『日本の優秀企業研究_企業経営の原点6つの条件』(新原浩朗著)

 優秀企業とそうでない企業を分ける一般法則は、所属する業界の差に関わりなく見られ、以下のような6つの共通点が見られる、とする研究結果を書籍にしたもの。
1 分からないことは分けること
2 自分の頭で考えて考えて考え抜くこと
3 客観的に眺め不合理な点を見つけられること
4 危機をもって企業のチャンスに転化すること
5 身の丈に合った成長をはかり、事業リスクを直視すること
6 世のため、人のためという自発性の企業文化を埋め込んでいること

 まとめて言えば、「自分たちが分かる事業を、愚直に、まじめに自分たちの頭で考え抜き、情熱をもって取り組む」こと。

 この本の中には、ボクが尊敬している企業、企業家が紹介されています。任天堂(山内前社長)、信越化学(金川千尋現社長)、ヤマト運輸(故小倉社長)、マブチモーター、ホンダ、トヨタ、シマノなどなど。任天堂の山内さんにとっても、最初の30年は苦労の連続だったこと(トランプや花札事業にかわる新規事業として、タクシー事業、インスタントライスの製造にトライした)が紹介されています。また、マブチモーターの製品標準化の話も、おもしろかったです。
 任天堂やマブチモーターは、Big Giants になっていますが、"Small Giants"たちと同じなにかを、共有していると思います。

伊那食品工業_日本のSmall Giants(スモールジャイアンツ)

 アメリカン・ブック&シネマの新刊本「Small Giants」。おかげさまで、日本経済新聞の書評欄でも取り上げていただきました(1月18日付)。この本の中で紹介されているのは、アメリカの企業ばかりですが、日本に、Small Giantsがないわけではありません。それどころか、たくさんあるはずです。

 で、そのような日本のSmall Giantsのひとつが、この伊那食品工業なのではないかと、ロイターのHPに掲載されていた、雑誌「プレジデント」の記事から思った次第です。しっかりした哲学をお持ちの社長に感心しました。事業の深堀、地元に根付いた経営などが印象的です。

(→伊那食品工業記事

「百年に一度の世界同時好況」

 「百年に一度の不況」という言葉がはやっていますが、マスコミ関係者や政治家の先生方が使われるときには、不況のシリアスさを本当に信じていらっしゃるのか、よくわかりません。心から、百年に一度の規模の不況であると考えていらっしゃるのであれば、いまのような行動(無策というのは、言い過ぎでしょうか?)でいいのか。
 先日、新年会で知人たちと話をしていて、実は2000年のITバブル崩壊から回復し、20007年末まで続いた世界同時の好況こそが「百年に一度の好況」であって、そのことの方が、実は世界史上でもまれな出来事だったのではないかという話になりました。日本に暮らすわれわれ庶民レベルには、決して、好況であったという感じはしないのですが、この時期、確かに東京の不動産は値上がりし、「シロガネーゼ」なんて言葉が雑誌を飾りました。(「シロガネーゼ」はどこに行ったのか?!)この期間、BRICsを始めとする途上国においても、景気のいい話が多かったように思います。もちろん、EU、アメリカにおいても、不動産は大幅に値上がりし、世界的なバブル景気でした。
 ポイントは、あの時期が当然だと考えているとまったく間違ってしまうのではないかということです。高い生活水準になれてしまい、単純に言うと、身の丈に合っていない贅沢が当然みたいに思い始めると、危ないな、って。
 トヨタは、1000万台の生産レベルから一気に700万台を基準にすえて、そのレベルでもきちんと黒字になる体制を整えようとしていると聞きました。さすがトヨタだなと思います。トヨタ銀行と言われるほど現預金を持っているトヨタですが、貯金を使い果たしてしまう前に、新しい体制の確立と、マクロ経済の回復があることを期待されていることでしょう。
 1930年代の不況の克服には、第2次世界大戦が必要だったというような、悪魔的な考え方があります。局地的には戦争が続いていますが、世界的な戦争を絶対に引き起こすことなく、国際政治のリーダーたちには、この不況を解決していって欲しいです。

百年に一度の不況?

