『国家の命運』(薮中三十二著)

 著者は今年外務省事務次官を退任された方。本のタイトルは大仰ですが、なかみは非常に読みやすい、手軽な本です。たくさんアンダーラインは引いたのですが、その中から一部紹介すると、

1 「マスコミはアメリカの御用聞きかマッチポンプ、日本へ向けて懸命に火種を吹き起こしているようなものだった」(マスコミについて)
2 「日米交渉を思い出しても、日本側の出席者からは、何度となく「ご理解いただきたい」(please understand) というフレーズが聞かれたものだった。日本の事情は特殊なのだと相手にくどくど説明し、結びにこのフレーズが口を突いて出るのだ。」(日米交渉について)
3 「国内に政府を批判するマスコミがあるわけでもなく、野党もなく、国民の生活状況もおかまいなし、こういう国が相手の交渉はほんとうにやりづらい」(北朝鮮に関して)
4 「交渉妥結は国内でも好感をもって迎えられた。一呼吸おく、という昔からの知恵が日本では大事なのだな、とあらためて感じたものだった」(日韓漁業協定)
5 「日本ぐらい、きちんと約束を守ってくれる国はない。技術移転や投資など、これからも日本には大いに期待している」(タンザニアのキクウェテ大統領)

 そして、ボクが一番共感したのは、この点。
6 「当然ながら、言語とともに、話の中身が大事である。文化や習慣、育ちも思考形態も違う相手と話す場合、ロジックがないと話がかみ合わない。ロジック、というのは、私なりの理解でいえば、『世界共通用語』ということになる。(中略)国際社会での交渉ごとは、世界共通用語としてのロジックを用いた説明と主張が決定的に重要になる」

 ロジックは、日本国内での共通用語でもあると思う。「不言実行」「腹芸」なんていうことは、いまの日本にはもう当てはまらないのではないか。