今日の日経新聞がおもしろかった。

今日から3月。2023年も六分の一を消化してしまいました。

今日の日経新聞はおもしろかった。
その1。先月は作曲家の村井邦彦さんが「私の履歴書」をお書きになっていた。30数年前になると思いますが、外資系金融で働いていた頃一度お昼をご一緒したことがあり、たいへん懐かしく「私の履歴書」を拝読。今日から始まったJR九州の唐池恒二さんの「私の履歴書」もおもしろくなりそう。
その2。経済ページの「大機小機」は黒田日銀総裁の「罪」を上げていた。市場や国民を見ないで安倍元総理を見て政策を決めていたことが失敗の原因だというご指摘。「失敗」とあるけけど、ぼくは「罪」と言った方が正しいのではないかと思う。
その3。FTからの翻訳記事が良かった。先日治療をもう行わないと発表したカーター元アメリカ大統領に関して、これまで正当な歴史的評価がなされていないという記事。執筆者は、FTの記者Edward Luce。2月23日のFTにでていた記事ということで、そちらの記事も読んでみた。このような記事の日本語訳を掲載できるだけでも日経新聞はFTを買収して良かったのではないかと思う。
その4。今日から始まった連載小説は陸奥宗光の青春を描いたものになるという。いま日本外交に陸奥宗光のような人物がいないことが残念だ。どのような展開になるのかとても楽しみ。新聞の連載小説などこの10数年読んだ記憶がないけど、久しぶりに読んでみようと思う。

「オーラル・ヒストリー」をめぐる攻防_御厨先生に噛み付いた輿那嶺先生

今朝の朝日新聞の文化・文芸ページで、オーラル・ヒストリー(引退後の政治家や官僚からの聞き取りをもとに現代史を叙述する方法論)をめぐっての対立があった。本人たちがそれをどれだけ自覚していたのかはわからないけど、きっと異議というか、その方法論の問題点を指摘した側は意識して異議を唱えたに違いないと思うし、新聞社側もわかった上でこの異議を掲載したに違いない。
「語る_人生の贈りもの」というちょっとした「私の履歴書」的なコーナーがあって、そこに政治学者の御厨貴先生が今日でシリーズ15回目になる話を掲載されていた。今日は、平成天皇の生前退位をめぐる天皇と政治家(官邸)の対立の話だったのだけど、御厨先生こと、このオーラル・ヒストリーという手法の「大家」。
これに「異議」を唱えるというか、問題点を指摘したのが、輿那嶺潤という「若手」(になるのかな?)政治学者。かれは毎週木曜日に「歴史なき時代」という題でエッセイを書いている。今日はオーラル・ヒストリーという手法が、政権を批判する学者に、権力者が引退後聞き書きの機会を与えるはずがなく、権力者が現役の間は(たとえ適切であろうと)厳しい論評を控えることになってしまうだろう(その結果、今若い政治学者に元気がないという状況が発生している)、またオーラル・ヒストリーの手法は国内政治には可能であったとしても国際政治には無理だろう、なぜなら中国や北朝鮮の権力者たちが聞き書きの機会を与えてくれるはずもなく、結局日本側の交渉当事者の一方的な話しか聞き取ることはできないだろうから、というものだ。
この二つともオーラル・ヒストリーという手法の限界を適切に示しているように思うのだけど、当の御厨先生はどのような反応を示されるのだろうか?それとも若手学者の戯言として無視するだけなのか。
それにしても御厨先生が語る自身の「オーラル・ヒストリー」と同じページに、その方法論の課題を(わかった上で)示している輿那嶺先生の心意気はよしとして良いのではないかと思うし、できれば御厨先生からの反論もお聞きしてみたいものだ。

