ついに時価総額3位

7月14日の黒犬通信で、任天堂の株価のことを書きました。一時、下降しましたが再び、上昇気流に乗り、ついに一株6万円の半ばになろうとしています。そして時価総額は9兆円を超え、日本で3番目の時価総額の会社になっています。あえて挑発的ないい方をすれば、かつて「花札」を作っていた、たかがゲームの会社が、NTTや東京電力、キャノン、三菱商事といった大企業を抑えているのです。任天堂の上をいくのは、トヨタ自動車と三菱UFJフィナンシャルグループの2社のみです。

任天堂の作り上げたビジネスモデルやサービスには、「ブラボー!」の一言あるのみです。ちなみにネット企業の代名詞、ヤフーは時価総額3兆円で、31位です。(10月10日現在)

日本政府こそ、最大の円キャリ・トレーダー

昨日(10月5日)の日経新聞『経済教室』に、「外貨準備を考える」というテーマで、早稲田大学の谷内満さんが、明快な論旨を展開されていました。僕はこの方のご意見に賛成の立場です。なお、内容のすべては、こちらのサイトに掲載されています。

以下、要約。

1 外貨準備とは、民間からの借入れで政府が投資・保有している外貨資産である。外貨準備の為替リスクはヘッジされておらず、政府による円キャリトレードである。

2 これまでのところ、運用純益の累計が評価損を上回っているが、今後もし円高になれば評価損が拡大するリスクがあり、その場合は、国民の負担になる。

3 政府による為替相場への介入の結果、外貨準備が起こっているが、介入が為替相場に与える影響は非常に小さい。政府の介入は大きな意味を持たない。

4 これまでの介入の結果として、日本が保有する外貨準備は他の先進国と比べ、金額だけでなく経済規模に比べてもケタ違いに大きい。

5 外貨準備は民間の資金を借りて政府が運用している資産であり、民間が資産運用するより政府がやるほうがうまくいくというようなことはない。

6 現在の外貨準備の8割を売却し、現在の5分の1ほどの水準にすることを提案する。現在、円は主要通貨に対して大幅な円安の水準にあり、外貨準備を売却する好機である。

人材の流動化

なんども繰り返しでてくるテーマですが、人材の流動化、とくに大企業が抱えて、十分に活用されていない人材を、新興企業やリストラを必要とする企業に、もっと流せないものかと思います。

今月の11日にソニーフィナンシャルホールディングスが東証に上場します。その取締役で、傘下のソニー銀行の社長を兼ねる石井さんという方は、10年前に破綻した山一證券出身です。山一、長銀、日債銀など、破綻した大手金融機関出身の方たちの中には、新しい職場や起業を通して、活躍されている方たちが、かなりいらっしゃいます。「終身雇用」という、人材の飼い殺し(少々強い言い方になりますが)という側面を持つ日本の大手企業に見られる制度から逃れるのは、個人にとってかなり勇気を必要とすることかとも思います。だから、倒産という天災のような出来事がないと、ほとんどの人がふんぎることができないのでしょう。

他の会社経営者の話を聞いていても、必ず出てくる話題は人材のことです。これは100%の経営者から出てくる課題です。マクロ的に見たとき、人材の適正配分ができていないことが原因になって、新しい価値の創造がなかなか進まないのが、日本社会の問題の一つかと思います。こうやって書いていると、評論家の話のように聞こえるかもしれませんが、他人事ではなく、人材の流動化がひとつの推進力となって、人材の多様化、人材の専門化をもっともっと進めることができれば、うちの会社にもプラスになると考えています。

全面安の米ドル

新聞を見ていたら、いつの間にかカナダ・ドルが、米国ドルに対して、ほぼパー(対等)になっていることを知り、知らないうちに本当にいろいろな変化が起こっているものだと、自分の無知ぶりに愕然としました。僕はカナダ、オーストラリア、ニュージーランドには行ったことがないので、米国ドル以外のドル通貨(オーストラリア、ニュージーランド、カナダ)にはまったく「土地勘」がありません。オーストラリアやカナダの通貨が高くなっているのは、資源国への投資が増加し、信認が高まっていることの表れかと思います。

過去、カナダ・ドル1.5が、米国ドル1くらいのこともあったように記憶しています。それが、パーになっているというのですから、カナダ・ドルにとっては、歴史的な高値ということではないでしょうか?

米ドルは、円を除く、すべてのメジャー通貨に対して、大幅な安値になりつつあります。先日、FRBが金利を下げたことから、インフレ懸念が高まっていて、一層のドル安を予想する声もでています。その中で、日本の円だけが、ドルに対して値上がりしない状況が続いています。原因は、個人投資家の外貨建て通貨への投資のため、円売りの圧力が引き続き強いということだそうですが、日本とアメリカ両国、西側先進国のなかで、1番と(いちおう)2番目の経済大国の通貨が弱くなり、EUやその他資源国、新興経済国の通貨が強くなりつつあるというのは、国際経済において、大きな変化が進みつつあることの象徴なのかと思います。

「買い負け」

「買い負け」なる言葉をこの頃よく聞きます。この20数年間、戦後の円高傾向と、国内価格が高めにあったことで、日本から海外の商品や資源を買い付ける業者は、世界市場におけるドルベースでの買い付けで、他国よりも高めの値段を提供することで、「負ける」ということはそれほどなかったのが、ここ数年、他の欧米先進国に対してだけでなく、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国などの新興国)などにも、「買い負ける」ということがしばしばみられるようになってきた、という話です。

トヨタに代表される自動車産業が、日本を支えてくれているのはよくわかりますし、それらのメーカーにとっては円安のほうがいいということなのも、わかります。でも、いつまでも円安がいいといっていては、海外の商品や原料の調達は、これからだんだん難しくなっていくのではないかと思います。資源は限られています。「買い負け」が頻繁に起こってくるのがちょっと心配です。

円高、サービス・金融業の国際競争力強化が、黒犬の「持論」です。

以下の記事は、僕が高校生の頃、1年間生活したアメリカ・アイオワ州あたりの話です。資源をめぐる争いは、これからもずっと続いていくように思います。

日経ネット記事

もう、インフレじゃないの?