 昨日、今日と、新年会に出席しましたが、いろいろな方から、「百年に一度の不況」という言葉をお聞きしました。そう言うことが、なんとなく、この頃の挨拶代わりになっているみたいに。不況だ、不況だと言って、最初から今年もダメだというような「空気」を受け入れるのは反対。メチャクチャな借金を抱え、さらに追加の借金を背負おうとしているアメリカの方が、ずっと楽観的で、きっと不況からの回復は早いのではないかと予想しています。
 1月から、白旗をあげるなんて、最悪。

An hour with Bill Gates

 ビル・ゲイツのことを好きな人、嫌いな人、尊敬している人、さまざまでしょうが、このインタビューを観ていて、ボクは好感を持ちます。それはボク自身がこの10年ほど、マイクロソフトと仕事をさせてもらい、そのことに感謝しているということもあると思いますが、決して、それだけではありません。知的好奇心の塊であり、科学やテクノロジーへの強烈な関心、勉強家であり続ける姿勢は立派だと思っています。
すべて英語ですが、ぜひご覧ください。
インタビュー("An hour with Bill Gates")

自動車産業の影響

 大阪の某放送局の社長がご来社。以前、東京の某局の役員をされていた頃からのおつきあい。で、大阪に関する印象をお聞きしたときに出てきた話題が、自動車産業の地域に与える影響度合い。
中部地域が5とすると、関東は3、そして関西は1。大阪には名古屋、東京ほど、自動車業界の不況の影響はないのではないかということでした。
 トヨタがダメになるときは、日本がダメになるときだよねと、ほんの今年の始めくらい前まで、大勢のひとたちが考えていたと思いますが、そのトヨタが苦境に立たされているという現実が目の前に突然、現れました。
 今日は、2007年、OECD加盟国内で、日本の名目GDPは19位まで後退してしまったという記事が、
ロイターにでています。G7の中の最下位だとか。頑張れ、ニッポン!

書籍『Small Giants(スモール・ジャイアンツ)』 (yes, small is beautiful!)

アメリカン・ブック&シネマから今年最後の本です。
この本は、2006年、フィナンシャルタイムスのビジネスブックオブザイヤー最終選考に選ばれた本です。
サブタイトルにあるように、事業規模の拡大よりも、自分たちの信じる価値を守ろうとしてきた企業14を紹介しています。
日本でもファンが多い、『ビジョナリーカンパニー』の著者、ジム・コリンズは、『本書は、私たちに大切な真実を思い出させる。「偉大」と「ビッグ」は、等価値ではないということを」という推薦をしてくれています。
 日本ではとかく大きさを誇る経営者が多いように思います。業界団体などでも、大企業であることが、その業界を代表する条件になっています。でも、規模は必ずしも、素晴らしい会社の条件ではないかもしれません。すくなくとも、十分条件では。
 かつて、ある経済学者は、Small is beautiful. という本を書きました。大企業は、beautifulなのか、さらにはgreat なのか?ボクはsmall で、simpleであることが、これからの組織には大切なポイントになるのではないかと思っています。
著者のボー・バーリンガムは、アメリカの各種ビジネス雑誌に関わってきた非常に著名なジャーナリストです。2006年グーグル社員向けに、Small Giantsというテーマで、講演を行っています。その模様は、YouTubeで見ることができます。ぜひ、ご覧ください。
 また、数ヶ月前、アメリカで発売された彼の新刊"Knack"を、来年、アメリカン・ブック&シネマでは発売する予定です。この本は、最高の起業ガイドブックです。ご期待ください。
アマゾン『Small Giants』

『松下幸之助発言集・第一巻』(PHP文庫)

