夜、金融界の人と食事の席で交わしました。

先週末訪れたマカオは、まさにカネが人とさらなるカネを吸い集め、経済が過熱気味なほど成長している状況です。写真はマカオタワーから見た市内の風景。

人間関係のメインテナンスコスト

アメリカの経営者の話を聞いていても、必ずしも長時間働いているというわけではなく、朝早く(たとえば、7時とか、7時半とか)出社、6時には帰宅、なんて人が多いようです。翻って、なぜ、こんなに日本のビジネスマンは、長時間、会社に拘束されているのでしょうか?どうも社内、社外の人間関係の(時間的な)メインテナンスコストが高いように思えてなりません。

問題解決の手段は、「飲みコミュニケーション」という人が多いようです。人間関係はビジネスの基本。でも、飲みコミュニケーションは、あくまで潤滑油で、本質的な問題解決にはなりえない。「商品開発であり、マーケティングであり、技術開発であり、もっと自分の頭でしっかり考える時間を作っていかないといけないね。」そんなことを、某社のCIOの方と話しながら、おいしい食事をごいっしょさせていただきました。

「24時間戦えますか?!」

バブルのピーク時に流行ったリゲインのCMコピーが、これ。時任三郎がでていたと記憶しています。今月連載中の、田淵節也元野村證券会長の「私の履歴書」を読んでいると、まさにこの「24時間戦えますか?」を彷彿させます。いくら仕事が好きとはいえ、毎晩宴会を済ませてまた会社に帰り、11時過ぎに田淵さんの家に立ち寄って、翌日の営業戦略を話して家路に着いていた豊田善一さん(元・野村證券副社長、その後国際証券社長)なんて、このCMそのもの。

今、このCMを生きているのは、トヨタのひとたちかな?

追伸 このCMに関して、懐かしんでいるひとたちが結構僕の周りでもいますし、ネットでもこんなページがありました。CMソングの歌詞もネットで見ることができます。懐かしい。でも今これを読んで多くの人はどう感じるのでしょうか?

「ニッポンIT業界絶望論」

先日書いた「若い人に人気のない産業は衰退する」に関連する記事。コメントの多いこと。

ニッポンIT業界絶望論

自己否定の可能性

お世話になっている先輩ビジネスマンから、企業の成功に関して、自己否定ができるかどうかということについて、以下のようなコメントをいただきました。

  • 「マイクロソフトやアップルの成功の元になっているのは、自分たちの技術や業績、成功を常に疑い、否定し続けてきたことにあるような気がしています。」

自己否定を恐れず、自分を革新していくこと。難しいけど、これを続けていくしか、企業も個人もないのかなと思います。