『ワンルーム・ミュージック』

MCの前山田健一のことも、岡崎体育のことも、名前さえも知らなかったけど、タイトルにひかれて録画していたNHKのEテレの番組。
録画した後に見たら、とてもおもしろかった。二人とも楽譜が読めない音楽家で、後編の番組で紹介されたゲストの眉村ちあきも楽譜が読めない音楽家。
この人たちって、デジタルネイティブの若者なんだなと思って、俗に言うデジタルネイティブの若者のことがちょっとだけわかったような気がした。
音楽理論も勉強したことがなく、感性だけで音楽を作っている彼らが10年後、いや5年後にも音楽が作れているのかどうか?
眉村ちあきは、アップルのGarage Band で曲をつくっていて、その風景が番組内で紹介されていて、これもおもしろかった。
ぼくは彼らの音楽がそれほどおもしろいとか、いいとは思わなかったけど、若い人たちからの支持があるのだとしたら、それがいまの時代の一側面なんだろうな。
NHKのEテレって、ほんとにおもしろい番組をときどきやっているね。
NHK『ワンルーム・ミュージック』

有料会員へのdis-service

Financial Times は紙とデジタル版を、Economistはデジタル版を購読しています。どちらも有料会員。ちゃんとお金を払っています。ただ、有料会員が記事を読むときにも広告が頻繁にでてくることにいつも憤慨しています。日本のメディアも有料会員であったとしても広告をバンバン出していると想像しますが、メディア側にはちょっと考えてもらいたい。
Sportifyに入ろうかどうしようか考えています。有料会員になると広告に煩わされることなく音楽を楽しむことができるということをうたっているようです。YouTubeでも同じようなメッセージを有料会員になることの誘い水にしています。

有料会員=優良会員という見方があるのかもしれません。金を払ってでもきちんと記事を読んでくれている人たち、ということで。でもカネを払ってでもコンテンツを読んでくれている人たちに気持ちよく記事を読んでもらう環境を作らないようだと、永遠にお客さんがいるなんてタカをくくらないほうがいいのでは?
ぼくもEconomistのデジタル版をカネを払ってまで購読するのはやめようかどうしようかと考えています。

名医の条件

録画しているBBCのHARD Talkを見た。数日前の放送に世界的な心臓外科医のSamer Nashefがでていた。
手術が成功するためには手先の器用さなんかよりも、観察力、構想力、的確な意思決定が重要だと。まったく同じことを日本のある有名な先生からもお聞きしたことがある。手先の器用さとか、「神の手」というような表現を、多くの日本人は好きなんだろうか?そういう言い方をしている限り、「職人芸」の域を超えた、たいせつなポイントを見ることはできないようになってしまうと思うのだけど。

この心臓外科医も自身の心臓に問題があることが判明して、同僚に治療してもらったそうだ。自分自身が患者となって初めて患者の気持ちがわかるようになったとも言っていた。徒然草にも、持ちたくないのがずっと健康な友人、なぜなら彼らは病人の気持ちがわからないから、というような記述があったように記憶している。名医の条件には自分自身が一度病気をしてみることというのも入るのかもしれない。
BBC Hard Talk

NHK Eテレがおもしろい。

「みつかるEテレ!」のミッツ・カール君のイラストがとてもセンスがいいと思う、NHKのEテレがいい番組をやっている。今週末、録画していた番組をまとめてみたんだけど、どれもすばらしい内容だった。感心したのは以下の4番組。
 -「カキと森と長靴と」

 -「トムとジェリーのくるみ割り人形」

 -「写真は小さな声である ユージンスミスの水俣」

 -「Switch インタビュー 服部文祥と井浦新」

「カキと森と長靴と」を見て気仙沼に行ってみたくなったあと、「ユージンスミス」を見ると水俣に行ったみたくなった。
トムとジェリーも相変わらずのドタバタなんだけど、くるみ割り人形ファンとしては、とても楽しかった。
服部文祥さんには、10年ほど前だろうか、「オデッセイマガジン」にでていただいたことがあり、ずっと彼の活動には関心を持っている。顔つきは厳しくなり(ボクシングの村田を連想してしまった)、彼の思想も深まっていくように思う。

シッダールタ・ムカジー(チャーリー・ローズのインタビュー番組にて)

