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『いま戦争と平和を語る』(半藤一利著、井上亮編)

 1961年生まれで、『「東京裁判」を読む』を半藤一利、保坂正康と共著した日経新聞の記者が、1930年生まれで昭和史をライフワークとする著作家・半藤一利に質問するインタビューをまとめたもの。
 この本で半藤一利が語る日露戦争から太平洋戦争にいたるまでのリーダーたちの話を読んでいると、本当に暗い気持ちになってきます。どうしてこれだけ愚かで無責任な軍人や政治家たちが日本のトップに立っていたのか、と。それは日露戦争の勝利が危ういものだったという事実を覆い隠し、自らが作りだした「神話」と「ウソ」にのめり込んでいき、リアリズムから遠ざかっていったプロセスでもありました。

 それが過去の事だけではなく、もしかして、それは現在も進行中なのではないかと思うと、さらにぞっとしてくるのです。

 各章のはじめに、半藤一利の発言の引用があるのですが、以下のような言葉があります。
 「戦後は戦争というものが日本人の意識からなくなっちゃった。あるのはただ悲惨とか悲劇であるとかそういうことばかりです。そこから来る平和というのは観念なんです。本当の平和論というのはそうじゃない。」(第10章平和主義こそ日本の基軸)
 「近代日本は外圧によって無理やり国をこじ開けられた。日本人は一度押しつぶしされて、はい上がって、この国家を作ってきたんだという思いがあるみたいですね。そういう思いから脱却しているのは、漱石や荷風などごく少数でした。」(第8章作家たちの歴史観)

 すべての章において共感する指摘を見いだしましたし、原爆投下(6日、9日)、ポツダム宣言受諾による終戦(15日)の8月に読んでおく価値のある本でした。本の帯にあるように、「大切なのはリアリズムと常識。歴史を知ることは日本人を知ること。」まったく同感です。