『ビジネスに「戦略」なんていらない」(平川克美著、洋泉社刊)

 実際に会社を経営されてきた「実務家」の書かれた本。論を深めるという点では、不満に思う読者も多いかもしれませんが、机上の空論とは違い、実体験から生まれた考えが書かれています。僕も共感する点が多い本です。

 友人に内田樹(神戸女学院大学教授、「私家版・ユダヤ文化論」で小林秀雄賞受賞)がいて、彼との対談もこの本には含まれています。内容は、大きな視点からビジネスをとらえ、人間の営みとしてのビジネスのおもしろさを説いています。ビジネスの始まりには、「交換」=コミュニケーションがあること、モノであれ言葉であれ、交換過程のはじめにあるのが「与える」ということ、それに対する返礼、反対給付が続いていくことがコミュニケーションの基本であること。さらに、ビジネスにおいて交換されるものはモノやサービスとお金であり、さらに、技術や誠意といったものが満足や信用といったものと交換されていること。その二重の交換が、ビジネスであることを熱心に説いています。
 大学生の頃読んだ文化人類学、経済人類学の本を思い出させてくれました。会社の経営者は、顧客や社員などの「ステークホールダー」と、商品やメッセージ(言葉)を通して対話を進めていかないといけないこと、対話そのものが実はビジネスの大きな目的であり、その中にいきがいや、やりがい、あるいは自己実現といったものが見つけられるのではないかと思いながら、本を閉じました。

アオテンストア

日本には新幹線がある

 朝から名古屋に行って、小社のパートナー企業として試験の実施にご支援いただいているPCスクールや派遣会社を訪問。日ごろのご愛顧、ありがとうございます。10年ほど前、某・派遣会社に新入社員として入社されたばかりの頃、一度お目にかかった方が、現在では人材開発部の次長というポジションに立たれていて、時のたつことを実感。

 ところで、いつも感じているのですが、日本の新幹線はすごいと思います。スピード、正確さ、時間厳守、安定性、こんな乗り物は世界中探してもありませんよ。名古屋にトヨタがあって、名古屋経済を支え、さらには日本経済もかなりの部分でささえているわけですが、「トヨタイズム」が一つの基準として、日本のビジネスの模範とあることの意味は大きいと思います。

 同様に、日本の新幹線は、僕はビジネスのひとつのベンチマークだなと思っています。この新幹線の正確さやスピードが、僕らが社会に期待するもの、社会に自分たちが提供しないといけないものの、ひとつの基準になっていて、それが故に、日本の社会はまだある程度の規律をもって動いているのではないかとさえ、思うのです。

 新幹線があてにならない存在になったとき、きちんとしたオペレーションが崩れたとき、その時こそ、日本経済は終わっているはずです。

久しぶりに出会った、イノベーション商品

 Riseandmuller

同じ勉強会の方がお持ちの自転車です。このコンパクトな、折りたたみ式の自転車で、平地でも40キロ程度のスピードを出すことができるそうです。彼はホノルルセンチュリーライドをこの折り畳み式自転車で走ると言っています。

 ドイツのダルムシュタッド工科大学の学生だったふたりが1995年に発表した自転車。掃除機のダイソン以来、久しぶりに出会った画期的な商品です。社名は、ふたりの名前をとって、リーズ&ミューラー。(→会社のHP

 もうイノベーションなど起こりえないと思われている成熟産業(掃除機とか、自転車というような)で、このような画期的な商品を開発する発明家や起業家を尊敬します。

二分化する消費

アメリカの知り合いで、世界に家を何軒か持っていて、パリのオルセー美術館そばに持っているアパートのAVルームの改造費に、数千万円使ったという人がいます。アメリカにわたって成功した人です。(日本人ではありません) その人が持っているかどうか、知りませんが、以下のようなオーディオ商品があります。

 世界のオーディオファンに熱狂的に受け入れられているオーディオ分野のベンチャーが登場しているそうです。約2000万円ほどのスピーカーセット(!)を作っています。社名はアヴァンギャルド・アコースティック。日本では、TEACが代理店をやっているようです。(→TEACのHP

 世界の90%(適当な数字です)は数万円のiPod、10%弱はこれまでのオーディオセット、そしてほんの一握りは、われわれ平民の家と同じ桁の金額のオーディオセットを買うような人間がいるということでしょうか。2000万円のスピーカーセットを購入する人は、たぶん、同じくらいの金額のアンプやプレーヤーをそろえていて、数十億くらいする家に住んでいるということでしょうか?

 一度、このスピーカーから出る音を聴いてみたいです。(普段はiPodで音楽を聴いている黒犬!)

