ナイチンゲールと統計学、そして「権力の病理」

午後に都内のある大学の先生(統計学)を訪問。先生からひとつ勉強になることを教えていただいた。クリミア戦争で兵士たちの看護にあたり、「白衣の天使」としてのイメージしか持っていなかったナイチンゲールが、実は、統計学を勉強し、統計学者の協力を得て統計分析をおこなった『英国陸軍の健康,能率及び病院管理に関する諸問題についての覚書』を発表、王立統計学会初の女性会員に迎えられた、バリバリの統計学の徒であったことを。「世界の偉人伝」のひとりとして、小学校あたりで伝記を読んだはずだから、その中で、ナイチンゲールと統計学の話もでていたかもしれませんが、そんなことはまったく覚えてもいませんでした。

ある本の中には、以下のような文章もあるようです。「人間社会をも含めた宇宙は、神の摂理に従って進展していて、この摂理を理解しようと努力し自己の行為を摂理に一致するように導くのが人間の仕事である、と彼女は考えていた。神の本質はあくまで神秘のままであるが、神の意思を理解するには統計を勉強しなくてはならない。なぜなら、統計は神の摂理を測るからである」(『知の統計学2』福井幸男著 共立出版)

「神の意思を知るには統計を勉強しなくてはいけない」。統計学の「広告」として、これ以上のコピーはないのではないかと思います。

それから、今週日曜日(17日)の書評コーナー(朝日新聞)には、「21世紀のシュヴァイツァー」とも呼ばれる医師であり人類学者でもある、ポール・ファーマー(ハーバード大学教授)の「権力の病理_誰が行使し誰が苦しむのか 医療・人権・貧困」(みすず書房)が紹介されていました。かれにはきっといつの日か、ノーベル平和賞が与えられると思うのですが、世界の貧困地域で、三大感染症の治療にあたっています。

この本の紹介文の最後で、評者の渡辺靖は、「日本の論壇などではなかなかお目にかかれない、スケールの大きな、真のリベラルの勇姿を、私は著者のなかに見いだす」と言っています。

ナイチンゲール、ポール・ファーマー、ともに医療に従事し、その分野にとどまらない大きなスケールの仕事を展開している(した)二人。