変わる学校、変わらない企業

 昨日は名古屋でお取引先7社(校)を訪問させていただきました。お時間をいただきました皆様に心より感謝申し上げます。

 学校(特に専門学校)の方とお話ししていて、18歳人口の大幅減少のなか、これまで以上に海外からの学生や社会人向けの教育ビジネスに入っていかざるを得ないというお話をお聞きしました。これは変わっていこうとする学校の例。
 企業の方とお話ししていて、なかなか休みがとれないという状況をお聞きしました。一週間の休みも、なかなか取りづらい、とか。これは変わらない企業の実態?

 名古屋からは夜9時10分の新幹線に乗ったのですが、荷物を動かして、席を空けてもらいました。隣には、フリーランスのキャリアウーマンらしき女性が座っていたのですが、窓わくには、缶チューハイが置かれていて、なんとなく複雑な気持ちになりました。女性が新幹線の中でアルコールを飲み、ぐったり疲れて眠っている。働く女性たちも、たいへんな状況にあるのかと思います。なかなか休みも取れないようですし。

 ストレス社会日本、でしょうか?

 

"The First Billion Is The Hardest" (T. Boone Pickens 著)

 アメリカからの帰りの飛行機の中で読みはじめた本です。『どん底から億万長者』というタイトルの本は、この本の翻訳本かもしれませんが、表紙のデザインはちょっと安っぽくなっている印象を受けました。
 日本では、80年代、ピケンズが小糸製作所の株を買ったことでマイナスの記憶を持っている人も多いかもしれませんが、日米問わず、大企業のサラリーマンとはまったく違う価値観と生き方をしてきた人です。まだ読み終えていませんが、印象は決して悪くないです。自分でリスクをとり、体を張って生きてきた人かと思います。
 ピケンズは、アメリカが海外(中東)の石油に依存することが、外交、防衛において危機的な状況を作り出していることを、身銭を切ってキャンペーンしています。石油マンのキャリアを持ちながら、代替エネルギー(風力、ソーラー)の開発に投資をしています。現在すでに80歳をこえていますが、そのバイタリティには敬意を表します。
 YouTubeにも彼の動画がかなりアップされています。


台風の日に遅刻しないで出勤する

 昨日、台風が関東地方を襲った朝、交通機関の多くが麻痺し、定時に出勤できなかった人たちが多かったことだと思います。朝早い電車であれば、遅れることもすくなかったようですが、ちょうど通常の出勤時に家を出た人たちは、たいへんな目にあったように聞いています。
 派遣社員と正社員は、こんな時に扱いに差がでてくるのでしょうか?つまり、正社員は、たとえ遅刻したとしても給料が特に減らされるわけではないでしょう。でも、派遣社員は会社について仕事を始めた時間から、勤務したと見なされるのでは?そんなところにもある意味正社員の甘えがあるのかもしれないし、ちょっと派遣社員の人たちはかわいそうだなと思います。
 うちの会社で言うと、普段から早く出勤している人たちの多くは、昨日も早くから会社に出て仕事をしていたようです。
 台風が出勤時刻前後に関東地方を襲うことが事前にわかっていて、普段よりも早く家をでて頑張って会社に遅刻しないようにした人たちは立派。(一部路線では、その意志はあっても、電車がまったく動いていなかったでしょうが)
 こんな話が、今夜いっしょに食事をした、かつては超体育会系だったという広告代理店の方たちとの話題にでました。(かつてこの会社の雰囲気としては、前夜、会社のそばのビジネスホテルに泊まってでも、翌朝遅刻するなというものだったとか。モーレツな時代だったと言えば、それまでですが)

カンファランスもウェブ2.0っぽく

招待状をいただいて、ニュースコーポレーションのルパートマードック氏のお話をお聞きする機会がありました。ニュース社傘下のダウジョーンズ社が、読売新聞と提携したことを記念してのイベントです。
遅くついたこともあり、一番前の席しか空いてなかったので、講演者からすぐのところに座りました。なるほど、この老人が「世界のメディア王」なんだと、ちょっと感心も。

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ボクがおもしろかったのは、ウェブ2.0の「ツール」。会議の参加者へのアンケートが途中、途中にあって、回答がすぐに表示されました。一番最初の質問は、2010年末の日経平均は、1 1万円円以下、 2 1万円から1万1千円の間、 3 1万1千円以上。写真のようなハンディ端末で回答し、結果はすぐに表示されます。

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組織のDNA

 昨日の朝日新聞朝刊に、「JAL再生タスクフォース」の一員に指名された富山和彦さんのインタビューが出ていました。富山さんとは、今年始め、靖国神社であった薪能の火付け奉行のお役でごいっしょでしたし、過去にも何度かお会いしたことがあります。富山さんが今回どのようなお仕事をされるのか、関心を持ってみていますし、いい仕事をされることを心からお祈りしています。