『病の皇帝』の著者が出演しているPBSのテレビ番組から。
2010年以降7回の出演。

https://charlierose.com/guests/4110

5歳の女の子に叱ってほしい大人たち

7月最終週から一週間ほど、アメリカに行ってました。昨年はどうしても離れることができない理由があって欠席したMOS世界学生大会に参加するため、ニューヨーク経由でフロリダのオーランドに。東京もメチャクチャの猛暑だったので、いつもならうんざりする夏のフロリダも快適だった。今年は4名の学生を派遣。そのうち、船橋情報ビジネス専門学校の学生、大野君がエクセル2016の部門で2位入賞。残り3名の大学生たちは、残念ながらいい結果を残すことができず、大野君が専門学校生の「意地」を発揮した結果になりました。

ところで、春に始まったNHKのクイズ番組、「チコちゃんに叱られる!」にはまっています。5歳の女の子、チコちゃんがサイコー。
憲法を捻じ曲げても平気なソーリ大臣や、裏でなにやっているかわからない大学の理事長たち、規則破ったのが見つかったら勝手に自分の給料をちょこっと減らして反省してますというポーズをとる政治家たち。「国民をなめんじゃないよ~!」と、チコちゃんにぜひ叱ってもらいたいよ。

米人記者が取材した特攻隊員

東京新聞夕刊(2018年3月29日)で、アメリカ国防省が運営している「星条旗新聞」(Stars And Stripes)の記者(マシュー・パーク)が、特攻隊員として22歳で亡くなった、上原良司さんの取材をしているという記事を読んだ。知覧の特攻平和会館を訪れた際、上原さんの存在をしり、「権力主義、全体主義の国家は一時的に隆盛であろうとも、必ずや最後には敗れる」と遺書にしたためていた上原さんの文章に衝撃を受けたとか。
この記者は3年前に記事を書いて、次はノンフィクションを自身初の単著として仕上げようとしているということなので、その本が出てくることを楽しみにしたい。
上原さんについては、日本語だけでなく、英語でもネットに多くの情報が出ている。

BBC Remembering the Kamikaze Pilots
ウィキ

今の日本は戦前、戦中の日本のような全体主義ではないかもしれないけど、「権力主義ではない」とは、決して言えない。特に今の政権に関して。残念ながら、日本だけじゃなく、中国も、ロシアも、そしてアメリカさえも、「権力主義」に覆われているとも言えるんだけど。

日経新聞の「忖度」

3月も明日で終わり。もう今年の四分の1が終了する。
日経新聞が数年前に買収したFinancial Timesを読んでいます。買収後、Martin Wolfを始めとするFTの代表的なジャーナリストたちの記事が、日本語翻訳されて日経本紙にしばしば出ています。でも、ちょっと日本の政治に厳しかったりする記事はあまり見かけないような気もします。ボクの勘違いかな・・・

3月30日付のFTに、Leo Lewisという東京にいる記者(ちょっと日本に辛口の記事を書く傾向がある印象)が、日本で話題になっている言葉として、「忖度」という言葉を紹介してありました。安倍総理に対する遠慮や配慮から、周りの人間たちを始めとして多くの人間たちが行う「忖度」。

英語でこの言葉の説明として、以下のように紹介しています。

"Sontaku refers to the pre-emptive, placatory following of an order that has not been given."
"The word may not have been widely used by Japanese, but everyone instinctively gets its sinuous prevalence in government and private sectors."
"While the concept is not uniquely Japanese, few terms resonate so well in explaining Japan in the era of Shinzo Abe, the prime minister."

簡単にいうと、自己検閲。勝手に自分自身で、自分の手足を縛っていき、いつのまにか、自分の頭の中まで縛っていくような行為でしょうか。
この「忖度」という言葉は、日本人お得意の「おもてなし」と表裏の関係にあると、ボクは思っています。

FTでは、しばしば皮肉に飛んだ囲み記事やエッセイを読むことがあります。FTのジャーナリストはあまり「忖度」していないように思います。
日経新聞の皆さんも、時の権力に関する過剰な忖度をされることがないように。ご自分たちの名前では、率直でちょっとシニカルな記事を書くことに気がひけるのであれば、FTの記者たちの囲み記事でも翻訳して出されては?!