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『なぜあなたは、間違った人を採ってしまったのか?』(佐藤文男著)

以前も著者の本をご紹介したことがありますが、著者は僕の大学時代からの知人です。本を出すたびに、わざわざ届けてくれるマメな人です。なので、僕のコメントは、決して客観的な立場の人間のものではないということを事前に書いておきます。

他人事ではないのですが、すべての会社、そう、すべての会社において、人に関わる問題や課題をかかえていないところは、ひとつとしてないのではないかと思います。いや、「思います」というよりも、確信しています。優秀な人間が集まっているということになっている霞ヶ関の中央官庁から始まって、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長している会社、伝統ある高値安定の有名企業も含めて。人が集まるところには、人に関わる問題、課題がないところは絶対にない。

なので、著者のような人材ビジネスのベテランがこのような本を出す意味があるのだろうと思います。アマゾンの読者のコメントを見ると、同意せざるを得ない厳しい指摘もあるのですが、この本が取り上げている、「どのような人材を採るべきか、どのような人材は絶対に避けるべきか。もしできない人を採用してしまったならば、どのような対応をしていけばいいのか」というテーマは、非常に難しい課題です。この課題に悩んでいない会社は皆無だと思います。

著者の基本的な考え方で大きく同意することがふたつあります。一つは、「人間は感情で動く」ということ。もう一つは、「人間は自分の『窓』を通してしか他人を見ることができない」ということ。自分自身の人生観を作り上げていく真剣勝負の繰り返しの結果として、他人を見る眼が養われていくのかと思います。

経済が右上がりだったころは、会社も成長し、今年よりも来年はいい年になるだろうという漠然とした期待がありましたから、年功序列、終身雇用の制度のなか、多少の不満はあったにしろ、いまから思うと、それなりに安定感がありました。その頃は、社会全体がいまよりももうすこしおおらかだったかもしれません。

バブル崩壊後、特に2000年以降、BRICsや韓国、台湾の台頭と反比例するように日本企業の力は沈下してきました。90年代後半には、絶対に倒産しないだろうと思われた大手企業(例えば山一証券、北海道拓殖銀行)が倒産し、今年2012年には、常に日本のトップ企業でありつづけるだろうと信じられてきたパナソニックやシャープといった世界的な家電メーカーが危機的状況に陥っています。

不安定になればなるほど、人間観、歴史観が重要になってくるはずです。

著者のことで感心するのは、自分なりの人間観を作り上げていこうとする意志を持ち、努力を続けていることです。著者の最新刊が、人間観に関わる非常に難しいテーマを取り扱うにあたって、成功しているかどうか、それは読者の判断に任せますが、著者がこれからも真摯な姿勢でこのテーマに取り組み続ける限り、いい仕事を残すことができるのではないかと思います。来年もご活躍になられることをお祈りしています。(数ヶ月前にご本をいただきながら、黒犬通信でご紹介するのが遅れました。ごめんなさい!)