 今日もベッドの上でゴロゴロしながら、本を読んでいます。(腰痛のおかげで、普段以上に本が読めます)
この前、イトーヨーカドー創業者の本のことを書きましたが、今回は、「経営の神様」松下幸之助。松下幸之助は、1989年4月に亡くなられたので、来年で没後20年になろうとしています。松下電器産業は、社名をパナソニックとかえ、大きな変革を目指していらっしゃるようです。ボクはどちらかというと、ソニーブランドがずっと好きだったのですが、ここ数年、パナソニックブランドを見直しています。大型テレビ、DVD、ハイビジョンカメラ、この3点セットが欲しくて、暇なときに、会社の近所のビックカメラでぶらぶら見てあるくことがあります。日進月歩の家電製品で、なかなか踏ん切りがつかず、いつもwindow shopping ばかりです。以前であれば、ソニー商品しか検討しなかったのですが、このごろは、パナソニック商品にも、目がいくようになっています。ボクの中では、パナソニックブランドの株は、かなりあがっています。
 で、松下幸之助です。本のサブタイトルには、「商売は真剣勝負」なんてありますが、昭和35年から38年にかけて、企業主催の研修会やセミナーなどに招かれて行った講演を集めたもので、松下幸之助の非常に合理的な考え方を、わかりやすい言葉で理解することができます。ヨーカドーの伊藤さんもそうですが、松下さんのお話も、基本に忠実で、合理的、かつ実践的です。昭和35年というのは、ボクが生まれた翌年で、1960年代前半、今から50年近くも前の話になるのですが、会社経営に関して、ほとんどすべての発言は、われわれにも参考になるものばかりです。企業や資本が社会的な存在であり、社会や国家に対する責任を持つという考え方は、現在のCSRに通ずるものがあり、また金融不況の原因の一つであるモラルハザードに関しても、松下幸之助が生きていたら、きっと鋭い発言をされていたことだろうと思います。
 また、こんな発言もあって、現在の政治を考える上でも多いに参考になります。政府支出に関して、昭和38年(1963年)、長野で行った講演で以下のような発言をされています。
 「昭和10年(1935)の時分に日本は軍備をもってましたですね。国費の少なくとも35%前後を使っとったわけです。そのほかに、まだ大きな国費を使っとった。それは何かというと満州国の建設です。あれだけの軍事費を支出し、あれだけの満州国を建設する金を国費から出して日本はやっていた。だから税金が高かったかというと、今日と比べますと非常に安いんであります。」「今日は、そういうものはいっさい要らんようになったんです。にもかかわらず、税率は倍になりました。納税者が三倍になっています。何に金を使っているんでしょうか。これはやはり行政費と申しますか、国家運営費と申しますか、そういうものに余計な費用がかかっているということではないかと思います。」「経費が国によけい要るかたちにおいて、物が安く売れるかというと私は売れないと思います。われわれのお互いの会社を、十分健全な姿に直すということに成功したといたしましても、まだ不十分である。国の経費を少なくとも昭和10年程度まで切りつめるよう合理化する。そうすれば日本はもう限りないと申していいくらい繁栄していくだろうと思うんです。」
 松下幸之助は、松下政経塾を建て、多くの政治家を輩出していきましたが、政経塾の出身者で総理大臣になったかたはまだ出ていないと思います。現総理の麻生さんは、ご自身も会社経営に携わったことがあり、経営感覚のある総理だということですが、松下幸之助のような人に、ぜひ、総理大臣を務めていただきたかったです。

CNNに取り上げられた日本航空社長

 記憶に残っているビジネススクールのケースでこういうものがあります。倒産しかかったメーカーが、一方では社員の首切りをしているのに、優秀な経営者を確保、あるいは維持するために、どれだけの給料を払ったらいいのかというもの。このケースのタイトルとか、まったく忘れてしまいましたが、とても複雑な気持ちになったことと、アメリカ人の学生たちと、ボクのような日本人とは、心情的にかなり異なる反応をしたことを覚えています。
 日米の企業を比較した時、経営者あるいは優秀な社員が、普通の社員に比較してどれだけの給料を得るべきかというテーマにおいて、日米は、非常に対照的だといつも思います。世界でもっとも平等指向の強い日本(時には弊害があるほどの平等指向!)、強烈な格差社会のアメリカ。どちらがいいとは言いませんが、両者とも、もうすこし中庸を目指した方がいいのではないかと思っています。
 CNNに日本航空の西松社長の倹約、謙遜ぶりが紹介されていて、コメントを読む限り、たいへん好意的に受け止められています。バス通勤、社員食堂の利用、年収1千万円以下。すべての面で、赤字続きのアメリカ自動車メーカーの社長たちは異なります。
 ボクは、ANAよりも、JALに乗ることが多いです。いとこや友人が多いこともありますが、初めてアメリカに行った時、1976年ですが、AFSの同期たちと、JALのチャーター便で行ったこと、そのときから海外に行くときは、JALが中心です。
 今回、このCNNのビデオを見て、西松社長を応援してあげたくなりました。このCNNのビデオは、きっと、日本航空にとって、今年最高のPRになったのではないかと思います。日本航空の広報室のホームランでは?!


Google でも人員削減をしているという記事

これまでずっと、飛ぶ鳥を落とす勢いできたグーグル本社でも、人員削減を静かに行っているという記事がでています。

http://www.webguild.org/2008/12/google-layoffs-update-3000-workers-cut-so-far.php