『水と緑と土_伝統を捨てた社会の行方:改版』(富山和子著、中公新書)

 全国のお取引先を訪問するようになって、改めて日本の歴史と自然に興味を持つようになりました。人を大切にすることは、歴史と自然を大切にすることでもあると思います。ちょっと大げさに言うと、「人、自然、歴史」、それがこのごろの僕のテーマです。
 『水と緑と土』は1974年に出された本ですが、取り上げられているテーマはいっさい古びていません。この本を読みながら、いろいろなことを思い起こしました。その1:僕が育った田舎の家の裏には、近くの湾に流れる川が流れていて、保育園や小学校低学年のころにはこの川でよく泳いだ記憶がありますが、洪水を防ぐためでしょうか、護岸工事が行われ、家庭の汚水が流される汚い川に変わっていきました。(今、どうなっているのか?)その2:この前、岐阜の郡上八幡にある高校を訪問した時の校長先生との会話。当地はかつて林業で栄えたはずですが、今は山を管理する人も少なくなり、山は荒れ放題だということ。でも林業では食っていけないので、都会に若い人は出て行く。
 この本を読んでみて、川と山、森はつながっていて、日本の自然も「複雑系」のひとつであることをあらためて認識しました。また、作者の八ツ場ダム工事への考えを聞いてみたいと思います。
 新書ですが、中身は濃い内容です。至る所にマーカーを引きまくりました。そんなマーカーを引いた一節に以下のような文章があります。
 「伝統を切り捨てることは、明治新政府の国策であった。この乱暴な政策こそ、富国強兵・殖産興業への近道であった。そしてこの国策を背景に日本の科学が出発したことは、日本人にとって不幸なことであった。というのはそれが、自然を商品化し掠奪していく資本の強力な武器となったからである。自然から自己につごうのよいものだけを引き出し、単純化して扱うというその目的、方法において、両者は合致したのである。」
 この本は1974年に初版が発行され、今年7月に改版が発行されました。本の帯には、「環境論のバイブル」とありますが、読み応えのある本です。今年の夏読んだ本の中でもおススメです。