海外からのゲスト/タバコの話

 日曜日の夜から今日の午後まで、海外からのお客さんたちが6名。フィリッピン、シンガポール、マレーシア、オーストラリア(2名)、そしてインドからの6名の方たちと、今年勉強会を始めています。ビジネスマンとして、経営者として、悩みや楽しみには共通するものが多いものだと感心します。国境を越えて、ビジネスはビジネス。微妙なところでは違いがあり、時にはその微妙な違いが大きな意味を持つこともあると思いますが、でもビジネスはビジネス。だって、人間として、共通することの方が圧倒的に多いわけですから。今回の「東京ラウンド」のホスト役、ちょっと疲れました。初めて日本に来る複数の人たちのお世話はたいへん。ツアーコンダクターの方々のご苦労も想像できます。


 で、まったく違う話なのですが、ビルの中にあるタバコの自動販売機を久しぶりに注意してみました。タバコを全くすわないので、どうでもいいのですが、驚いたのは、健康に良くないという警告が正面に大きく出ていること。そして、キャメルのデザインはいいなということ。ガソリンやアルコールにかけられている税金は下げてもらいたいですが、タバコはもっと税金かけて1000円くらいにしてもらっても、大賛成!(喫煙家の皆さんには、申し訳ありません)

レーシック、顧客紹介で4万円

 先日、レーシック手術を受ける社員が増えていると書きました。
昼食時、社員から聞いた話です。ほとんどの社員が手術を受けていて、とても繁盛している某病院では、お客さんを紹介すると、紹介者に4万円支払ってくれるそうです。さらには、顧客が地方からくる場合には、交通費に1万円補助があるとか。
検査、アフターケアをあわせて、20万円弱の手術で、そのうち、顧客紹介と交通費のために、最大5万円まで払ってくれるということです。レーシック手術の利益率はかなりのものということでしょうか?

保険料の60%が手数料

先週だったでしょうか、主要各紙に、ネットで生命保険を販売するベンチャー企業、ライフネット生命の一面広告がでていました。この会社の社長は、日本生命の国際業務部長まで務めた出口治さんという方です。5月12日号の日経ビジネスに、「営業員ゼロ、ネット生保始動」という記事があります。この記事によると、われわれが払っている保険料のうち60%前後が手数料ということです。日本の生保は給料よし、商品は規制されているので各社間で十分な差別化なし、つまるところセールスの女性たちの活躍によっているところが大です。業界全体がもっと効率化され、保険料が半分くらいになってくれることを期待しています。

「白馬の王子」広告

Photo先日電通通りで見かけた「白馬の王子」広告、東京駅地下でも発見。こちらのコピーは、「白馬に乗った王子様は、話題の再開発ビルにも、あんまりいない」。出会い系サイトの広告ですが、渋谷、新宿、六本木などの都内主要盛り場には、出しているのではないかと想像しています。

『理解されないビジネスモデル-消費者金融』(時事通信社)

あまり普通の人は読まない本かもしれません。ただ、日本社会の病理を理解するには、この業界のことを理解しておく必要があると思います。先日ご紹介した、『反貧困』(岩波新書)とも関連してきます。(もうひとつ、理解すべき業界の一つとして、パチンコ業界もあります。)

この本は、貸金業法の改正に関して、消費者金融業界の人たちの意見や反省を集めたものです。すべての業界には、光と陰があります。消費者金融ももちろん例外ではありません。それどころか、多重債務者問題のように、恐ろしいほどの陰が一部では存在しています。80年代後半のバブル時期大ベストセラーになった、漫画『ナニワ金融道』を読めば、ものすごい勉強になります(漫画を読まない僕ですが、この作品は全巻読みました)。

もうひとつ、面白い話がこの本にあります。貸金業法の改正にあたった金融庁の担当の方が、インタビューにでています。借り手のリテラシーの低さが、多重債務者を生んでいる背景にあるとされています。ご自身も、2%の金利でも、長期の住宅ローンの返済において、奥様から指摘されるまで、金利負担の大きさをよく考えていなかったというお話をされています。ある意味、監督にあたる役人の方々が、金利感覚をお持ちになられていない、あるいは実務に基づいた感覚をお持ちではないことが、滑稽であると同時に、恐ろしいことだと思いました。(株式投資をやらない方が、証券ビジネスの監督にあたることと同じように。) 頭のいい人たちであればあるほど、現場の感覚が大切ですから。

アオテンストアby amazonに、黒犬通信で取り上げた本をまとめてあります。

イベントの日米比較

午後、1時間ほど、東京ビッグサイトで行われているIT関連のイベントをのぞいてきました。

日米でビジネスのやり方の違いを感じるものに、このイベントがあります。アメリカのイベント経験は限られていますが、イベント業を商売にしている人の話もあわせると、以下のような違いがあるように思います。

1 日本は知らない人同士の間の会話、コミュニケーションズがあまりうまくない。出展側も、参加者側にも共通して言える。
2 イベント会場で、商談が進むのが、欧米。日本はあまり商談がすすまない。理由は、来ている人間が、その場で話をすすめる権限を持っておらず、本社で構えているおえらいさんたちには最新の知識も少なく、稟議書にはんこを押すプロセスに時間がかかる。(そういうことで、日本のイベントに参加した欧米企業は、失望するところが結構あるということを聞いたことがあります)
3 コンパニオンのお姐さんたちの存在。コスプレに近いものがある日本のコンパニオン。モーターショーならいざ知らず、IT系のイベントでもたくさん見かけます。Web2.0 Expoなどでは、まったくいません。社員がTシャツ着ているだけです。
4 日本のイベントは、いたるところで、でかい声を上げている。電車の中の、うるさいアナウンスメントを思い出します。
5 無理にパンフレットを押し付けてくるし、役にも立たないグッズをあげるから、名刺を残していけという。アメリカのイベントもグッズをくれますが、名刺をくれないとあげない、というようなことはあまりないように思います。

 日本のイベントは形式的な要素がより強くあって、アメリカのイベントは、より単刀直入に、ビジネス指向が強い。そんな感じがします。