リスクと労を嫌うようになった結果。

夜、MITとハーバードクラブの集まりで、建築家・槙文彦先生の講演を拝聴する機会がありました。というか、先生を迎えての講演があるということで、参加しました。場所は竹橋の学士会館。一橋大学の如水会館の前です。
日本では先生の仕事では代官山のヒルサイドテラスが一番有名かもしれませんが、NYのワールドトレードセンター跡地の建物のひとつは先生の最新のお仕事になります。MITの人たちが先生に講演をお願いしたのは、MITメディアラボが先生の設計によるものだから。
これまでの作品の写真を多数見せていただきながらのプレゼンで、たいへん面白かったです。お話の中で印象に残ったのは、1950年代、世界の最高峰だったアメリカの建築業界がだんだん落ちていった理由として、
1組合が強くなり、組合の枠を超えた仕事をしないなど、硬直化が進んだ
2弁護士が強くなり、訴訟などを嫌うようになった
3他の業界に優秀な人間が移っていった(たとえば、宇宙産業やハイテク)
ということをあげていらっしゃったこと。
つまるところ、リスクと労を嫌うようになり、人材も集まらなくなったということです。
コンプライアンスでがんじがらめになり、失敗したときの失脚を恐れてすこしのリスクもとりたくない人間が増えている日本と同じだと思いませんか?さらに、人材の流出ということも、教育水準が落ち、全体的に人材に問題があると言われるようになっている今の日本のことかなと思ってしまいました。
槙先生は81歳ということですが、1時間の講演中ずっと立ったままですし、その後の懇親会でも講演参加者の質問に丁寧に答えていらっしゃいました。実際そうだとお聞きしていますが、紳士的な方でした。