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犬と平和

日経新聞が買収を発表したことできっと日本でも知名度が上がったFinancial Times。英字新聞と言えばかつては、Wall Street Journalを読んでいたんだけど、ここ数年、Financial Times が愛読紙のひとつになっている。FTの有名記者(金融担当)のひとり、Gillian Tettが「犬たちをめぐる真実」という、ちょっと意味深なエッセイを書いていた。(→The truth about dogs)

彼女はいまニューヨーク在住なのか(10年以上前には東京で活躍していた。その頃、一度、FTの記者たちが大勢集まったパーティで会ったことがある)、「マンハッタンでは犬たちが無愛想なニューヨーカーたちの心を開き、知らない人同士の間の会話が始まる」という趣旨のエッセイだった。さらには、「街の中にドッグランをもっと作る事で、都市はもっと人間的な空間になるのではないか」という、愛犬家たちが拍手喝采したくなる結論まで出しているのだ!

荒唐無稽な、ユートピア的なことをここで提案しよう。

日本、中国、韓国、北朝鮮、ロシア、台湾。東アジアの愛犬家同盟の結成!ミサイルの代わりにリードを、核兵器のかわりにドッグフードを!それぞれの国の犬たちを、国境を越えて交流させる(結婚させる)。愛犬家たちがもっともっと増えれば、きっと東アジアはもっと平和になる。(そんなことを考えるのは、ボクくらいのものかな?!)


「いちばん長い日」と「特別の一日」、それから「本日ただいま誕生」

先月は封切り日に映画館で「日本のいちばん長い日」を観た。戦争を始めることもたいへんだけども、それを終わらせることはもっとたいへんだったのだろうと想像する。

たとえどれほど思案したとしても、たとえ自己防衛であったとしても、強国に対して無鉄砲な戦争をしかけていくことは、やはり愚かだったというべきではないか?悲壮な決断だからといって正当化できるわけではないし、国際関係では愚直であることは決して褒められたことではない。まっすぐな精神論をどれだけ叫んでみたところで、大国との関係には通用しない。

今日は、先月テレビで録画していたイタリア映画「特別の一日」を観た。こちらも同じく戦争映画なんだけど、戦闘シーンなんかはでてこない。ヒットラーのイタリア訪問を祝って盛大に祝賀会が行われる日、ひとりアパートに残った専業主婦(ソフィア・ローレン!)が、偶然に知り合った同じアパートに住むゲイの男(マルチェロ・マストロヤンニ!)と交わす心と体のふれあいを描いた映画。

「いちばん長い日」で主に描かれているのは敗戦をどのように受け入れていくかをめぐる権力者たちの衝突なのに対して、「特別の一日」の主要なテーマは個人を巡るものばかりだ。同じ戦争をテーマとしても、まったく違う位置から、まったく違う人間たちを主人公としている。

「特別の一日」は根本的なところで強い反戦映画になっている。マルチェロ・マストロヤンニ演ずるラジオ局のアナウンサーは、ゲイであることで仕事を失い、最後には権力の手先と思われる男たちにアパートからどこかに連れて行かれる。映画の中で、ソフィア・ローレン演ずる、貧しい専業主婦に、こんなことをつぶやく。
「男は夫であれ、父であれ、そして兵士であれと、ムッソリーニは言う。でも僕は、夫でもなく、父でもなく、兵士でもない」。

ソフィア・ローレンはどんな役を演じてもすばらしい。マルチェロ・マストロヤンニもそう。

昨日は植木等が主人公の「本日ただいま誕生」も観た。これも衛星放送の日本映画チャンネルで録画したもの。
植木等って、無責任男シリーズでは、スマートで、女にもてて、ビジネスも上手な役を演じていて、とてもカッコいいんだけど、この映画では日中戦争で両足を失い、戦後、這いつくばって生きる男を演じている。この映画も強烈な反戦映画だ。
ネットのニュースを見ると、植木が希望して作った映画だそうだ。彼は僕が好きな日本の俳優のひとり。


品川正治著「戦後歴程」(平和憲法を持つ国の経済人として)

著者は、2013年8月亡くなった経済人(1924年−2013年)。
日本を代表する損害保険会社の社長、会長として企業経営にあたり、同時に経済同友会の終身幹事として、財界においても活躍した方。
この本は、2013年、岩波の月刊誌「世界」に連載されていた。自伝とも言えるものだけど、残念ながら食道がんによる死去のため、絶筆となっている。
「戦後歴程」
この本の中には、以下のような文章が何度も繰り返される。

「岸内閣の安保改定を阻止することは、あれだけの大動員、民衆参加の闘争にもかかわらず、できなかった。この敗北がもたらした、対米従属から抜け出せないこの国の姿、日米安保から日米軍事同盟に深化していった歴史、全土の基地化、さらには沖縄の人たちをアメリカ軍の奴隷のような状態に置きつづけたこの国の非情を考える時、あの60年安保闘争での敗北の責任の重さを否定しえない」(68ページ)

「アメリカの意向を汲む、アメリカの指示に従う、アメリカには逆らえない、と、日常聞かされ、読まされて60年以上が経った。その言葉はいまも、沖縄の基地問題やオスプレイ配備の問題、さらには日中間の尖閣問題、日韓の竹島問題、さらには脱原発、TPPと、挙げればキリのないほど聞かされている。そのどれもが国民の生活、生命に関わる大問題であるにもかかわらず、政治家・官僚から返ってくる言葉は、『アメリカが承知するだろうか』『アメリカにはたてつけない』である。そのアメリカが金融資本の意のままになる国であるとすれば、日本国民はそんな説明を納得して聞き得るであろうか」(97ページ)

ボクも数年前から経済同友会に入れてもらって、時々夕食会や講演会などに参加させてもらっているけども、いまの経済同友会には、品川さんのような考えや価値観を持つ、あるい共感を覚える会員がどのくらいいるのだろうか?それとも、品川さんのことなど聞いたこともない人たちの方が多くなっているのだろうか?

いま、政治も経済も、あるいは官僚の世界も、恐ろしいほどアメリカへの傾斜をすすめ、バラスのとれた状況からはほど遠い状態になっている。それでもって本当にアメリカといい関係ができているかというと、そうとも言えないところが、日本の危ういところではないのか?

品川さんが、いまのようにお祭り騒ぎとなる前のダボス会議に10年以上にわたって参加されていたこと、シュミット元ドイツ首相とも個人的なおつきあいをお持ちになっていたことなど、視野の広さ、おつきあいの広さ、ご自身の戦争体験に基づいた歴史観など、とても参考になった。

自粛ばかりして権力に何も言えない状況のなかで、このような経済人がいたことは覚えておきたい。