Stress and risk_the secret of happiness

 Financial Times で必ず読んでいるコーナーがあります。Luke Johnson というベンチャーキャピタリストが毎週水曜日に書いている"The entrepreneur" (起業家)というコーナーです。ボクはこの人の記事(エッセイというべきか)が一冊の本になったら、ぜひ日本で出版したいと思っています。日本に足りないのは、起業家精神です。大企業での安定、役所での安定。大多数が安定を望む社会は、実は変化に対して脆弱な社会です。今の日本がまさにそうです。この閉塞感はどうしたものか?出口を見つけることが非常に難しくなっています。
 11月11日の記事は、"Stress and risk_the secret of happiness" というものでした。このエッセイの最後に、第26代米国大統領、T.ルーズベルトの言葉が引用されています。"Far better it is to dare mighty things, to win glorious triumphs, even though chequered by failure, than to rank with those poor spirits who neither enjoy much nor suffer much, because they live in a grey twilight that knows not victory nor defeat." 勝利も敗北もない、グレーの黄昏の中に住むよりも、たとえ負けたとしても、人生を生き抜く方がましだ。
Stress and risk_the secret of happiness

(デフレの時代に)安すぎると思うもの

 最近の新聞広告は、HISに代表される旅行代理店と、サントリーセサミンのようなサプリメント、それから大人のおむつ、そんな商品で成り立っているような感じです。どの商品も60歳以上をターゲットにしているものでしょうか?
 パック旅行の広告を見ていると、飛行機代、ホテル代、そして食事代が付いて、一日一万円ちょっとの商品(旅行)をしばしば見ます。退職者で、ちゃんと年金が払われ、ある程度貯金がある人なら、毎月旅行ができるだろうなと思います。「理論値」ですが、一日一万円のパック旅行を組み合わせて、一年過ごすことだってできます。400万円あれば可能ということになります。
どうもこの一日一万円のパック旅行はおかしいです。たとえば、この前新聞でトルコ旅行13日、トルコ航空で往復、ホテル、食事付きで14万円弱という商品を見つけたのですが、普通なら、エコノミーで飛行機代だけであっても、トルコ日本往復って、14万円程度、かからないでしょうか?
 それに飛行機代って、環境破壊のコストなんて、現在はまったく入っていないと思うのですが、これから国際的に「環境税」なんてものが当然のことになれば、こんな安値では飛行機には乗れなくなるはずです。
 もうひとついつも安いなと思うサービスがあります。それは宅配です。アマゾンを頻繁に利用しますが、古本だけ、340円の宅配料金がかかります。新刊の場合は、宅配のコストは、商品の値段に含まれています。この宅配も、ガソリンをどんどん使い、夜遅くまで担当の方達は働いていますが、安すぎないかと思います。ネットで買い物をする人たちがどんどん増えていますが、ネットでの買い物は、宅配サービスが支えているとボクは思っています。社会コストとして全体を見たときに、特に環境に対する負担を考えたとき、どのような計算になるのか、関心があります。

ドラッカー生誕100周年記念の国際会議

今年の11月19日でドラッカー生誕100周年。Financial Times のコラム記事によると、それを祝って、先週、ドラッカーが生まれたオーストリアのウィーンでドラッカーの偉業をたたえる国際会議が開かれたようです。(→Global Drucker Forum)
ドラッカーのいいところは、平易な言葉でビジネスはもちろんのこと人間性に関する洞察、見識を示してくれたことだと思います。ウィーンであった会議で頻繁に使われた言葉は、「目的」だったと、Financial Times の記事にありました。すべてのビジネスマネージャーたちは、企業の目的を常に考えていないといけない、と。ドラッカーの残した、最も重要な5つの問いかけとして、以下のようなものが記事であげられていました。

1 われわれのビジネス(使命)はなにか?
2 われわれの顧客は誰か?
3 顧客は何を求めているのか?
4 われわれの結果は?
5 われわれの計画は?

