鶴見俊輔を取り上げたNHKの番組、「絶望の裁判所」の著者への影響。

先日NHKのEテレであった番組「鶴見俊輔と思想の科学」。「知の巨人たち」のシリーズ2回目。数ヶ月前に、ブルーレイレコーダーを買ったこともあってテレビ番組を録画して見ることができるようになった。

鶴見俊輔は僕が一番読んできた日本の「哲学者」。哲学者と言っても、とても平易な日本語で文章を書いてくれるので、僕のような人間にもわかる。
NHKのこの番組はとてもよくできているので、見逃した方には、7月19日(土曜日)午前0時からある再放送をご覧いただきたい。番組に関するTwitter集は、以下のサイトで確認できます。(→番組ツイッター集

80歳を過ぎてなお、彼のように、シャープな話ができるようになっていたい。(もしそれまで生きていることができれば)

今日は「絶望の裁判所」(講談社現代新書)という、元エリート裁判官だった方の本を読んだ。反響をよんでいる本のようだけど、内容にはあまり驚かなかった。日本の裁判官と司法制度にはさまざまな問題があるということは感じていた。それでも面白いなと思ったのは、ご自身も狭い裁判官たちの世界の中で、精神的におかしくなり、そこから抜け出すことによって、日本の司法制度やそれを動かす司法官僚たちの異常さを冷めてみることができるようになったことを、率直にお書きになられているから。

この本の著者にも、鶴見俊輔が大きな影響を与えていることを知ったのが、この本の中で一番の驚きだった。以下、著者の言葉。

「当時の私が、自分を知りたい、自分の内面にさかのぼってみたいと考えて始めたのが、関根牧彦という筆名になるエッセイ、創作、評論等の執筆であった。執筆を始めた契機は、日本のプラグマティズムの代表的存在である鶴見俊輔氏に何通かの手紙を書き、大阪高裁勤務時代にお会いして、執筆を勧めていただいたことによる(後略)」

NHKの番組の中でも、映画評論家の佐藤忠男さんが、鶴見俊輔からもらった手紙がどれだけ励みになったかということを話されていた。鶴見が後輩たちの育成にも尽力されたことを裏付けるエピソードで、それを番組とは別に読んだ本でもそれを確認することができた。

今日はそういうことで鶴見俊輔で始まって、鶴見俊輔で終わった一日だった。