『会社の品格』(小笹芳央著)

人材コンサルティングで成功している会社社長の本。「品格」という言葉は、流行り言葉になっていますが、本当に品格を重んじるのであれば、この言葉を軽々しく使っていいのだろうかと思います。が、近々、IPOを控えている会社としては、この本の出版もひとつのIR活動でしょうか?

内容にも、本のタイトルに沿わない箇所があります。たとえば、「今のような変化のスピードの激しい時代にふさわしいのは、『変革』『創造』『一攫千金』といったキーワードです」(135ページ)。一攫千金と品格。ちょっと相並ぶのは、難しい気がします。

と、同時に、いくつも著者に同意する点がありました。仕事に使命感を持たせること、どの会社でも通用する普遍的なスキルを身につけるべきであること、辞めにくい会社から辞めやすい会社に変るべきこと(年功序列や退職金などの制度で、社員を長く引き止めるような仕組みをやめる)、正解があった社会から正解を創り出す社会に変らないといけないこと、など。

また、同じ売上げや利益を、100人で出している会社と1000人で出している会社を比較したとき、株式市場では当然のことながら、前者をより高く評価するわけですが、多くの雇用を生み出しているという意味で後者ももっと評価していいのではないかという意見にも共感する点があります。著者の会社がIPOしたあと、株式市場が同じような目で著者の会社を見てくれるのかどうか、それにも関心があります。

「辞める選択もあったけど、結局(この会社に)30年いた」というのが理想だと、著者は何度か繰り返しています。男女関係と同じようなものでしょうか?「山あり、谷ありだったけど、ずっと一緒だったね!」という感じで。