「新聞社ー破綻したビジネスモデル」

元・毎日新聞の常務取締役だった、河内孝さんによる、絶対に新聞では読むことのできない、新聞業界の分析とこれからへの提言。書店でもよく売れているようです。初めて知る新聞業界内部の話がたくさんでてきます。とてもほめられたものではない販売競争、印刷されたまま配達されない「残紙」問題など、エリートが書いてやくざが売ると、揶揄される新聞業界の裏側を知ることができました。

この本と、池田信夫さんによる、『電波利権』を読むと、新聞、テレビのマスコミの病理がよくわかります。(新聞を始めとするマスコミのことを知れば知るほど、「あんたたち、人のことを批判する資格あるの?」と問いかけたくなります) ちなみに、この『新聞社』と『電波利権』、どちらも新潮社からでている新書です。

河内さんの真摯な姿勢、および提案(毎日、サンケイ、中日が協力して、読売、朝日に対する第3極を作ること)には、共感と関心を大いに持ちました。

新聞業界も供給過剰になっていて、根本的に過剰設備を抱えていること、にもかかわらず、商品内容に大きな差別化がないこと(普段、朝日、日経、サンケイ、日経金融、日経産業、それからFinancial Timesを読んでいますが、サンケイはちょっとユニークです)、市場が国内に限られていること、経営者がいないこと(記者をやっていた人には、会社経営のノウハウはない)などなど、一般の産業において同様、プロの経営者がはいって、きっちり経営しないと、「これりゃ、駄目だな」と思います。(マッキンゼーでもやとってみては?)

あとがきで、『新聞社』の著者である河内さんが、この本を世に問うことを決心した理由として、新聞自体が、「書かれざることへの慢心」を持っていることへの危惧、山本七平の『日本はなぜ敗れるのかー敗因21か条』の中の一節にある、人間の危機意識のなさをあげています。僕もこの頃、日本が戦争に負けたということにすごく興味を持っています。日本人のDNAにある「欠陥」とまでは言いませんが、近・現代日本人の考え方、方法論には、根本的な問題があるように思えてなりません。明治以来の富国強兵政策は、中国、アメリカとの戦いで、まず「強兵」が破綻し、90年以降のバブルの崩壊によって、「富国」が大きな問題をさらしています。

僕は一介のビジネスマンですが、ビジネスが繁栄していくためには、自由な考え方、自己表現が可能な社会が必須なのではないかと考えています。そういう意味で、特定の企業集団と、官僚・政治家に管理された今の日本のマスコミが、健全な社会や繁栄していく経済活動のために、いいのかどうか、非常に疑問を持っています。