「会社は頭から腐る」(冨山和彦著)

グロービスのカンファランスでお話をお聞きする機会があり、その後立ち話をしたこともあり、せっかくなので、著書を拝読。今年読んだビジネス書の中で一番歯ごたえもあり、また著者の熱意も感じた本でした。僕は、会社の存在意義を問い続けることは、自分の生きる理由を問い続けることと同じだと思っています。それ以外にも、冨山さんと考えをともにする点が多かったので、僕はとても共感を持って読み終えました。

『会社の品格』(小笹芳央著)

人材コンサルティングで成功している会社社長の本。「品格」という言葉は、流行り言葉になっていますが、本当に品格を重んじるのであれば、この言葉を軽々しく使っていいのだろうかと思います。が、近々、IPOを控えている会社としては、この本の出版もひとつのIR活動でしょうか?

内容にも、本のタイトルに沿わない箇所があります。たとえば、「今のような変化のスピードの激しい時代にふさわしいのは、『変革』『創造』『一攫千金』といったキーワードです」(135ページ)。一攫千金と品格。ちょっと相並ぶのは、難しい気がします。

と、同時に、いくつも著者に同意する点がありました。仕事に使命感を持たせること、どの会社でも通用する普遍的なスキルを身につけるべきであること、辞めにくい会社から辞めやすい会社に変るべきこと(年功序列や退職金などの制度で、社員を長く引き止めるような仕組みをやめる)、正解があった社会から正解を創り出す社会に変らないといけないこと、など。

また、同じ売上げや利益を、100人で出している会社と1000人で出している会社を比較したとき、株式市場では当然のことながら、前者をより高く評価するわけですが、多くの雇用を生み出しているという意味で後者ももっと評価していいのではないかという意見にも共感する点があります。著者の会社がIPOしたあと、株式市場が同じような目で著者の会社を見てくれるのかどうか、それにも関心があります。

「辞める選択もあったけど、結局(この会社に)30年いた」というのが理想だと、著者は何度か繰り返しています。男女関係と同じようなものでしょうか?「山あり、谷ありだったけど、ずっと一緒だったね!」という感じで。

冬のサイクリング

朝8時から荒川沿いの土手で、お取引先のKさん、オデッセイ社員のHさんのふたりと、2時間ほどのサイクリング。風がどれだけサイクリングを左右するのか感じる一日でした。川を上っていくときは風のせいでまったくスピードがでないのですが、下りはスムーズでまた風が吹いていることさえも感じないほど。

午後は、秋葉原であった毎日パソコン入力コンテストの表彰式に参加。オデッセイでも入力コンテストの優秀者、優秀校に、商品をご提供しています。

行き返りの電車で雑誌「Voice」(PHP発刊)を読む。鶴見俊輔が、50年前、上坂冬子に言った言葉が、「自分の思想に忠実に生きなさい」。テレビや雑誌で見る上坂さんの発言には、あまり感心しないのですが、1959年に「思想の科学」新人賞を受賞した「職場の群像」は読んでみたいと思いました。鶴見さんが発掘した上坂さんは、鶴見さんとは思想的にはまったく対立する立場にありますが、おふたりの会話はおもしろく読めました。これと、一橋大学の伊丹先生のエッセイ(「哲学なき経営者の危機」)もうなずきながら読みました。哲学もなく、挫折することもない無難な経営者(それは企業だけでなく、国家の経営者である総理大臣も含めてかもしれません)を選択し続けた結果、「目に見えるような挫折は起きないかもしれないが、その背後でより大きなものが隠微に失われている危険がかなりある」、「時には目に見える挫折が起きかねない挑戦をしないことの貧しさを、われわれは憂えるべきではないのか。」

100 Great Businesses And The Minds Behind Them

邦訳タイトルは、「100 Inc.」。オーストラリアのジャーナリスト、エミリー・ロスとアンガス・ホランドによる「世界の100の偉大な企業とそれを作った企業家」を紹介してくれる本。日本企業、あるいは日本人による会社で取り上げられているのは、ソニー、ノブ(料理)、任天堂、ユニクロ、ヤクルトの5社。僕が愛用している商品を作っている会社としては、ダイソン、ケロッグ、ポスト・イット、ケイト・スペード、コカ・コーラ、ギャップ、サムソン、アディダス、スターバックス、アマゾン、マイクロソフ、マクドナルド、デル、ナイキ、リーバイス、アップル、グーグル、アレッシィなどが含まれています。

著者たちの前書きの終わりには、「現代の億万長者の多くが、生まれついてのリーダーだったわけでもなければ、成績抜群のセールスパーソンだったわけでもない。むしろ彼らの真骨頂は、リスクに立ち向かい、片腕になってくれる優秀な人物を的確に雇い入れ、成功するために身に着けなければならない能力をよく見きわめていたことにある。チャンスが訪れるその足音を聞き分けるのだ。」「偉大な企業の数だけ、ビジネスで成功をおさめる道筋もまた存在する」とあります。僕らの時代の「偉大な企業」を知るには、手っ取り早い1冊。

