『小林多喜二_21世紀にどう読むか』(ノーマ・フィールド著)

 その人の作品がでると必ず買って読む著者のひとりが、この本のノーマ・フィールド。『天皇の逝く国で』、『祖母の国』、『へんな子じゃないもん』、すべて素晴らしい翻訳者の手によって日本語で読むことができる、この日米混血の著者による作品です。先週小樽に行ったことを書いたばかりですが、この『小林多喜二_21世紀にどう読むか』は、この本がでた今年の始めにすぐ買っておいたままになっていて、札幌への行き帰りをはさんで読み終えました。ノーマ・フィールドが英語ではなく、日本語で書いた本です。
 小林多喜二に「プロレタリア作家」とレッテルを貼る人たちに、抵抗を感じます。そんなレッテルだけで彼を論じないでくれ、と。青春のうちに死んでしまった、躍動し、正義感にあふれた精神が、「プロレタリア作家」とだけ決めつけられるなんて。昨今の格差問題に関連付けてブームになっていますが、彼を読むきっかけがそうであったとしても、彼の作品はもっと広がりを持っていると思います。
 ノーマ・フィールドの本を読むと、なぜか故・須賀敦子さんを思い出します。須賀さんも、作品がでるたびに必ず読んだ著作者のおひとり。