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『提督伊藤整一の生涯』(吉田満著)

 香港からの帰りの機内で読み終えた本。著者の吉田満さんは、『戦艦大和ノ最期』の著者。1923年生まれ、44年東京帝国大学法学部繰り上げ卒業、学徒出陣で海軍に入隊、45年4月副電測士として戦艦大和に乗り込み、沖縄特攻作戦に参加するも生還。戦後は日本銀行に入行、1979年日銀監事在職中に亡くなられたという方。
 主人公である伊藤整一は、日本海軍最後の艦隊出撃、沖縄特攻作戦の戦艦大和の司令長官。
 この本のあとがきで、著者は以下のように述べています。「われわれはあの戦争が自分にとって真実何であったかを問い直すべきであり、そのためには、戦争の実態と、戦争に命運を賭けなければならなかった人間の生涯とを、戦後の時代を見通した展望のもとで見直すことが、緊急の課題だと考えたからである。戦後の出発点にあたって、この課題を軽視し看過したことが、今日の混迷につながっているというのが、わたしの認識であった。」
 この言葉は昭和48年(1973年)から49年(1974年)にかけて発表された、戦艦大和とともに亡くなられたふたりの青年の短い評伝に関連して書かれたものですが、現在の日本においてもまったく同じ混迷は続き、もっと深刻になっていると言えます。
 その混迷は、もう一度、戦後の出発点に返ってみないかぎり、解決することはできないのではないかと思います。でも、戦後、安直に金儲けをすることをずっと追求してきた日本人には、原点に返りもう一度愚直に歴史の教訓を学び返してみるという仕事は、我慢できない作業なのではないかと思います。
 組織の長たる人間の責任の取り方、戦略的な意思決定のあり方(日本の組織においてそのような意思決定がなされてきたのかという反省!)に関する「歴史の教訓」だけでなく、武人の心のうちに秘められた柔らかな部分を教えてくれる本でした。
 ちなみに、この本の著者の吉田満さんの長男、吉田望さんには、「アイデアエクスチェンジ」に出演いただいてます。
アイデアエクスチェンジ「吉田望さん」