昨日、高知県出身の方とお会いしました。僕が高知県生まれだということを、黒犬通信でご覧になられて、一度会いたいということでご来社されました。ビジネスのことを話し終えると、いつの間にか、高知の話になっていました。僕は、子供の頃の大半を愛媛県側で過ごしたとは言え、生まれは高知県なので、高知県という、日本の歴史、特に明治維新に多大なる貢献をしつつも、そのあと、表舞台からは消え去ってしまったようなこの県のことを、時々考えます。高知県といえば、坂本龍馬ですが、坂本龍馬の最大の「ファン」というか「プロモーター」が、作家の司馬遼太郎さんでした。
新潮文庫で、「司馬遼太郎が考えたこと」というシリーズが、全15巻でています。司馬さんが書かれたほとんどすべてのエッセイが収録されています。僕は今第5巻を読んでいるのですが、すこしずつ、時間をかけながら全15巻を読み終えるつもりで、もうすでに、このシリーズの本をすべて買っています。今読んでいる文章は、司馬さんが今の僕と同い年くらいに書かれたもので、同じ年代の頃、どのような問題意識をお持ちになられていたのかにも、とても興味があります。時代的にはだいたい1970年前後、日本の高度成長期のまっさかり、敗戦から15年くらい経った頃です。
司馬さんは、ご自分ではエッセイが好きでない、あまり書きたくない、というようなことを書かれています(第4巻)が、僕は司馬さんのエッセイが小説よりも大好きです。実は、高知県生まれでありながら、「龍馬がゆく」は第1巻目で挫折してしまいました。どうも歴史小説は苦手です。でも、司馬さんのエッセイは大好きです。お人柄や日本という国に対する想い、この国で生きて死んでいった人たちへの司馬さんの愛情を、とても強く感じさせてくれます。きっと、僕のような読者は、司馬さんの読者の中では、決して、いい読者ではないのかもしれません。
司馬作品を愛読書に上げる、政界、財界の「エライ人」が多くいらっしゃいます。多くの「エライ人」たちは、坂本龍馬が好きだと言われるのですが、やってらっしゃることは、なんとなく、徳川家康だなと思います。そんなこともあって、司馬さんをずっと敬遠していて、司馬遼太郎の読者になったのは、ほんの数年前からです。でも、司馬遼太郎という一人の作家と出会って、とても良かったなと思っています。だから、これから、何度も、黒犬通信で、司馬さんのことを書くだろうなと予想しています。
昨日、今年入社してくれた新人たちに、司馬さんのこのシリーズを売り込んだのですが、いつの日か、彼女たちも、日本の歴史に興味を持つようになって、司馬遼太郎のエッセイを読んでくれればいいけどなと思っています。