岡山訪問、それから塩野七生著『日本人へ_リーダー編』

 今日は岡山に日帰り出張。午後お取り引き先の方々との会合のため。高松や鳥取からもお越しいただいた皆さん、ありがとうございました。率直なご意見等、感謝いたします。羽田から飛行機に乗り岡山空港を初めて利用しました。山の上を切り開いて作ったようなところで、広島空港を思い出しました。広島空港よりか市内に近いでしょうか。
 行き帰りの飛行機で、塩野七生さんがずっと雑誌「文藝春秋」に連載されているエッセイをまとめた本を読みました。このごろはもう文藝春秋の読者ではなくなっているので、40のエッセイのうち読んだことがあるのはほんの2、3でした。
 この中で、僕がとても感心したのは、「拝啓 小泉純一郎様」という一文。この中で、塩野さんは、郵政選挙で大勝した小泉さんにこんなことを書かれているのです。
 「しかし、盛者は必衰であり、諸行は無常です。今回の大勝が、政治家としてのあなたの「終わりの始まり」にならないとは、誰一人断言できないでしょう。」さらに、「私があなたに求めることはただ一つ、刀折れ矢尽き、満身創痍になるまで責務を果たしつづけ、その後で初めて、今はまだ若僧でしかない次の次の世代にバトンタッチして、政治家としての命を終えて下さることなのです。」
 なんてすごい予言なんだ!と思ってしまいました。まさにこの通りに小泉政治は終わり、郵政改革は中途半端なまま、いままた過去の状況に引き返されようとしているかに見えます。
 塩野さんのエッセイは読んでいておもしろいです。どうしてこのくらいの、まっとうなことを考え、そして正々堂々とお書きになられる評論家やエッセイスト、文筆家が多くいないのか。
 もうひとつこの本の中でうれしかったことがあります。それは最近僕もその存在を知り、半自伝も読ませていただいた、石井米雄先生のことが紹介されていたから。(→
「道は、ひらける」石井米雄著)塩野さんの石井先生評がまたいい。
 「この人のインタビューを読んで感心した。まず、ユーモアがある。ユーモアのセンスは臨機応変のセンスとイコールな関係にあるから、政党や省庁の抵抗をかわしながら目標に到達せざるをえない組織の長としては最適な資質である。」
 「第二に、歴史という怪物を、この方はよく後存知。」そして石井先生がインタビューの中で言われた以下のような発言に特に注目されています。「最近、歴史認識という言葉が跋扈していますが、これは要注意です。たとえば、韓国人と日本人が同じ歴史認識を共有できるわけがありません。しかし、歴史事実は共有できる。アーカイブの意味と価値は、まさにそこにあるのです。」
 引用していると、止めどがなくなるのであとひとつでやめておきます。「自己反省は、絶対に一人で成さねばならない。決断を下すのも孤独だが、反省もまた孤独な行為なのである。」これはリーダーの条件としてあげられているのですが、組織のリーダーでなかったとしても、一人ひとりがこのような孤独な作業を重ねていかないといけないのではないかと思います。