ポール・ニザン著『アデン・アラビア』(晶文社刊)

 大学生の頃、読んだ本です。久しぶりに冒頭の、あまりにも有名な一節を読み返してみました。最初の一文が、紹介されることは多いようです。(「僕は20歳だった。それが人の一生でいちばん美しい年齢だなどとだれにも言わせまい。」)

 その後に続く文はそれほど紹介されませんが、以下のように続きます。「一歩足を踏みはずせば、いっさいが若者をだめにしてしまうのだ。恋愛も思想も家族を失うことも、大人たちの仲間に入ることも。世の中でおのれがどんな役割を果たしているのか知るのは辛いことだ。」(篠田浩一郎訳)

 人それぞれ感じるところは違うかもしれませんが、ポール・ニザンの言葉は、今の僕らにもストレートに響いてきます。恋愛や家族を失うことの痛手は分かったとしても、失うことを恐れるほど、思想にコミットすることは、今の時代、大半の人からすれば理解不可能ということでしょうが、ポール・ニザンの友人のひとりはサルトルでした。

 この本は、日本では1966年に発行されています。→aoten store

アオテンストア