プロ登山家・竹内洋岳(たけうち・ひろたか)

4月21日の朝日新聞beの「フロントランナー」で、プロ登山家の竹内洋岳(41歳)が紹介されていた。上下関係や、個人と組織のことまで触れる内容で、とてもいいインタビュー記事だった。こんな人が日本のいろいろな分野ででてくると、日本はずっといい国になるだろうと思います。組織の前に個人 (individuality) を持った人、そんな人がもっと、もっと増えてこないと、無責任なサラリーマン根性の人間ばかりになっては、いま進行中の、日本の「第二の敗戦」はこれからあと20年も続くのでは?

以下、とても共感を覚えた彼の発言:

「2001年にドイツ人登山家の組織したナンガパルバット(8126メートル)の国際公募隊に参加。それまで経験した日本隊の組織登山とは全く違いました。お互いファーストネームで呼び合い、全員に登頂のチャンスがありました。幸い登頂でき、実力を認めてもらいました」

「8000メートルを超える高所登山は万全のコンディションでないと登頂できません。ささいなけがでもパーフォーマンスは落ちます。酸素の消費量を増やさないため、余分な筋肉はつけません。身長は180センチありますが、体重は60キロくらいがベスト」

「プロって、何かと考えたら、結局は覚悟だと思います。長男の幼稚園の入学願書に妻は『会社員』と書きましたが、私は『登山家』と直しました。確かに登山用品専門店ICIの社員ですが、会社から『プロ宣言』を認めてもらっています。日本では登山家という職業が確立されていません。プロを名乗ることが登山をスポーツや文化として根付かせる第一歩なのです」

「登山には競技スポーツのようなルールがありません。だから、自分で制約を加えないといけません。プロとして14座を登るとき、内容が問われます。無酸素なのか、酸素ボンベを使ったのか、と。欧州だと14座制覇は無酸素でないと評価されません」

「親しかった田辺治さんはダウラギリ1峰で雪崩で亡くなりました。私よりヒマラヤ経験の多い田辺さんでも、雪崩は容赦しなかった。本人は悔しいと思っているでしょう。でも、登らなければよかったという後悔はしていないと思います。だから、私が遭難しても悲しんでもらいたくないです」

「富士山が日本一高い山なのは誰でも知っています。じゃあ2番目は?あやふやになりますね。日本人なら3番目の山までは知っていてもらいたいです」

「14座についても、エベレストとK2をのぞくと同じでしょう。世界で14番目に高い山を子供たちが知るようになった時、山に対する考え方が変わるのではないでしょうか。それなれば志半ばで逝った山田昇さんや名塚秀二さん、田辺さんの再評価につながる」