「理系思考」(元村有希子著)

本の帯の、「エース記者がおくる人気の新聞コラム」に引かれて買ったら、読んだことがある『理系白書』の著者であることが判明。

この本の中に、経営にも大いに関連するおもしろい話がありました。「ある金融機関でバブル期に入社した社員の『その後』を追跡したら、全体の一割ほどしかいない理系出身者が、人事考課で上位に集中していた」とか。科学を勉強した経験は、ビジネスにもいきるということか。

『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』、そして「バベル」(DVD)

知り合いと村上春樹の話をしていて、「ずっと前、『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』を読み終えたあと、翌朝までずっと泣いていた」という話を聞き、買ったままで手をつけていなかったこの本を読み始めました。それだけの感動を与えた作品よりも、それだけの感動を覚えた知人の感受性に、興味を持ちました。

昨日は、11月2日に発売になったばかりの映画『バベル』のDVDを買いました。

数回、この映画のことを書いたのですが、菊池凛子は、この映画一本で、世界の多くの人たちの記憶に残る仕事をしたと思います。

英文で読む村上春樹のインタビュー

先月、村上春樹のエッセイ『走ることについて語るとき』のことを、2度書いたら(メモった程度です)、村上春樹、あるいは本のタイトルとの組み合わせで、黒犬通信にいらっしゃる方たちが大勢いて、村上春樹の人気の高さを感じます。

日本での村上春樹の顔だけでなく、海外、特にアメリカでの村上春樹自身の発言を読むと(もちろん、英文で、ということになりますが)、日本であまり知られていない村上春樹を知ることが出来るのではないかと思います。僕の印象では、日本の村上春樹ファンの多くが、村上春樹は政治にあまり関心を持たない、非政治的な作家としている人が多いように思うのですが、間違いでしょうか?ところが、アメリカの雑誌などでの村上春樹の発言は、日本人の歴史認識(あるいは日本人の歴史忘却)に関しても、及んでいることが多々あります。

数ヶ月前になりますが、文芸誌『文学界』(「ガク」という字は、本当は、旧漢字です)という、昔はよく買っていた雑誌の7月号で、「村上春樹の知られざる顔」という文章がでています。海外雑誌などのインタビューに答えた村上春樹の発言をたどっていったもので、日本の雑誌では読めない村上を知ることができます。このエッセイの終わりに、引用元が掲載されていますので、英文で読んでみるとおもしろいかもしれません。僕自身は、海外での村上春樹の発言を、どちらかと言うと、好意的に読んでいます。

ちなみに、グーグルで、"haruki murakami" interview と単純に検索しただけでも、結構の数のインタビュー記事がでてきます。

「反骨のコツ」(朝日新書)

1913年生まれ、今年93歳になる元・最高裁判事であり、日本の刑事訴訟法の大家である團藤重光と、65年生まれで、音楽家でもあり、東大大学院情報学環准教授でもある伊藤乾(「東大式絶対情報学」著者)の対談。團藤先生が熱心な死刑廃止論者であることを知りました。陽明学を支えとする先生が、勧める反骨のコツ。法学部でありながら、まじめに法律を勉強しなかった僕が、今頃、團藤先生の本を買うなんて、夢にも思っていなかったです。

なお、以下のブログには、東大式絶対情報学の読者ブログに、著者の伊藤氏からのコメントが届き、こういう形で、著者と読者が結びつきうるのかと、おもしろく拝見しました。→40代真面目気分

「暴走老人!」(藤原智美著)

10月8日号の日経ビジネス(「著者に聞く」のコーナー)で、ノンフィクション作家・藤原智美さんの話しを読みました。

今の世の中、老人にとって暮らしにくい社会になっている。それはITを使いこなせているかどうかが原因のひとつだ。携帯電話やパソコンは単なる便利な道具ではなく、生活の基盤になりつつあり、この事態に対応できない老人は焦りを抱えているのではないか?情報難民となっていることが、老人の暴走につながっている。こういう趣旨のお話でした。

老人がITを使えること、あるいは老人にも使えるITであること。子供や学生だけにとってのITリテラシーではなく、老人にとってこそ、ITリテラシーは切実な話しだとあらためて思いました。

「NYブックピープル物語」

副題は、「ベストセラーたちと私の4000日」。講談社アメリカの社長として、活躍された浅川港さんの、アメリカの出版界における奮闘記。一橋大学の卒業生で、出版の世界でこのような活躍をされている方を知って、驚きました。アメリカの出版ビジネスのことも勉強になりました。

ところで、名前にNTTとある会社は、イノベーションとは遠い、官僚的な組織が多い印象がありますが、この本の出版元であるNTT出版は、とてもおもしろい、イノベーティブな内容の本をたくさん出しています。先週アマゾンで買った、池上英子著「名誉と順応(サムライ精神の歴史社会学)」も、NTT出版の本です。