『日清戦争_「国民」の誕生』(佐谷眞木人著)

 講談社現代新書なので、手軽に読めます。内容も、それほど重くありません。先週、海外の勉強会の連中に聞いてみても、100年ほど前、日本が中国、ロシアと戦争をして勝ったなんてことは、ほとんど知りませんでした。我々日本人でも、きちんと歴史教育を受けていない人が増えているようなので、日清戦争、日露戦争を知らないという人が、もしかしているのかもしれません。

 おもしろかったのは、日清戦争を経て、初めて「日本国民」の意識が広まったという指摘。また、当時、東京の銀座は、新聞街で、「大通りだけでも読売、新朝野、自由、東京日日、中央、毎日の諸新聞社がある。(中略)都と二六を除くの外は、あらゆる新聞社が銀座界隈に集まっていた」とか。また、作者によると、「日清戦争という強烈なコンテンツは読者を熱狂させ、新聞や雑誌によって世界を認識する習慣を社会に定着させた。こうして、メディアが社会の風潮を増幅し、人びとを単一の価値観に染め上げていく危険性をもつ、大衆社会が成立した」。CNNをはじめとする映像メディアが、湾岸戦争を世界にライブで中継し、お茶の間に戦争が入ってきたことを思い出します。

 今、崩壊過程にある新聞事業ですが、このころは、成長産業だったのかと思います。新聞に代わって、世界を認識する手段となり、人々を同じ価値観に染めていったのは、戦後はテレビでした。そしていまその役割は、インターネットが担いつつあるのでしょうか?