『現代アートとは何か』(小崎哲哉著)

『現代アートとは何か』(小崎哲哉著)より。

「総じて言えば、日本という国の現況が、そのまま日本のアートシーンの現況に重なって見える。いわゆる内向き志向が強く、海外に対する関心が薄い。相変わらず言語の壁が立ちはだかり、海外事情を正確に把握している者も少ない。事なかれ主義と「忖度」が蔓延し、状況を変革しようという気概を持つ者はなかなか現れない。ポピュリズムも横行し、本物志向は避けられ、軽いものばかりがもてはやされる。独創性は忌避され、何事も右へ倣えという風潮が支配的。経済格差が広がり、多くの者がその解消は不可能だと諦めている。女性の社会進出が叫ばれる一方、男性優位で男尊女卑の実態は変わらない。
日本のアートシーンにおける問題は、ほとんどが情報や知識の欠如に起因する。同時代的な情報や知識、歴史的な情報や知識の双方である。他国の状況を知らないから、自国の状況が当たり前だと信じ込んでしまう。歴史を知らないから、小さなミスや見逃しが将来に禍根を残すことに気づかない。日本は、このままでは世界のアートシーンから取り残される。日本という国が、同じ理由で世界から取り残されることもありうるのではないか。」(412-413ページ)

この本全体に言えることですが、気持ちいいほど、著者は考えをはっきりと書かれています。