「やりたいこと」症候群が不幸を増幅する(河合薫)

 昨日電車に乗ってお取引先の専門学校を訪問したのですが、車内で新宿にド派手なビルを建てた別の専門学校の広告を見かけました。この専門学校だけではないのですが、少子化で悩む学校の広告で、「なりたい自分が見つかる」、「やりたいことが見つかる」というような宣伝文句をよく見かけます。どこも似たり寄ったりの宣伝コピーしか出してこないのは、広告を作っている業者が似たり寄ったりだからでしょうか。それから、転職の斡旋で商売をしている会社は、「あなたがいまやっていることはあなたにふさわしいのか?」、「いまのままでいいのか?」と、転職をそそのかすようなささやきというか、「営業」というか、これでもかというくらい続けています。
 はっきり言って、ぼくはこんな文句は百害あって一利か、二利くらいしかない「問いかけ」だと思っています。本来、自分自身をしっかり持っている人ばかりなら、こんな文句の「ウソ」を見抜いて問題はないのでしょうが、必ずしもそうではないような感じがします。世の中全体がこんな文句で一杯になっているので、なにが「ウソ」で、なにが「ホントウ」か、よくわからなくなります。
 どんなに有名で、最高だと言われている学校であったとしても、学校に教えてもらえる程度の「なりたい自分」なんて、大した自分ではないです。学校での授業、先生や他の学生たちとの付き合いを通して、「なりたい自分」へのヒントは得られるかもしれませんが、「なりたい自分」なんて、10年、20年かけて、自分の努力でつかんでいくものです。だから、「なりたい自分」だの「やりたいこと」なんて宣伝コピーを見るたびに、「若い人達に媚びているな」、「若い人達をお客さんあつかいしているな」と、いつも思います。暴論と言われるかもしれませんが、こうやって、教育は、若い人達にとって、アルコールやパチンコ、ケータイゲームと同レベルの「商品」になっていくのではないかと思います。(それがボクの杞憂であればいいのですが)
 「あなたたちを鍛えてあげます」というくらいの広告をみたいです。

 で、タイトルの「やりたいこと」症候群が不幸を増幅するという話です。元ANAのCAで、気象予報士の河合薫さんが書かれた文章です。日経ビジネスオンラインに河合さんが書かれている文章はしばしば拝読します。非常にバランスがどれたものの見方をされる方だなと思います。
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“切りたい社員”を生む、オトナの勝手と新人の甘さ、「やりたいこと」症候群が不幸を増幅する