 このグログでも何度かJALに関しては書いたことがあります。何人かの友人、知人はJALに在籍していますし、「卒業者」である知人もいます。JALについては、2年前に「地に墜ちた日本航空_果たして自主再建できるのか」(杉浦一機著)というような本もでていて、世の中の関心は高いかと思います。
 JALはANAとどこが違うのか。その一つとして、「親方日の丸」意識がしばしば指摘されます。多分、心ある社員の人たちは、それを乗り越えていこうという意思をお持ちだと思います。ところが、終身雇用で他の会社や業界を知らない人たちの集まりの中では、自分たちの考え方のどこが「親方日の丸」なのか、それに気づき、関係者の間で問題意識を共有するという、問題解決のために必要な出発点にさえなかなか立てないのではないか。入社段階で、JALとANAの間で社員の質に違いがあるわけではなく、どちらの研修プログラムが優れている、というようなこともないのではないかと思います。ところが何年かのうちに、会社の文化や雰囲気に染まっていく間に、「競争意識」において差がついてくる。
 これはJALだけの問題ではないと思います。うちの会社も含めて、すべての組織が常に意識していないといけない落とし穴です。学校しかり、役所しかり、政党しかり、そして国家しかり。組織は常に自分とは異なるものを排しようとします。(同じような価値観、学歴、経歴の人間を入れたがります。)人間の生理がまさにそうであるように、組織もまったく同じ作用を持っています。それは自己保存として当然のこととも言えます。大きな変化がない間は、そんな行動を続けていても存在を脅かされることはありません。
 ところが競争条件が大きく変わるとき、過去の継続では不十分になり、組織の存在は危機にさらされます。が、同質の人間の集まりである組織のメンバーからは、その危機を乗り越えていくための新しいアイデアもリーダーシップも、なかなか出てきませんし、逆にそのような芽をつぶそうという動きがでてきたりもします。

 ある銀行系の証券界社で役員をなさっていた先輩からお聞きした話です。「日本の会社の経営者は劣性遺伝を行ってきた。退任する社長は、自分が気に入った、でも、自分よりも劣る後継者を指名していく。何代かにわたって、それを繰り返している会社が多い。」JALがその一社かどうかはわかりませんし、今の西松社長は異なるのでしょうが、あまりにも大きな負の遺産を背負ってご苦労されているのでしょう。
 先日から、
『がんと闘った科学者の記録』(戸塚洋二著、立花隆編)という本を読んでいます。1998年、世界で初めて素粒子ニュートリノに質量があることを発見し、ノーベル賞にもっとも近い日本人と言われながら、昨年ガンでお亡くなりになられた物理学者のブログを、立花隆が編集したものです。この本の中で、病気のため去っていったかつての職場を訪れたとき、以下のような気づきがあったとされています。
 「昔の職場を訪問し、一緒に仕事をしてきた若い諸君が大変活躍しているのを見たとき、大切なことに気がつきました。家族、さらには生物の進化と同じように、仕事も世代交代によって進化を遂げる、ということです。古い世代は自己の痕跡を残さずに消え去るべきなのです。しかし、ほんの少しですが、自分のDNAが次の世代に受け継がれているのを感じ、大いに満足しました」と。組織の経営者は、自分のDNAを、次の世代がすこしでも受け入れてくれたならば、それを密かな喜びにして、静かに去っていけばいいのではないか?
 自らのガンを真っ正面から見つめる戸塚さんの姿勢は感動的です。本物の科学者というのは、自らのガンに対してさえも、こんなにも明晰なのかと、あきれるほど感心しました。(「未知の現象に対して理論的に解明できないとき、私のような物理学者なら、まっ先に何をするか。それはデータベースの作成です。詳しいデータを集め、解析し、現象の全体像、ヴァリエーションを捉える。こうして現象の背後にある本質を抽出していくわけです。」)
 最初の話に返りますが、富山さんたちの「JAL再生タスクフォース」がいいお仕事をされることを期待しています。JALのDNAを変えていくというかなりの荒療法が必要な仕事かと思いますが。

 

企業内ではまだオフィス2003が半数以上

机の上につみあがっていて、まだ開いていない雑誌に急いで目を通しています。

「日経パソコン」7月27日号の「企業の情報化実態」特集記事から。(国内8000社への調査の結果。)

「最も多く使用しているオフィスソフト」は、以下の通り。

Office 2003_55.6%、Office200_22.2%、Office XP_14.8%、Office 2007_5.5%、Office 97_1.5%、Office 95_0.1%

OSはXPが主流のようですが、Windows 7への関心と期待は高い、とか。

引用_悲観と楽観

今日のアジア版Financial Timesに掲載されていた、投資に関するJonathan David のエッセイから。Peter Bernstein は今年亡くなった金融に関する著述家。Pigouは20世紀前半の経済学者。

"In their calmer moments, investors recognise their inability to know what the future holds. In moments of extreme panic or enthusiasm, however, they become remarkably bold in their predictions: they act as though uncertainty has vanished and the outcome is beyond doubt." (Peter Bernstein)

"The error of optimism dies in  the crisis, but in dying it gives birth to an error of pessimism.  This new error is born, not an infant, but a giant." (A.C. Pigou)

