もしドラッカーが日本赤十字の社長だったら。

 ドラッカーはマネジメント(経営)は、企業だけでなく、非営利事業団においても重要だと言っていた。いや、非営利団体においてこそ、マネジメントは大切だとまで言っていたような記憶がある。

 今回の東日本大震災にあたって、多額の義援金が国内、国外から集まっていると聞いている。うちの会社も、社員の提案で、「あなたのがんばり、被災地へ届け」というキャンペーンを行っている。(→キャンペーンHP)

 でも「いいこと」を実行することは、実はものすごく難しい。英語でもこんな言葉がある。Good will does not always lead to good results. (善意は必ずしも、いい結果につながっているわけではない。)善意を、いい結果につなげるには、マネジメント力が必要だ。この部分を僕らは忘れがちだし、見落としがちだ。気持ちだけでは、いい結果にはつながらない。知恵、そして人間の本性というか、人間の性(さが)を見通す力が必要になってくる。いつまでも援助モードでいるのではなく、適当なところで『自立支援モード」に移っていかないと、人はいつの間にか「依存モード」から抜け出せなくなってしまう。気仙沼の魚市場の再開を漁業組合の人たちが話し合っている風景をテレビで見たけど、海の男たちの心意気を感じて、僕は「勇気をもらった」。

 うちの会社でも、ふたつの奨学金制度をやっている。ひとつは「オデッセイIT奨学金」、もうひとつは「オデッセイコミュニケーションズ奨学金」。前者は、AFS高校留学の支援、後者は一橋大学の学生への奨学金。当然、善意でスタートしているのだけど、こちらが意図するような人に、有効にお金を使ってもらうような結果につなげていくのは、簡単なことではない。チャリティやボランティアというのは、「マネジメント力」が必要なのだ。(でも、それをしっかりと認識している人は、本当に少ない)

 僕のビジネススクールのクラスメイトで、アメリカの赤十字に勤務している人がいた。2007年にボストンであった卒業20周年パーティで会ったとき、「民間セクターで働いた後、公的な事業に貢献したくて、いまは赤十字にいる」と言っていた。彼はまだアメリカの赤十字にいるのだろうか。

 いま、日本赤十字をはじめとする各種団体には、多額の義援金が集まっていると聞く。彼らにマネジメント力があることを心から願っている。