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アーシュラ・K・ル=グウィン著「ファンタジーと言葉」(岩波現代文庫)

普段あまりSFやファンタジー小説を読まないので、アーシュラ・K・ル=グウィンのことは全く知らなかった。彼女の代表作の「ゲド戦記」の題名くらいは知っていたけど、手に取ることもなかったし、彼女が作者であるということも知らなかった。
なぜ彼女の本を手に取ったかというと、購読しているアメリカのメルマガ(小説や哲学をおもに扱ったもの)で彼女のエッセイが紹介されていたから。このメルマガは、Brain Pickings という名前で、マリア・ポポヴァ(Maria Popova)という女性がひとりで運営しているのだけど、このサイト自体とても素晴らしい内容で、とても感心している。
「ファンタジーと言葉」は、アーシュラ・K・ル=グウィンのエッセイを集めたもので、小説、文学についてだけでなく、社会における偏見や男女の関わりについてなど、幅広いテーマで彼女の考え方を知ることができる。もしかしてこのエッセイはここ数年読んだ本の中でもとても大切だなと思った本のひとつかもしれない。それほどこの本に収められたすべてのエッセイがいいものだった。

この本の中で、「星の王子さま」が取り上げられている。特に、王子さまに向かってキツネが話した言葉が引用されていて、それを読んで決して他人事とは思えなかった。
「きみは、なつかせたもの、絆を結んだものには、永遠に責任を持つんだ」。これを読んだ時、人間はすべてのペットたちに持つ責任を決して忘れてはいけないということを強く言われたように思った。我が家のカイ(♀の甲斐犬、16歳)に対するボクの責任も含めて。

キツネはこんなことも言っている。「きみのバラをかけがえのないものにしたのは、きみが、バラのために費やした時間だったんだ」。
カイはありふれた甲斐犬の一頭に過ぎないのだろうけども、彼女と過ごしてきた時間がカイをボクにとっては特別な甲斐犬にしてくれている。

時間をかけないでは得られないものがある。「いますぐに」の時代、忙しすぎるボクらは、そんな大切なことも忘れてしまっているけども。

今週末、あらためて「星の王子さま」を読んでみたけども、今回ほど感動したこともなかったように思う。「星の王子さま」との新しい出会いを導いてくれただけでも、「ファンタジーと言葉」には感謝。(「星の王子さま」は、3つの異なる翻訳本を持っているほどなのに、いったい、これまでどんな読み方をしていたのだろう)

もうひとつこの著者との出会いに偶然とは言えないものを感じたのは、彼女の父親が文化人類学者で、アメリカ最後の野性インディアンとも言われたイシとの関わりを持ち、そのことがアーシュラ・K・ル=グウィンにも影響があったと思われること。イシはボクが大学生だったころからずっと気になっていた存在だったから。

彼女のエッセイは同じく岩波現代文庫からもう一冊出ているので、こちらも読んでみようと思っているし、彼女の代表作のひとつである「ゲド戦記」も読んでみるつもり。
もしかして一番好きな作家の一人になるかもしれない。それほど彼女の考えには共感するところが多かった。