書籍「見て見ぬふりをする社会」(マーガレット・ヘファーナン著)

非常にいい内容の本です。2011年に日本でも翻訳出版されています。日本語版の刊行にあわせて「はじめに」が加えられていて、そのなかで福島原発に関連して東京電力経営陣に関する言及があります。ただ、この本を読んでいると、「見て見ぬふりをする」のは、日本人だけではありませんが。

著者に関心をもったのは、彼女がTEDで行ったスピーチを偶然みてからです。スピーチのなかで紹介されたアリス・スチュアート医師は、この本の中でも登場します。

この本の中で印象に残った文章を、以下、紹介します。

私は厳しいことで悪名高い教授、マイケル・タナーの許でヘーゲルを学んだ。教授は革のジャケットとレコードのコレクションで、研究室の床が覆われていることで有名だった。レコードの大半はワーグナーだった。教授にヘーゲルの「歴史哲学」に関する私の分析を朗読したあと、私はこんなにも難解で曖昧なテクストを読みこなしたことをほめてもらえるのを期待して彼を見た。それはありえなかった。「いいだろう」教授は特に感心した様子もなくいった。「それで、ヘーゲルの誤っている点は?」これが私にとっての教育のはじまりだった。