『瞬間を永遠とするこころざし』(岡井隆著)

先日亡くなった歌人・岡井隆が、日経新聞の「私の履歴書」に連載していたものがベースになった書籍。
歌人は医者でもあったことを初めて知りました。(彼が新聞に連載していた時には目を通していたはずなのに、記憶に全くないということはどうしたことだろう)

最後のページには以下のような記載があります。
「若いころから目標にして来た森鴎外、斎藤茂吉、木下杢太郎という三人の大先達(中略)、もとよりこの三人には遠く及ばないにせよ、まだ勝負はきまっていない。わたしには余力があり余生がある限りそう考えるべきだろう。」
また「もの暗い世の中だからといって、もの暗い歌ばかり書く必要はないだろう。」

そして最後に以下のような歌で締めくくっています。
「瞬間を永遠とするこころざし無月の夜も月明かき夜も。生きているこの瞬間を永遠のものに定着する志は、失いたくないと思って今日もまたペンを握っているのである。」

森鴎外、斎藤茂吉、木下杢太郎、3人とも医者だったところに、内科医でもあった岡井さんらしさの一つが出ているなと思いました。