生産性の向上のみ

さっきちょっと「感傷」にひたった文章を書いたので、別のトーンの話を。
John Taylor (スタンフォードの経済学教授)のブログによると(池田信夫さんのブログからのリンクで読みました)、過去50年間、アメリカで3倍になった実質賃金を説明してくれる要因は、生産性の向上であって、法定最低賃金の増加、組合活動、差別を禁止する法律、賃金格差の是正でもないということです。
(→
John Taylor "The Answer is productivity.")

結局、個人の教育レベル、組織の経営力、創造力を育てていく努力からしか、賃金の上昇、雇用の安定はないということでしょう。政府の施策ではなく、ましてや自分たちの既得権を守ることしか考えていないような談合組織やグループでもなく、企業のもつ経営力や個人の努力にしか答えはないということで、根本的には「天は自ら助くる者を助くる」ということかと思っています。
これは日頃社内でも社員の皆さんに話し、自分自身も信じていることです。

人間安売りの時代

 コールセンターを持っていくのが、地方に仕事を作る常套手段のひとつになっています。コールセンターは、お客さんからの問い合わせやクレームを受けるインバウンドの電話と、営業、販売のためのアウトバウンドの電話に大まかに分けられます。この業界には90万人程度の人が働いていると聞いています。ひとつの立派な業界です。
このごろ、コールセンターに関わっている人たちと話をすることがあるのですが、たいへんな仕事だなという印象を持っています。
 第一に働いている人たちは、客からのクレームなどを真っ正面から受け止めないといけないので、精神的に非常にストレスがたまる仕事であるということ。
 その割には、あまり待遇がよくない。地方にコールセンターを持っていく最大の理由はコストが低いからです。時給700円、800円からスタートなんて話があると聞いています。
 さらに、コールセンター内におけるキャリアパスがはっきりしていない。一番下のランクからスタートして、その後、どのような仕事の展開があるのか明確でなく、一部、「使い捨て」が見られるとも聞きます。特に、販売、営業の電話をしていて、その成果に応じて成功報酬が払われるような仕組みになっている場合は、結果が出ない人に対してその傾向が強い、とか。
 コールセンターを活用する企業側はできるだけ安く「クレーム処理場」を運営しようとしています。その結果として、そこで働く人たちはかなり厳しい環境で働いているのではないかと想像します。
 日本経済がデフレから脱却できないでいるという記事がでています。(今朝の朝日新聞には、「デフレ3年ぶり認定_景気再び悪化懸念」の記事)デフレの定義は、記事によると、「すくなくとも2年、物価下落が続く状況」とあります。物の値段がさがることには文句がないのですが、その物を作っている人間の値段も下がっています。そういう意味では、まさに人間安売りの時代だと思えてしょうがないです。
 人間安売りの時代は、単純に低コストで働いてくれというだけではないです。少々いい加減な食べ物でも値段を安くして平気で食べさせるようになっています。(こんなことを書くボクも、コンビニのおにぎりとカップスープを、会社の机で食べて昼食とすることが多いのですが)食べるもの、見るもの聞くもの(端的に言うと「言葉」ですが)、それらが人間を作っているのに、手抜きしたもの、不純物を多量に含むもの、そんなものを体や心に入れているのに、消費する側は便利さを中心に追求していて、口にいれているもの、頭に入れているものをよく見ていないです。人間安売りの時代は、「不誠実」と「投げやり」の時代でもあるように見えます。
 安売りと便利さを徹底追及しているうちに、いつの間にか「人間」が消えていっているようにも思います。がんを直すことに熱中しているうちに患者が見えなくなった医者みたい。手段と目的がすり替わった時代。
 企業の多くが「人間尊重」、「個性尊重」を口にするけど、それらが現実の場でどのように発揮されているのか。
 ボクも小なりとはいえ、会社をやっている経営者の端くれとして、人ごとではない話です。

アップルがマイクロソフトに追いつく日?

スティーブ・ジョブズがアップルに復帰して以来、アップルの快進撃は続き、株式市場における時価総額は、98年の50億ドルが、現在では約1800億ドル。マイクロソフトの2500億ドルが視野に入ってきたという記事がロイターにあります。
ロイター記事

馬路村のゆずがカントリーマアムに

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高知・馬路村のゆずがカントリーマアムに使われているのを発見。(→以前馬路村のゆずについて書いたバックナンバー

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来年、NHK大河ドラマで龍馬伝が始まると、高知県の話題がもっと出てきそうな予感!