まだデフレから脱却できていないと言っている人がいますが、身の回りで起こっていることやメディアで見ることは、値上げの話しが多くなっています。オデッセイのオフィスが入っているビルのあるここ丸の内界隈でも、契約更新時の値上げは当然のことになっています。マクドナルドも、すかいらーくも、そして伊藤ハムも値上げ。どうしても金利を上げたくない、円安に維持したいという、「守旧派」がまだまだ多いのでしょうか?日本経済って、糖尿病状態って感じがします。

高度化する必要があるのは

経産省が、「高度IT人材」の育成の必要性を訴えているのですが、この「高度」という言葉、わかったようでわかりません。そして「高度化」する必要があるのは、人材よりも、市場のありかた、ビジネスのあり方自体ではないかと思います。

IT産業だけでなく、国内市場だけで競争している企業や産業が、非常に特異な発展の仕方をするのが、日本市場の特徴かと思います。ケータイはその一例です。その特異さが無理や無駄をしばしば生んでいます。これは、海外市場との比較をしてみないとなかなか分からないのですが、自分で自分の首をしめているとしか思えないようなことが起こっています。結果、日本でだけ通用することが多くなります。

これは僕の持論なのですが、もう政府には、できることはあまりないのではないかと思うのです。「高度化」しようとして、政府がいくら笛を吹いてみても、一体、人材の高度化なんてできるのか?それよりも、政府自体が、まずITサービスの調達を「高度化」していって、大手IT企業との付き合い方そのものを根本的に変えていくことで、市場や業界の仕組み自体を高度化していくことこそ、政府にやってもらいたいことです。ゼネコン業界同様、2次請けどころか、3次請け、4次請け、最悪7次請けなんてことがあるようですが、こんなことをやっている業界がサバイブすることそのものが、おかしなことだと思います。「あらためて衝撃――日本のソフト産業を統計分析するあらためて衝撃――日本のソフト産業を統計分析する」という記事を読みながら、憂鬱な気分になりました。

戻りの遅い日本株

サブプライム・ローンの影響をもっとも受けた市場のひとつが日本の株式市場。そして、欧米諸国でいくつかの対応策がアナウンスされても、戻りの勢いが一番弱いのが日本市場。その根本的な理由は、日本の構造改革が遅々として進まないことへの大きな失望かと思います。日本の新聞で好意的に取り上げられているブルドッグソースに関する裁判所の判決なんて、海外の投資家にとっては大きな失望でしかありません。

できるだけ今のままの企業ガバナンスを維持しようとする動きや、日本のユニークさを強調する動きなどは、日本にとって、プラスではなく、圧倒的にマイナスになっているのではないか?

大学の1年生のとき、同じフランス語クラスだった、そして卒業後、郵政省(現・総務省)に入ったT君という同窓が、最近、携帯電話のビジネスモデルの変革を提言していて、ちょっとした有名人になっています。ケータイは、日本が力を持っているのに、日本だけのビジネスモデルを作ってしまったため、国際市場でまったく競争力を持ちえない、不幸な業界になってしまっています。

小泉・竹中路線に対する批判はいたるところで聞かれます。彼らのとった経済政策が、プラスかどうか、僕は判断できるほど、知っているわけでもないし、考えたことがあるわけでもないのですが、構造改革が遅れていくことは、日本に対する期待を失わせていき、ますます東アジアにおける中国の台頭と日本の没落を進めていくことになるのかと危惧します。

少なくとも、日本の株式市場だけを見ていると、あまり前向きな気分にはなれません。日本人自身も、日本株に投資しないで海外市場の方を見ているようでは、海外の投資家も、いつか日本へは期待しなくなるのではないかと思います。

一ヵ月後に新聞を読む楽しみ

今年は一週間程度の出張(シュッチョウです、デバリではなく)がほぼ毎月のように入って、読めない新聞が山のようになっています。この週末も、7月半ば頃の新聞を読んでいたら、7月17日付けの日経産業新聞の「マーケットウォッチ」のコーナーで、ひよこさん(ペンネーム)という専門家の方が、「先週火曜日、米国のサブプライムローン問題に対する懸念が再燃して主要国の株価が全面安となるなかで、投資家のリスク回避姿勢が強まった」という一文から始まる文章を書かれていました。

で、読み進んでいくと、「実は、サブプライムローンの延滞率は2005年に既に上昇し始めており、それほど目新しい問題ではない」とされ、最後には、「基本的にサブプライムローン問題に関するニュースに対する市場の反応は、今後ますます小さくなっていく可能性が高い」と締めくくっています。

ほんの一ヶ月前に、サブプライム問題に関して、このようなコメントを出していたプロもいたのかと、過去の新聞記事を読むたのしみを見つけた気分になりました。ちなみに、僕の友人で、熱心に株式投資をやっている金融業界の人がいます。この2週間ほどの間で、サブライムローンのせいで、マンション一つ分くらいのお金が飛んでしまったと、電話で自虐的に笑っていました。