「ウェブ社会をどう生きるか」(西垣通著、岩波新書)

 昨年出た本で、出た直後に買っていたのですが、今頃になって拝読。インターネットのことになると、メディアのことが当然入ってきて、アメリカ論、英語論、そして民主主義のことにもふれざるを得なくなります。この本でも、これらの話題が取り上げられます。

 この本でおもしろかった事柄はいくつかあるのですが、そのひとつは近代国民国家成立において新聞の果たした役割。「新大陸では、ばらばらに住んでいた何十万人の開拓民どうしを英語の新聞が結びつけ、アメリカ独立戦争をたたかう共同体意識を育てたのでした」(ベネディクト・アンダーソン『想像の共同体』-NTT出版)という話が紹介されています。

 もうひとつは西洋人にとって、「コンピュータは宇宙の森羅万象を論理的に秩序づける機械、いわば一種の”普遍論理機械”としても位置づけられる」という意見。

 また、「ウェブ空間を新たなフロンティアと見なす米国流のすさまじい拡張主義」という見方。特にこの意見はおもしろいと思いました。

 著者はスタンフォード留学の経験をお持ちだそうですが、アメリカの拡張主義的なところには非常に批判的で、アメリカが米西戦争後、フィリピンを支配したことを、日本人の目から見た小説もお書きになられていることを初めて知りました。