梶山季之『ルポ戦後縦断』

45歳の若さで1975年になくなった作家が、おもに1950年代終わりから60年代にかけて、雑誌(中央公論、週刊文春、文藝春秋など)に書いた記事を集めたもの。「丸ビル物語」(昭和33年、1958年5月発表)に引かれて買ったのですが、もちろん、この丸ビルは今の丸ビルではなく、初代の丸ビルのこと。今にも共通する丸の内界隈の勤め人の様子が伝わってきて、おもしろく読みました。そのほか、「ブラジル勝ち組を繰った黒い魔手」(昭和41年、1966年発表)というのも、本当にこんな荒唐無稽の話があったのかと、ちょっと信じられない話です(上海で、日本の軍票や紙幣を集めていたユダヤ系ビジネスマンが、予想よりもはやい日本軍の降伏のため、無価値になったそれらのお金を、ブラジルにいる日本人移民に、日本軍が勝ったことにして、大量に売りつけていたという話)。

そのほか、14の話が収められていて、どれもおもしろい話ばかりです。さすが、「トップ屋」といわれて、スクープ記事を連発した作家です。