不況期でも売れているもの1

 この何年か、全国でパンのブームが続いていると聞きます。女性誌などでもパン特集がしばしば組まれています。
首都圏にあるZというパン屋は、テレビで紹介された後、店頭販売のみならず、通販サイトも人気度抜群で、なかなか商品を買うことができない状況になっています(まだまだテレビの力はあるようです)。パンに詳しい知人の話では、このZというお店は、異常な人気のようです。

 
 

『成功は一日で捨て去れ』(柳井正著)

 著者は、ご存知、ユニクロの創業者。ボクが尊敬している起業家、経営者です。このブログでも以前からなんどか書かせていただきました。(→バックナンバー1、→バックナンバー2バックナンバー3
 この本自体は、ユニクロのPRのひとつとも言えるのでしょうが、それを割り引いても、経営者、起業家にとっては参考になる本です。アパレルの小売業は、うちの会社のビジネスとは性格がかなり異なるため、簡単に比較したり、真似たりできるわけではありませんが、柳井さんの姿勢、考え方、またその勉強熱心さは非常に参考になります。
 1「企業の目的は顧客の創造である」(ドラッカー)。企業は自分たちがなにを売りたいかよりも、お客様が何を求めているかを考え、お客様にとって付加価値のある商品を提供すべきである。
 2「企業の目的は、それぞれの企業の外にある。」(同じくドラッカー)。本来、我々がターゲットにすべきなのは、まだお店に足を運んでくれていないお客様、つまり潜在的な需要をつかまえることだ。
 3 顧客を創造するためには、付加価値を持った商品を開発するということ以外に、テレビコマーシャルや雑誌などを使ったイメージ戦略や企業の姿勢を伝えていくPR活動が大切だ。
 もうひとつ響いたこと。ボクらのビジネスは、顧客にある程度努力(それをボクはよく「苦行」と言っているのですが)をしていただかないといけない性格を持っています。そんなビジネスを行っているボクには、次のような柳井さんの言葉がとても響いてきました。
「よく、先行している商売人が流行を作り出すとか、お客様の心理を作り出すといった類の話があるが、そんなことは実際にはあり得ない。こちらから心理状態を変えるなんて滅相もないことだ。重要なのは、お客様の心理状態に合わせて商品を作り出すことなのだ。」
 実は、昨日福岡のセミナーでお話させていただいたとき、ITビジネス、あるいはITのトレーニング、資格ビジネスは、売りたいものを一方的に売ろうという姿勢が強すぎるのではないか、という発言をしました。そういうこともあって、福岡からの帰りの飛行機で読みはじめ、自宅に帰って読み終えたこの本の中の柳井さんのさまざまな言葉に、とても共感したのかもしれません。

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(写真は、昨日、福岡であったセミナー会場のAIビル9階から見た夕方の百道の海の景色。とてもきれいな眺めでした。)

カップリング/デカップリングの議論

 2008年の1月と言えば、もう2年近く前になりますが、アメリカ経済と世界経済の「カップリング」について、駄文を書いたことを思い出します。(→バックナンバー
 ロイターのニュースでおもしろい記事を見ました。それは、日銀の白川総裁が、「先進工業国の超金融緩和政策が、新興国の経済発展を押し上げている」と指摘したことです。この10年、日本はずっと超金融緩和政策でした。その政策が、世界のバブルの原因の一つであった時期がありました(いわゆる、円キャリートレード)。現状は、円にドルが加わり、加えてその他の先進工業国の金融緩和策が、ミニバブルを引き起こしているように思います。
 アメリカ経済とアジアを中心とする新興国経済が、相関関係にあるかどうか、つまり「カップリング」あるいは「デカップリング」の議論がありました。それに対する答えとして、経済がお互いに依存し合っているネットワーク化した世界においては、すべての国の経済が強い相関関係にあることを、いろいろな局面の中で発見しているように思います。
ロイター記事