『「日本人」といううそ』(山岸俊男著)

『信頼の構造』で日経・経済図書文化賞をとった山岸先生が、一般読者むけに書かれた、「武士道精神は日本を復活させるか」という副題を持つ本。
図書館で借りてきた本ということもあって、流し読みをしていたら、途中でジェイン・ジェイコブスの話がでてきて、それからはマジで読みました。(先日のブログで紹介した、あの、ジェイン・ジェイコブスです)
ジェイン・ジェイコブスは人間には二種類のモラルがあって、ひとつは、市場のモラル、もうひとつは統治のモラルとしています。山岸先生は、ジェインのいう市場のモラルは、日本では「商人道」であり、統治のモラルは、「武士道」であると置き換えています。このふたつを混乱させることは最悪の結果をもたらすとしていて、まさにいまの日本の状況がそれではないかと、されています。
現政権は、意識的にでしょうか、それとも無意識なのでしょうか、このふたつの混乱を積極的に進めているように見えます。精神論ではなく、仕組みやルールで、「情けは人の為ならず」という社会を作っていくことが大切だというのが山岸先生のご意見。別の本(『きずなな思いやりが日本をダメにする』(長谷川眞理子、山岸俊男著)でも、政治家や役人たちが、精神論に偏っていて、サイエンスを理解していないので困るという趣旨のことを、お二人で強調。とくに長谷川先生は、政府の各種委員会に呼ばれることが多い方なので、実体験からのご発言)

以下、市場の倫理と、統治の倫理の概要。
市場の倫理:
暴力を閉め出せ
自発的に合意せよ
正直たれ
他人や外国人とも気やすく協力せよ
競争せよ
契約尊重
創意工夫の発揮
新奇・発明を取り入れよ
効率を高めよ
快適と便利さの向上
目的のために異説を唱えよ
生産的目的に投資せよ
勤勉なれ
節倹たれ
楽観せよ
統治の論理:
取引を避けよ
勇敢であれ
規律遵守
伝統堅持
位階尊重
忠実たれ
復讐せよ
目的のためには欺け
余暇を豊かに使え
見栄を張れ
気前よく施せ
排他的であれ
剛毅たれ
運命甘受
名誉を尊べ

詳細は、『市場の倫理 統治の倫理』(ジェイン・ジェイコブス著)を。