ついに日本にも大型LBOの時代か?

僕がアメリカのビジネススクールに留学した1980年代は、ライブドアが検討していると報道されている、企業買収における資金調達手段であるLBO (leveraged buy-out)という言葉が、連日のように新聞をにぎわせていた時代でした。そのLBOを使ってさまざまな企業買収と売却を繰り返し、巨万の富を築いたのが、3人の創業者たちの頭文字をとって呼ばれるKKRという投資会社です。
このKKRは、今なお健在で、最近では皆さんもご存じのトイザラスという玩具会社の買収に乗り出すと言われています。

同じく1980年代、ジャンクボンドという新たな債券市場を作り出し、新興企業の資金調達をアレンジしながら、これまた巨万の富を作り上げたのが、ミルケン率いるドレクセル・バーナムという証券会社でした。彼の功罪にはたいへん大きなものがあり、アメリカの金融史に残る人物の一人です。(最後は、インサイダー疑惑で逮捕されます)

かつて、僕がお世話になったバンカーズ・トラストは、LBOマーケットにおける主要なアレンジャーのひとつとして活躍した銀行でした。その頃、日本の銀行は、アメリカにおけるローンビジネスを活発化させつつありました。バンカーズ・トラストを始めとするアメリカの金融機関から多くの案件の紹介を受けながら、日本の銀行はアメリカのビジネスに入っていきました。

今、ライブドアの資金調達のアドバイザーとして付いていると思われる外資系証券会社は、20年前以上も前にアメリカで始まった金融手法を、日本のマーケットに適用しようとしています。この1ヶ月ほどで有名になったリーマンブラザーズ証券、マスコミからコメントを求められているM&Aの専門家たち。そのうちの何人かは、かつての同僚たちです。

ライブドアとフジサンケイグループの闘いを見ていると、日本はもしかして1980年代のアメリカに近づこうとしているのか、と思えることがあります。それと同時に、日本が新しい時代に確実に入りつつあることを感じ始めています。

日本の証券会社出身で、今はバイオベンチャーのCFOをしている知人が、LBOという言葉を聞いて、かつての業界が懐かしくなったと言っていました。僕も同じように、むずむずするものをちょっと感じているところです。