値段だけでは決められない

 以前、雇用訓練の授業を受託することを躊躇するパソコンスクールがあることを書きました。(→黒犬通信7月29日)その時紹介した理由は、受講者の就職の世話をしないといけないことが負担になっているということでしたが、今週は別の理由で、受けたくないという話を聞きました。

 それは、このビジネスを受託する際の入札の存在です。値段だけで委託の可否が決められ、自分たちのサービスの質が評価されないという理由で雇用訓練のビジネスを受けたくない、というものです。

 公共事業において、一納税者としては、もちろんできるだけ費用をおさえて欲しいと思うのですが、こうやって受託する企業側の当事者から直接お話を伺うと、そちらのお気持ちもよくわかります。

 医療においても、まったく同じような話を聞きます。自分の技術が評価されない、一律の対価しか払ってもらえない、違いを理解してもらえない、と。

 一円でも安い方がいいというのもわかります。特に公共事業の場合には、特定の企業との関わりに不透明さがないように、数字で表すことができる値段が決め手になってしまうこともあり得ると思います。

 でも、一般論としてですが、世の中には、値段だけで決めてもらいたくない商品やサービス、あるいは値段以外の理由で買い物をするというケースがあっていいように思います。教育や医療、介護などはその一例でしょう。

 日頃の買い物に関して言うと、商店街での「ごひいき」というような言葉がだんだん僕らの記憶から薄れていき、いろいろと失ったものが多いように思います。どちらかというと最近の僕は、ネットよりも、現実に手に触れることができる空間や街並みを大切にしたいと思っている人間です。マクロ的に観たとき、ネットとリアルのビジネスのバランスがもっと考えられてもいいように思います。それは、これまで何百年、何千年の間に作り上げられた、人間にとってもっとも最適な空間と時間という観点からです。ネットビジネスの人間には、理想のバランス像を持っている人、そのようなことを真剣に考えてきた人は、ほとんどいないように見えます。

 最初の話にかえると、パソコンスクール全般は、現在厳しい状況にあるので、雇用訓練のビジネスは欲しいというところは多いのですが、それに頼り切ることなく、自分たちでビジネスを切り開こうとしているスクールも一部にはあります。そんなところには、頑張っていただきたいと心から応援しています。

トロントからニューヨーク経由で帰国

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現地時間の土曜日、トロントで終わったマイクロソフトオフィス世界大会、今年は中国本土、香港の学生たちが優勝しました。日本から参加してくれた中村さん、木村さん、お疲れさまでした。
ボクは今日日曜日朝、トロントからニューヨークに移動、明日月曜日のお昼の飛行機で帰国します。ニューヨークではユニオンスクエア周辺のホテルに一泊しますが、ホテルはほぼ満室だそうです。このホテルでは、4月くらいからビジネスは回復基調だとか。ニューヨークはそれなりの水準のビジネスを維持できているのでしょうか?街の様子を見ているだけでは、人々の財布の中身まではわかりませんが、こちらで会うビジネスマンたちと話をしていると、金融バブルの時代は過去のもので、これからは堅実な生活の時代というような話をしている人間が多いです。基本的に楽観的で消費中毒のアメリカ人たち、ちょっとでも回復してくるとまた元の木阿弥なるかどうか?

『無印ニッポン』(堤清二・三浦展共著、中公新書)

 時差があるとどうしても夜中に起きてしまい本を読んでしまいます。『無印ニッポン』は、セゾングループの総帥だった堤清二さんと、その堤さんのセゾングループに大学を卒業して入社、雲の上の存在だった堤さんと初めて会った作家、三浦展さんのふたりによる対談。堤さん(1927年生まれ)と三浦さん(1958年生まれ)とは、親子ほどの年の差がありながら、副題にある「20世紀消費社会の終焉」とともに、現在とこれからの日本の消費と消費者について、自由に語り合っています。各章のテーマは以下の通り。
 1「アメリカ型大衆消費社会の終わり」
 2「戦後日本とアメリカ」
 3「無印ニッポン」
 4「日本のこれから」
 (ビジネスの)「24時間化が日本人の暮らしをすごくゆとりのない、貧しいものにしたと思います。これがわたしのファスト風土論のテーマの一つでもあります。(中略)正月も休まず24時間営業となると、働く方は生活が解体していく。買う方も、生活にゆとりや落ち着きが、かえってなくなっていく。生活を愛せない人が増えたと思うんです。」(三浦)
 「他人と違うということに耐えきれるのは、ごく少数の人だけでしょう。ふつう、どんな人でも、ローカリティに支えられて、その上で個性を保っていると思うんです。そのローカリティの部分が根こそぎになって、浮遊してしまっているのが、現在の日本人ではないでしょうか。ただ、根無し草では不安だから、拠り所は求めていて、それでいきなり『日本』に飛んでしまう。」(堤)
 この対談は、三浦さんの『下流社会』を読んで、新しい才能を感じたという堤さんからの依頼で実現したもののようです。読売新聞に連載されていた堤さんの「叙情と闘争」にもでてくる逸話もあり、経営者・堤清二に関心を持つボクにとっては、非常に面白い対談でした。