寺脇研著『官僚批判』(講談社刊)

 生涯教育とゆとり教育で有名だった元文部省官僚が、役人時代を振り返った本。以前、ご紹介した高橋洋一さんの『さらば財務省』もそうですが、キャリア官僚として、組織の中でかなりのポジションにまでのぼりつつも、ユニークなキャラクターが故に、組織からはじかれていった元官僚が、部分的とは言え、今の官僚制度を批判する本を書き始めたことを、僕は歓迎しています。
 寺脇さんがマスコミによく出ていたとき、このかたは「ゆとり教育」を積極的に広報されていたように記憶しています。ゆとり教育は、このごろではさんざん批判されています。でも、学力低下も含めた子供を巡るさまざまな問題に関しては、学校教育に頼り切っている親、子供を金儲けとセックスの対象にしてしまっている一部のビジネスと大人たちの自制心のなさが、もっと大きな根本問題としてあるのではないかと思っています。(ケータイ業者は、フィルタリングの問題に関して、イノベーションを阻害するだとか、言論の自由だとか、表現の自由なんて、言っていますが、僕はふざけた戯言だと思います。どうやって株価に影響を与えないようにしようかという下心が、衣の下から、透けてみえます。)

 寺脇さんも、役人時代には言えなかったことを、退官されてからは発言できるようになったのでしょう、次のような文章を書かれています。
「安倍前首相は、『私の内閣』という言葉をしばしば口にしていた。私は、あの言葉を耳にするたび、憤りを禁じ得なかった。総理大臣といえども公務員である以上は国民全体の奉仕者であり、その立場にある人が『私の内閣』などと言っていいはずがない。」
 他省庁との仕事を通じて感じた省によるカルチャーの違い、福岡県、広島県への出向の経験談、率直に語られるご自身の欠点など、おもしろく読ませていただきました。役人時代には、抑えないといけなかった、お持ちの多才さを、自由奔放に、存分に発揮されますように。

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